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2005年01月21日(金) |
「理性」へのアイロニー(蠅の王) |
ウイリアム・ゴールディング『蠅の王』読了。
無人島に漂着するたくさんの子供たちの物語。 というと、まず『十五少年漂流記』を思い浮かべるが、こっちはかなり厳しい。 (まともに『十五少年〜』を読んだことがないので、はっきり違うとは言い切れないが)
無人島という極限状態。 そこで少年たちはふたりのリーダーを得る。 表のリーダー「ラーフ」と、裏のリーダー「ジャック」。 これはそのまま、 烽火(理性的に救出を求める)VS豚狩り(野生化してその地に生きる) という構図になっていく。 誰もが内面に持っている「負」の部分のことを、 「獣」と呼んでごまかし、けれど恐怖に飲み込まれていく少年たち。 ゆがんでいく関係。 そして、続く悲劇。 理性派の敗北。
イギリスの小説らしく、ラーフたちはたびたび、 「ここに大人がいたらなあ、理性的に解決するだろうに」 とぼやき、最後に救出にきた大人たちは、 「きみもイギリスの子供ならば、きちんとしなくちゃ」 というようなことをいう(うろ覚え)。
島での破滅的な出来事は、異様なようでいて、 実はすべて、この人間社会の縮図なのだ。 だから、この何度も出てくる「大人」への羨望は、 痛烈なアイロニーになっていて、 思わず苦笑してしまうほど、やるせない気持ちになる。
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