草原の満ち潮、豊穣の荒野
目次|前ページ|次ページ
月と椰子の木(絵と音楽付き版はこちら)
むかしむかし、南の浜に 特別な椰子の木がはえていました。
その木はまっすぐ 月に向かってはえていました。
一本だけの神様の木で 月や星をひとやすみさせるために はえている木でした。
それはとても高く 空にむかってのびていました。
月や星はその枝に腰掛けて、こっそり ひとやすみしては 夜空へ登っていったのです。
ある夜、ひとりの少年が月をさわりたくて 木に登ろうと思いました。
とても高い木です。なんにちもずっと 登り続けなければなりませんでした。
少年はとうとう力尽き、下に落ちました。
まっさかさまに落ちて行く少年を 風が吹き飛ばし その体は海へ落ちて 沈みました。
海流の女神は少年のバラバラになった かけらを拾いあつめて言ったのです。
「お前は海に住みなさい。 あの木は登ってはいけない。 お前は空で生きるものではないのです」
少年はそのまま海に住み、それが 海人のさいしょになりました。
〜海に伝わる古い話〜
|