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2004年05月10日(月) |
なんとまあ、せつない物語か(村田エフェンディ滞土録) |
梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』読了。
友よ。 国に、宗教に、さまざまに人は属するといえども、 をれらを乗り越え、取り払い、 心通じ合う、友よ。
主人公「村田」の想いは、 そのまま梨木さんの想いに通じているのだろう、きっと。 下宿の女主人は、まぎれもなくウェスト夫人であり、 オットーやディミトリス、ムハンマドは、 梨木さんが英国で共に過ごしていた下宿仲間。
梨木さん独特の、不可思議な雰囲気を漂わせながら、 静かに、けれど陽気に始まる物語。 しかし、宗教や歴史、そして戦争と、 さまざまな要素が絡まり、次第に暗い影を落としていく。 あくまで、静かに。
しかし、それでもこれは村田の青春の物語であり、 友情という輝きへの賛歌なのだ。
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