梶井檸檬の、のほほーん日記

2008年03月02日(日)
Syrup16g最期の日

私の日記をいつも見てくれてる人はご存知でしょうが、私にはレポなどできません。あくまでも感想です。それも超個人的な。多分、シロップの件では沢山検索から来る人がいると思うので、最初に断っておきます。でも、私の感想から、行けなかった人が少しでも空気を読み取ることができるのなら嬉しいし、行った人があの時を思い出せるのなら、それも嬉しいです。この日記は、私が削除しない限り、ずっとここに残り続けるものだからね。


武道館から一夜が明けました。今の自分の心境をどうあらわしていいのか、正直うまく表現できません。涙に暮れているわけじゃない。かといって、すっきりしてるわけでもない。ぼんやりしてると言うのもちょっと違う。文章のプロならどう表すんだろう?自分の言葉で表したいのにね。自分のボキャブラリーの貧困さを悔やみます。五十嵐氏の言葉を借りるなら、「どこまでも澄んだ眩しい雪のような小さな闇」に私は佇んでいるのかもしれないなぁ。Syrup16gというバンドに導かれてね。

大きな玉ねぎには、この日を見届けようと、全国のいろんなところからやってきた人で溢れていました。中に入っても、あの六角形の中に、普段では人が入らないところまでびっしりと人がいました。六辺が人で埋め尽くされた武道館を私は見たことがありません。
私のいた席は、2Fのキタダさん側の2F席でした。一番前の席だったので、立つのは禁止です。隣の男の子は、最初は立っていて、注意されて座りました。最悪だとつぶやいていたけれど、私は座ってたって構わないと思いました。ここにいられるだけでも最高なんだもの。何の障害もなく彼らが見ていられるんですもん。自分にめぐってきたこの場所にこれ以上を望みませんでした。グッツが発表されたときも、最期は何か・・と一瞬頭を過ぎったけれど、ライヴだけで十分だと思ってしまいました。手に残るものよりも記憶の方が私には大事で、その記憶を残すためにライヴ前は、心穏やかに過ごしたかったから。ライヴ前に、カフェ部の部活動で半蔵門のカフェで、のんびりしていました。そこにいた人は、多くの人がシロップの武道館に行く人でした。最初は楽しくおしゃべりしていたけれど、時間がたつにつれ、どよーんとしていました。これは仕方ないかな。おいしいご飯とスウィーツと珈琲とシロップを大好きな人々が、私をフラットにしてくれていたような気がします。

客電が落とされて、私の席からは、彼らが出てくるところが見えました。フラッシュが光ってました。入場時に配られたフライヤーには、写真集とDVDの告知がされていたので、彼らの表情はそこに載るのでしょう。多分、険しい顔はしてないよね。それはなんとなくわかるよね。
10分押しで始まったライヴは、「きこえるかい」から始まりしました。ちょっと意外な選曲でした。終わりってイメージが強い曲だから。
本編も、「HELL SEE」からのかなり久しぶりな曲も多かったです。もちろん定番な感じも多いですけどね。終わってみれば34曲。過去最高の曲数を演奏したもんね。3時間ちょっとのステージでした。私が行ったワンマンライヴの中でも上位にランクインするくらいの長時間。濃密な時間でした。きっと誰もが自分が過ごしたシロップとの時間を思い出していただろうから。

私がシロップを知ったのは、あの当時JAPANにいた其田さんからでした。その当時、シロップとモーサムを激pushしていて、その両方に私はどっぷりつかったのでした。其田さんが名づけた黄昏テロリストは、私の中でかなり重要な位置を占めるバンドです。バインは元々どっぷりつかっていましたが、残りは彼が教えてくれました。感謝しています。ありがとう。
ちょうど、「copy」が出た直後に、タワレコで視聴したときに、うわわわぁ!となり、いつもライヴに一緒に行ってるG嬢に、このバンドお勧め!って感じでメールした気がします。そうしたら、私も気になってたの!ってな返事が来た気が・・あのころの日記でも残っていれば、もっとリアルに書けるのに。メモライズのデータ全部消しちゃったからね。取っておけばよかったかもね。そんなにたいしこと書いてないと思ってたのです。たいしたことだと思ってなくても、後から大切になることもあるよね。ここの日記は取っておくよ。

それから、しばらくライヴのチャンスがなくて、年が明けて、初めて見れたのは2002年のQueのワンマン。運良く一般でチケットが取れたのです。あのころで即日ソールドアウトで、譲ってくださいって書き込みを沢山見ていたのを覚えています。
それから、関東でやるライブはそこそこ見ました。そういえば、遠征なんかも2回、大阪と名古屋しちゃってたな。下北あたりでやっていた弾き語りとか、DJイベントとかは見てないけれど。その後ハコが大きくなってチケットが取りづらくなって大変なことになっていたけれど、運のいいことに、チケットで困ったことはほとんどなかったです。とりあえず、どうにかこうにかなってたので。シロップとは相性良かったんだよね。

ライヴを見始めた頃のシロップは、対バンのライヴは、どこか五十嵐氏が機嫌が悪くて、ワンマンはとても機嫌が良くて、このバンドは大丈夫なの?とちょっと心配でした。不安定な感じがしてました。
QUATTROのワンマンはとても印象的で、終始静まり返ってるライヴでした。単に静まり返ってるんじゃなくて、他者を寄せ付けないというか、触ったら怪我するぜというかそんな気迫が怖いくらいでした。とても不思議なライヴ。今でも、あの時のQUATTROのひんやりしたシャープな空気を覚えています。
あれから、リキッドやAXや渋公やNHKホールまでやるバンドになりました。対バンも機嫌が悪いって感じはなくなったなぁ。自主企画もやってたしね。シロップをリスペクトするバンドも多くなって、なんだか他者を受け入れたのかな?なんて偉そうに勝手に思っていました。

ライヴの本数が少なくなり、新譜のリリースも全然なくなり、その事情は私たちは知りません。佐藤さんが脱退した理由だって、何があったのかも、五十嵐氏ががどう思っていたのかも、中畑さんがどう思っていたかも知りません。本当のことは何にも知りません。でも、私たちはずっと待っていました。そして、NHKホールで告げられた活動休止という名の解散を受け止めるしかなかったのです。五十嵐氏が音楽という名の呪縛から解き放たれるなら、苦しんでいることから開放されるなら、それでいいよって思えたんだよね。不思議とね。もちろん、解散を残念というか、悔しいというか、嫌だというかそんな気持ちも共存していたわけだけどね。でも、辞めていいよって素直に思えたんだよね。
最後に私たちに届けられたセルフタイトルの真っ白なアルバムは、美しくて物悲しくて優しいアルバムでした。このアルバムで最期じゃなくて、武道館のステージに立った彼らが最期で良かったよね。

昔から知ってるからとか、最近のファンだからとか、そんなのはどうでもいいことで、シロップを知って本当に良かったなと思う人が武道館に満ちていました。お客さんだけじゃなくて、スタッフもそう思ってたよね。だって、そう思ってなければ、あんなライヴ実現しないもの。最後の最後まで、見たい人がみんな見れるようにと、VINTAGEの社長さんが尽力してくれていたことを知ってます。それどころか、NHKホールで終わりじゃなくて、最期を武道館でと、VINTAGEの社長さんが抑えてくれわけだしね。他にも、私たちが知らない人々が彼らを支え続けてたんだよね。シロップは幸せなバンドです。ありがとうはメンバーだけじゃなくて、スタッフや関係者にも向けられるべき感謝の言葉です。心からそう思います。

シロップの歌は、五十嵐氏しか歌えない歌だなと思って。誰かが歌ったとしても、そこにリアルは存在しないから。彼が歌ってこそ成立する歌だから。鶴の恩返しに出てくる鶴みたいに、自分を削って生まれた歌は、本当に美しいよね。そこに痛みも温度もあって、そこに触れた私たちは、その歌がとても愛しいものになっていたんだよね。
ライヴが進んでいく中で、それを深く深く実感していました。初めて「生活」を聴いた時の衝撃とか、「無効の日」の穏やかな中に隠れてる狂気とか。「I・N・M」を聴いて、自分と重ねて泣きたくなったこととか、「月になって」をライヴで聴きたがっていたMちゃんが、お誕生日のライヴに聴けてよかったなとか、「センチメンタル」は私を切り取ったような歌で、泣きながら花びらが散る桜並木をチャリで駆け抜けたこととか、細かく言えばキリがないんだけれども。曲が色んな出来事とリンクしているなぁ〜って。

「負け犬」の時に、イントロを間違えて、「負け犬だけに」とか言ってちょっと笑ってたのには、ほっとしました。今日のライヴきっと楽しめてるんだよねってほっとしました。そうじゃなかったら、こんなこと言えないもの。
MCは、本当に少なかったです。最後のほうにちょこっとだけ。「翌日」を歌う前に、「明日を歌う歌を作ったので、気が向いたら聴いてみてください。」って言ってました。彼が作り続けてきた歌は、それがどんな色をしていても、明日を歌っていたんだよね。それを改めて刻んだ一瞬でした。

「Reborn」のイントロがなった時、本当に終わっちゃうなと思いました。この曲が最期だってことをきっとみんなわかってたはず。野音の時も言ってたよね。「野音の最後の曲は決まってますから」って。Syrup16gというバンドの幕を閉じる曲もこの曲に決まってるって、きっとみんなわかってた。だから、武道館の空気が変わったよね。顔が熱くなって、視界が歪んで、どうにもこうにもできない自分がいました。オレンジの光に包まれた彼らは夕日の中で歌ってるみたいでした。一日の終わりを告げる寂しくて優しい光。そんな感じでした。
最後は客電がついて、武道館全体が現れました。客席もステージも明るくやわらかな光に包まれていました。あの光景はきっと一生忘れられないな。神々しい時間でした。アンコールが三回。全てが終わって、三人で手を繋いで万歳をして礼をしていました。バックステージにいた人たちにも。手を合わせながら礼をして、去っていきました。ステージの脇の階段を下りて、バックステージに向かう彼らの背中には、ほっとした安堵が感じられました。ちょっと寂し気なそんな安堵が。もしかすると、それは彼らの背中に自分を投影しちゃったからかもしれないけれど。まぁ、答えはわからないなぁ。思っちゃったんだから仕方ないよね。

このライヴ、一瞬も見逃したくなかった。時に、感情が高ぶって、苦しくなることがあって、そんな時は、深呼吸をしていました。結構何度もやってたな深呼吸。そのせいか、そこそこ落ち着いて見れました。時に涙が流れたって、動揺しなかったよ。私はちゃんと彼らを見届ける、看取ることが出来たよね?だぶんそう。できていたはず。きっと武道館にいた人々は、みんな彼らを看取ってあげられたと思います。シロップを一緒に見続けてきたG嬢と一緒に見られて良かった。ありがとねG嬢。

Live Forever。新しい彼らが見れることはもうない。終わりと引き換えに永遠になったんだな。シロップの作品はずっと存在し続けるんだもの。CDだって、DVDだって、そこには彼らがいて、もしもそんな物がなくなったとしても、私たちの記憶にはずっと存在し続けるんだもの。例えば、私が財産を全て失ったとしても記憶は誰にも奪えない。いつだって、どこだって頭の中のアンドロメダの彼方からだって瞬時に呼び出して再生できるから。最高のハードディスクに最高の時間を記録したんだよね。それができたことを光栄に思うし誇りに思います。とは言え、現実的には、TVで放映されて、DVDがリリースされても、自分の目を通してこのライヴを見るのは、まだまだ先の話だろうな。それは、きっとまだきついと思うから。だって、ナンバガだってミッシェルだってスーパーカーだってできてないんだもん。当分は、私の最高のハードディスクから再生しますよ。あの時の空気も温度も再生できる高性能だもんね。

武道館に何人もの人から、「ありがとう」という言葉が飛び交ってました。届いてるよね。私は声に出すことはできなかったけど、今、ここから届けるよ。こんなちっぽけな場所からも届けるよ。美しい時間をありがとうSyrup16g。ありがとうという世界で一番美しい言葉に包まれて、ゆっくりおやすみ。そして、目が覚めたらば、それぞれの約束の地へ行っておいで。武道館のステージから見えた景色を歓声を拍手も一緒に持って行ってね。あなたたちのハードディスクに刻まれている今までの最高の時間全てを一緒にもって行ってね。それが、私の願いです。たぶん、Syrup16gというバンドを愛したみんなの最後の願いです。あなたたちが思ってる以上に、シロップは愛されているんだよ。

あなたたちからもらった、明日の歌をこれからもずっと。


2008年3月1日 日本武道館
syrup16g 'LIVE FOREVER' the last waltz of syrup16g

01.きこえるかい
02.無効の日
03.生活
04.神のカルマ
05.I・N・M
06.Anything for today
07.イエロウ
08.月になって
09.負け犬
10.希望
11.センチメンタル(弾き語り)
12.明日を落としても(弾き語り)
13.もったいない
14.生きたいよ
15.途中の行方
16.ex.人間
17.正常
18.パープルムカデ
19.天才
20.ソドシラソ
21.Sonic Disorder
22.coup d'Etat
23.空をなくす
24.リアル

(ENCORE1)
25.さくら
26.ニセモノ
27.新曲
28.イマジネーション
29.scene through

(ENCORE2)
30.She was beautiful
31.落堕
32.真空

(ENCORE3)
33.翌日
34.Reborn



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