サヨナラした彼はバイクが大好きな人だった。 正確には「バイクにのってどこかに行くのが好きな人」
カワサキのエストレアに乗っていた彼。 「エストレアっていうのはどっかの国の言葉で『風』っていう意味なんだって」 そう言ってたっけ。
今でも町でこのバイクを見かけると思い出す。
よく後ろに乗ってケーキ屋やパン屋を巡った。風がビュンビュンぶつかって。冬は寒くて、涙目になる。 彼はすごく身長の高い人で、後ろからは前が良く見えないくらい背中が大きかった。
大好きだった背中。大好き「だった」。 サヨナラしてきたのは彼のほうからだけど。
それでも、
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