ぶらんこ
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2009年05月07日(木) ガーブリ

今はどうなのかわからないが、昔、わたしが小学校の頃は、授業が始まるときに決まり文句(挨拶)があった。
生徒は日直さんの掛け声で席を立ち、先生に向かって一礼しながら「お願いします」と言うのだ。
当時は悩むこともなく皆に倣ってしていたのだけれど、なんだか軍隊みたいだな。起立!礼! なんて「号令」って言ってたし。

まぁそれで大抵の先生は「はい、お願いします!」とか言って授業を始めた。
が・・・当時、ひとり、ちょっと(?)変わった先生がいたのだ。



彼は理科の先生だった。
確か低学年の頃は担任がすべての教科を任されていたが、4年か5年からは理科や音楽は専門の先生がいた。
だから彼に教わったのは4年生になってからだったと思う。

「理科室」は校舎1階の端にあり、奥に倉庫のような資料室の付いた、大きな教室だった。
普通の机ではなく、作業台のような大きな机がいくつか並んでいて、生徒は班に分けられて座った。
黒い遮光カーテンを引かれた窓際には怪しげな液体瓶が置いてあり、タマゴから孵化する雛(鶏)が順番よく並んでいた。
(けっして見まいと思いつつ、ついつい目をやってしまっては酷く後悔したものだ)
他にも、虫やら貝殻やら石の標本があったり顕微鏡やらビーカーやらがあったり独特な匂いもあったりで、とにかく特異な雰囲気を放っていた。

そんな理科室は、どこか神秘的かつ魅力的な場所だったのだが、あまり近付きたくない場所でもあった。
その理由が、彼(=理科の先生)だったのだ。


彼は、一言でいうと、「怖い」先生だった。
どう接したら良いのかわからない、近付き難い先生。


理科の授業は、とにかく「緊張」の時間だった。
(他の子はどうだったのかわからない、少なくともわたしにとってはそうだった。ええかっこしぃの小心者だったからね)


まず、授業がなかなか始まらないことが多々あった。

起立、礼、 お願いします
そう言ってから座った後、なぜか先生が何も言わないのだ。
子供たちが、なんなんだろう・・・と思い始める頃、

「お願い・・・・・・されません」

先生の、低く抑えた声が教室中に響く。


最初の最初にこの言葉を聞いたときは、子供心にうろたえたよ。
お願いされません、って、、されません、って、、、どうすればいいのよ???

たぶん、このとき先生が「やり直し」とか言ったのだろう。
今になって思い出すのは、何度も繰り返された「お願いします」という言葉と、目を閉じたまま顔を横に振る先生の姿、
え?また?なんで?という気持ち、馬鹿みたい、、、というあきらめ、じゃったら授業なしで帰らせてくれ!という悲痛な願い・・・まぁ色々。
けど、そんなこんなの葛藤とともに、やっぱりその度いちいちうろたえるのだから、純粋だったのかも。


あの頃の自分たちがそんなにふざけてたのかどうか。 今ではもう思い出せない。
教師にかなりコントロールされてたんだなぁ・・・と、苦々しくは感じる。
子供にとっての「先生」という存在って、強大なんだなぁー ってね。

嫌いな先生ではなかったようにも思うが・・・どうなのかな。
思い起こすと「怖い」というイメージしか湧いてこない。というのが、ちょっと淋しい。
あ、でも、先生が「お願いされません」と言ったとき、たまーにちょっと口元が緩んでいたことがあったのは覚えている。
怒っているだけじゃなかった。それは確かだ。


そうそう。彼のあだ名は「ガーブリ」だった。
誰が付けたのかはわからないし、由来も知り得ない。
TVか漫画のキャラクター名のような気もするし、怖いイメージを名前にした島口なのかもしれない。

はげー、ガーブリ、好っかんかったーーー!

直訳すると、「ガーブリ(先生)は好きではなかった」だが、島口で言うとね、愛情がこもっているのだよ。(と、思いたい。笑)



 ・・・


ところで、なんでこんな話を思い出したかというと−


こころがあるクラスで日本の学校について説明する機会があったらしい。
彼女はそこで、小学校の頃の体験入学の話や、約3年間の中学生活の色々を話したのだそうだ。

 そのときね。。。授業の始め方についてマミィの『お願いされません』の話もしたかったんだけど
 あはは!それは〜 英語にしても意味が伝わらないちゅうか説明が大変でしょう〜
 うん・・・だから話さなかった
 それにしても、そんな話あなたよく覚えていたわねー


というワケ。笑


ちなみに、この国では授業開始の決まり文句などはなく、「お願いします」に合致する英語自体、存在しない。
あえて言うならば、
 Good morning/afternoon! という先生の言葉に
 Good morning/afternoon, Mr./Mrs. xxxx! などと子供たちが返す。

これも小学校くらいまでかも。。。しかも、日本の学校みたいに授業と授業の間の「休み時間」もないから、状況が違ってくる。
また、高校生ともなると、先生が入室しようがしまいが授業が始まろうが始まらまいが、「勝手にどうぞ」ってな態度だろう。


規律で強制するか、規制なしで自由にするか。
まぁどちらにしても、ティーンエイジャーの中身はさほど変わらない。だろうね。笑






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