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2005年08月21日(日) |
(星になった少年、黒岩重吾作品) |
映画「星になった少年」鑑賞 う〜ん… 一言で言うと、説明的でつまんない。 昔、あるところに、哲夢という少年がいました。 彼はタイで修行をし、日本人で初めての象使いになりました。 帰国後、象の楽園を作りたいという夢をもって、象の調教と世話をしました。 初の象さんショーも成功し、彼の夢は実現へと向けて少しずつ動き出したのです。 ところが…… という、お話、を語っただけ。
少年と象との、「心の」ふれあいを描きたいのか、 夢半ばで倒れた少年の哀しい生涯でお涙頂戴したいのか、 複雑な家庭環境での、不器用な家族愛を語りたいのか、 いったいなんなの? 焦点が絞れていないから、メッセージ性が弱い。 だから、ある少年の一生、で終わってしまう。 わざわざ映画にする意味がない。 どうぜフジテレビがやるんだったら、 日曜日の「ザ・ノンフィクション」でやるほうが、よっぽどいい作品ができそうだ。 (映画は、ノンフィクションではないけどね)
「兄弟のひとり」であるサルとか、倍賞美津子の演技とか、 いいところもあるんだけど、もったいないなあ。
もっとも、ラストシーンで映画館内には、 すすり泣く声がちらほら聞こえていたので、 それなりに感動的な作品ではあったみたい、と付け加えておこう。
黒岩重吾作品読書 井沢元彦の『逆説の日本史』を読んだら、古代日本への興味が再燃した。 家にあったので、黒岩重吾の作品をいくつか読んでみた。 『天翔る白日』『紅蓮の女王』『謎の古代女性たち』の3冊。
『天翔る白日』は、天武天皇の後継者争いに破れた大津皇子の小説。 『紅蓮の女王』は、推古女帝が即位する直前までの小説。 『謎の古代女性たち』は、タイトル通り卑弥呼や天照大神、推古天皇などについての考察。
見てきたようになんとやら、じゃないけど、 まるでその場にいたかのように、屋形の様子や、衣服の描写があって、面白い。 もちろん、それなりの下調べがあってのことだろうけど、大半は想像が補っている。 作者は、飛鳥に縁のある人で土地勘もあるそうだから、 大和三山がどう見えて云々というような景色の描写は実感がこもっていて良。
それよりなにより、登場人物たちの心情がなんともなまめかしい。 「紅蓮の」とつけだけに、推古天皇の情熱的な愛憎はすさまじい。 大津皇子は、かなり理想的な人物として描かれているが、 その彼も、最終的には愛のために身を危険にさらし、また若さ故に滅びる。 それが、ただ歴史の裏にこういう事情があったのでは?という想像をした、というのではなく、 生々しい一人の人として迫ってくるものがある。
歴史小説はなんか苦手なところがあったけれど、 ただ歴史上の人物の一生を、順を追ってたどった、というわけでなく、 魅力あるキャラクターとして描かれていて、これらの作品はとても読みやすかった。 政権交代という歴史上の事件を材料にはしているけれど、 テーマはそれじゃなく、人間の愛憎劇。 そして、ロマン。そう、ロマンだ。 作者の中で何を描きたいのかはっきりしているので、伝わってくるのだよ。
「歴史上の人物」に対する遠慮など一切せずに、 自身の想像(ある種の希望)をもって描ききる。 黒岩氏が古代の彼らのことをどんなに好きなのか、ということが伝わってくる気がする。
『謎の〜』は、そんな黒岩氏が古代のこと読み解いていく際の思考がのぞけて、 これはこれで興味深い作品。 堅苦しく難しくなく、丁寧に優しく書かれているので、 古代のことをあまり知らない人にも、わかりやすいかも。
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