久しぶりにみた夢で
貴女が笑うことは未だ無い。
― 君死にたまふこと勿れ
『続、追憶』
夢のような現実などなく 現実のような夢ばかり、みる。
―貴女の作る、温かい夕食を思い出した。
擦れ違いがつくる冷たい夜の一人の時間の中で 大雑把な、自分の為だけの夕食は 安易なもので、手当たり次第の不摂生。
湯を注げばスープは出来るし それはそれなりに温かいのだけれど
不意に、 「よそってくれる温かな手を思い出した。」
子供以上に子供な私が 急いて零した大事なものは 二度とこの手に戻らぬと知って尚 それを望むのは 私が子供のままだからだ。
戻らないものが、今、欲しい。 無いものを強請る。 失くしてきたものばかりに囚われて 得てきたものを、忘れていたのか。
貴女の得意料理を思い出す。 台所に立つ。 見よう見真似と朧気な記憶を頼りに あの温かかった夕食を作り始める。
「今夜もまた、」 「冷えてきたね。」
戻ってきて、と心から叫ぶことは無い。 こんなにも焦がれるけれど。 今、叫ぶことが出来るなら
あの日に向かって叫ぶことが出来るなら
どうか
― 君死にたもうことなかれ
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