限定鼓動

2004年03月09日(火) 鼓動

心臓の鼓動が鬱陶しかった。
生きている証に腹立った。
正気で考えれば、すでにおかしなことで、でもまぁ、その時は本気でそう思った。
左胸の上部、躊躇いもなく剃刀を引いた。
血が止まらなかった。
だから一晩中、起きていた。
眠れば何らかの形でバレる。そう、確信したから。

朝一で病院へ行った。
もう通い慣れた。
付き添ってくれた彼女、どうもありがとう。
待ってるのはどきどきする、とただそう笑っただけで。

「どうして」と泣く祖母や、いっそ死んだら―…と叫ぶ母親
それを抑える父親と、関せずの弟。
あたしの家族はこんなもんで、
いちばん過ごしやすい状況を、そしていちばん反省する状況をくれるのは
いつも他人だ。

縫うしかない、との判断で横になった私は、何となく腕で眼を塞いだ。
自分が情けなさ過ぎて。

やっぱり麻酔は余り効かない。
効きにくいらしいと云われてるから、小さく痛いと口にはするけど、どうしても仕方ない。
先生、男前。で、声にすると
呆れたように、「40もきたら、それがお世辞かどうか判るわ」と云われ。
けれど、やっぱり男前な感じ。
けれど胸元の傷なので、無い胸を見られて少しショック。
心臓が完全な左にあるわけでもなく、刃先が届く訳もない。
そんなのは理解ってるんだけど。

いっそ
心臓を、切り裂きたかったんだ。


今日は3つ、ヤなことがありました。
その代わり、
今日は1つ、とてもいいことがありました。


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陽 [MAIL]