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2005年07月15日(金) 掌編「また、明日」

 女運があるのかないのか、よく解らない。俺は目の前の女の子を見ながらそう思った。彼女は俺を見上げて立ち止まっている。またか、と思った。生まれて二十一年、こういうシーンに巡りあう事は一度や二度ではなかった。
 彼女は同じ部の同期だ。それなりに仲もよかった。キャンプに行ったときは、二人ともう一人の女の子とで抜け出して星を見たりもした。何故三人だったのかは解らない。ただ、覚えていることは、あのときの星空が今でも忘れられないほどきれいだったことだ。この辺りは排気ガスにまみれていて、星なんて数えるほどしか見えない。今だって、見上げたところで星は見えない。その代わり、歩道の隣の道路にはたくさんの車が通り過ぎる。片側二車線の道路は、車で覆いつくされている。赤いテールランプが伸びた。もう、すっかり夜だった。夜だけれど、車はもちろんのこと、道路に面する店の灯りに街灯、この街は夜の闇なんて跳ね除けている。だけれど、目の前の彼女は闇に同化しているみたいに見えた。ただ単に黒いワンピースを着ていたのだ。そして俺自身も黒いスーツを着ていたので、端から見るとひどく黒い人に見えたことだろう。
 人々は俺の横を通り過ぎていく。立ち止まる俺のことなど気にも留めず。少し先のバス停で並んでいる人々の幾人かは、待つことが暇なのか俺のことをじっと見ている者もいた。やがてバスがやってくると彼らはバスに乗り込んでいった。俺も乗ろうと思っていたバスだ。しかし彼女がじっと俺を見ているので、俺は動くこともできずにただバスを見送った。ゆっくりしたバスの動きを見かねて、何台もの車が右側に車線を変更してバスを追い抜かしていく。バスの乗客を無意識に目で追った。部活の連れが何人か乗っていた。バスの中は明るくて、彼らの表情がよく見えた。連中はなんだか元気がなさそうだった。もう夜も遅いから、眠気もあるに違いない。
 バスが視界から消えた。彼女に目を戻す。彼女の姿はやはりこの辺りの街並みよりもよほど夜らしくていっそ清々しかった。
「どうしたの」
 さすがに沈黙が苦しくなってきて俺の方から尋ねた。彼女から俺を訪ねてきたというのだから、何か用事があるはずだと思う。前にも別の人だが何度か同じようなことがあったのでいちいち驚いたりはしなかった。
 彼女は首を傾げた。そして小さく口にした。
「好き」
「唐突」
 俺は思わず笑った。予想はしていたのだが。
「だって、ずっと好きだったもの。知ってたでしょ?」
「知らない知らない」
「星、見に行った」
「三人だったじゃん」
「二人だと恥ずかしいんだもの……」
 もう二十一じゃないか。俺は苦笑する。なんだか俺まで気恥ずかしくなってきて、適当にその辺りをぶらぶら歩いた。ガードレールに尻を預けた。俺の真後ろを車が過ぎていく。そのスピード感を、風で直に感じた。髪の毛がなびく。俺は片目を閉じて髪の毛をやり過ごした。もう夜も深くなってきたせいか、車のスピードが昼間よりも随分速く、運転も荒い。
 彼女は俺から少し離れた位置に立っていた。自転車の若者が彼女の真後ろを通り過ぎていく。彼女は避けもしなかった。自転車も避けもしなかった。彼女はそれでもまっすぐ立っていた。
「好きなの」
「うん。ありがとう。嬉しい」
 素直に言った。指先を指でいじった。じっとはしていられなかった。
「ねえねえ、付き合っている人っている?」
「いないよ。けど」
「じゃ、私と付き合ってくれない?」
「できたらそうしたかったけど」
「けど?」
「もう、終バスなくなるんだ」
 俺はガードレールから体を離した。バス停を見やる。三つ先の交差点の向こうに、高い位置にライトのついた車を見つけた。バスだ。あれに乗らないと俺は家に帰れない。バス亭にはいつのまにかまた人が並んでいる。あれはきっと後から部室を出た連中だろう。彼らも黒くて、顔が白く浮き上がっているように見える。
「そっか……」
「うん。ごめん、行かなきゃ」
 行こうと足を動かしたところで俺は思いなおして立ち止まる。彼女がひどく寂しそうに俺を見ていた。俺は足を戻して、彼女の前に立つ。こんな時間だが犬の散歩をしている人間が俺の前を通り過ぎようとした。ひどく小さな犬が、彼女の足元を過ぎていく。過ぎた瞬間、犬がいきなり吠えた。飼い主は驚いて犬を引っ張って早足で過ぎていった。
 犬に吠えられた彼女は耳を押さえていた。ひどく不安そうに眉尻を下げて。
「犬、苦手なの」
「知ってた。あのさ、大学の前のセントバーナード? 吠えられて泣いてたじゃん」
「知ってたの?」
「うん。知ってた。見てた」
「や、やだな、そんなとこ見られてたなん……」
 俺は彼女に静かに口を寄せた。彼女は言葉を止めた。だけどそんな必要はなかった。俺の唇は彼女に触れなかったからだ。
 体を離してバス停を見やる。バスがもう手前の信号で止まっていた。もう走らなければ間に合わない距離だ。
「……じゃあ、おやすみ、な」
 俺は走り出した。だけれど、彼女が俺の背中にこんなことを言うので俺は立ち止まってしまった。
「また、明日!」
 振り返る。
 歩道には、ラーメン屋の上のアパートに帰っていくと思しき男女が歩いているだけだった。車道には車が。そして、バスの過ぎ去っていく姿が。
 彼女の姿はない。闇に、消えたように。いや、少しはある。もう塵にも見間違えてしまうほど、希薄な姿となって。
 自分の姿を見下ろす。黒い喪服は彼女と同じように闇に同化しているように思えたが、決定的に違うことは俺自身は同化していないことだ。
 しばらくしたら彼女は本当にいなくなった。何もなくなった。
 彼女のいたところまで歩いていき、手を伸ばす。伸ばした手は空を切った。それは彼女がいても同じだっただろうが。
 踵を返してバス亭まで歩く。時刻表を確認し、腕時計を確かめてみた。やはり先ほどのバスが終バスだった。しかたないので俺は歩き始める。K駅まで歩いて三十分ほどだろうか。時計を再び見て計算する。それは終電にも間に合いそうにない時間だった。
 ため息をついて、近所に住んでいる一人暮らしの連れに電話する。幸い、奴の家には彼女も来ていないようだったので泊めさせてもらうことにした。
 周囲の店の電気が消えていく。周辺のマンションからも徐々に光が失せていく。
 空を見上げた。少しだけ星が見えた。それでも、彼女と見たあの長野の星空は忘れられそうにもない。
 今日、部活の皆で行ったのは彼女の通夜だった。
 明日なんてないのだ。
 俺は口笛を吹きながら連れのアパートへ向かう。酒でもコンビニで買っていった方がいいかもしれない。女運ねえな、と電話の先で言った奴を道連れに自棄酒でもしようかという気分だった。















 ごめんなさいごめんなさいごめんなs(ry



 だって!
 記念小説とか書ききれないんだもの! ただどれなんてもっと書ききれないんだもの! 香水だって書ききれないんだもの!
 息抜きにまったく違うものを。
 ええ、ごめんなさいごめんなさい(永遠ループ)


 ……ひのさん何でもいいから小説が書きたかったみたいです。
 しかもこのタイトルって、かわいいTさんのとこの掌編にもあった(でも話の中身は違うハズ)。
 なんか某所で知ったYaho○文学賞(伏字の意味がない)のテーマ「明日」から連想。……なんて希望もクソもない話なのだ、こんな希望に満ちたテーマなのに。




 なんとなくこの「俺」は「マキちゃんと朝」の俺なのだろうなぁと思ったのだけど、年月過ぎ去ればすっかり語りが違う人に(私的に。人にはわからずとも)。前に合わせる気もナカッタヨ……。
 最近は情景描写をしようと思うことは思うのだけど、なかなか難しいのです、情景描写。めー。




 にしても明日結婚式なので早く寝よう、うん……。






 優しい人、さんくすー!


 ただどれ……待ってます。8月は受験追い込みですが(笑)

 ぐはぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!
 ……ま、待っていてください。でも、本当なら、書いてまーすなんてそぶりも見せずにいきなり連載始めたかったのですが(なんか憧れらしい、そういうの)(えー)。
 ……そぶりも見せずに来年連載とかだったりしても許してください
 受験て、八月追い込みだったのか……(当時、お盆を過ぎたら一切勉強しなくなった私だが)。



 二周年おめでとうございます! 
 2周年おめでとうございます! これからもサイト運営頑張ってくださいー! 「10オーバー」も楽しみにしております!
 二周年くらいおめでとうございますー(笑)


 うわぁ、皆さん優しいー! ありがとうございますー!(本人は、そう、三番目の方のいうとおり日にちを忘れているが
 ていうか、二番目の人、去年の覚えてる!?(いや、日記を見れば書いてあるが)(去年の日記読み返してみた)(私頑張ってる(ネタ方面に))
 まぁ気ままにやってきたサイトですが、こんな感じでのんびり今年もいきたいですわ。そんな負担にもならずに趣味の範疇で。
 皆さんもサイト運営頑張りませう!






 初期の方ー!
 って、水曜に私信した人デスケド! わぁい、許可が下りましたー! これでいつかこっそりウイルス感染中パソさまに接続された複合機でスキャナ取り込みしよーと思います!
 わーい、わーい! 本気で格好いいので日記からもリンク貼ろう……!




一言ございましたら。

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