母は、お酒を飲まない人だった。
ある日を境に、すこしずつ飲むようになった。
「お母さん、あんまりお酒のみすぎたらあかんよ」
小学6年生のあたしは言った。
中学生。母は倒れた。毎日のように。 救急車がたくさんきて、 家に帰ったら倒れてて、あたしは驚かなくなった。 母は、かならず目を見開いて倒れていた。 その目からは、涙が流れていないことはなかった。
あたしは両親の離婚のことで、一切泣かなかった。
そんなある日、
「ごめんね、ごめんね。こんなお母さんで。 でもあんたら2人は、お母さんしっかり守っていくから。 あんたが、『お母さん、あんまりお酒のみすぎたらあかんよ』って言ったとき お母さんすごいうれしかったよ」
といって、母は泣いた。
母の涙は見慣れていたはずだったけれど
そのときのことを思い出すと、 今でも涙が出る。
|