SS日記
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2004年11月04日(木) 空の境界 9

人気の無い通りを阿部隆也は足早に歩いた。
西日に照らされた道は、まだ少し明るい。




『公園で、待ってる』




聞いたのは、たった一言。
榛名が『公園に、来い』ではなく『公園で、待ってる』と言った。
ただ、それだけ。


でも、まるで釦をかけ違えた様な―些細にして、決定的な差異。


視線の先、小さな児童公園に榛名が居た。
声をかけようとして、躇う。
夕日を見据え、佇む横顔は何処か現実感がない。


考えを打ち消す様に阿部は軽く頭を振った。




―そんな




鼓動が、跳ねる。




―そんなこと、ある筈がない。




項の辺りが、締めつけられた様に痛む。


喘ぐかに息を吐き、阿部は榛名へと歩み寄った。
砂を踏み締める音に気付き、榛名がゆっくりとした仕草で振り向く。






「初めまして―
 阿部隆也」





言って、榛 名 は 柔 か に 微 笑 っ た 。



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