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昨日の夢を話そう(笛/三上)(未来系)。
2009年03月09日(月)
どんなことでもいい、色んな話をしよう。
「どうして学生の頃って、あんなに話すこと一杯あったのかしら」
ある日、円錐型の湯飲みを右手で持った彼女が、くすりと笑いながら言った。
夜九時半は、夕食も終わり、静かなお茶の時間だ。壁際の花台に活けられている淡い桜の花。初春の夜はエアコンをつけなくとも、緑茶のぬくもりで事足りる。
「そんなに話すことあったか?」
テーブルを挟んだ座布団の上、黒髪の三上亮はわずかに眉を寄せた。
彼女が言う学生の頃なら、こんな時間帯に一緒にいることはなかったが、互いに二十代半ばになれば夜一緒にいてもおかしくはない。
「ほら、大したこと話さないのに、帰り道コンビニでずっと話してたりとかしてたじゃない?」
「…ああ、なんかあったな、そういうの」
部活が終わった部室で、いつまでも友達と他愛ない話をしていた十代の記憶。脳裏によみがえらせた三上を見て、少し前にほぼ十年近く振りに再会した彼女が笑う。
「今じゃ、どうでもいいような話でも延々と続けるのって難しいなって思ったのよ」
「仕事してると時間ないもんな」
「だからって、学生のときすごくヒマだったってわけでもないでしょう?」
色んなことを話したい年頃だったのかもね。
自分で煎れた緑茶の水面を見つめながら言う、あの頃三上の隣で制服を着ていた彼女。今となってはジーパンにパーカーというラフな格好で、耳朶に蒼い石が光っている。
三上も三上で、もう十代の頃のように制服かジャージかの二択ではなくなった。
大人になって再会して過ごすようになった、穏やかな夜。
「話なんか、これからでもいくらでもできるだろ」
片膝を立て、三上が軽く言うと、彼女は妙に嬉しそうだった。
「そうね」
三上には、その嬉しそうな笑顔の意味がわかる。一度は終わった恋をもう一度始められた喜び。今度こそは、と手を繋いだ意味。
ふれ合う温度も欲しいけれど、ただお互いのことを話して、聞いて、言葉を交わすだけの時間。無為な話題しかなくても、その時間の楽しさを忘れたくはない。
言葉にしなければ伝わらないことは少なからずあるはずだ。愛情だろうと友愛だろうと、それは同じだ。
相互理解の大前提。どんなことでもいい、二人で話して、理解できないところはさらに話して埋めていけるのなら。
時間はまだまだある。
差し向かいで視線が合うと、なんとなく二人で笑ってみせた。
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どうってことない、ただ話をしているだけの人たち。
話してるだけなのに目が合うとふわっと笑い会える関係って、まさにほのぼのよねぇ、と思いつつ。
今日ひさびさに話をした友人がいたのですが。
全然違う職種とはいえ、仕事に対するスタンスがそれはもう全く違いまして。
仕事について私は私なりの夢があって、それを果たすのは私個人じゃなくて私が所属する組織で、自分の名前は残らなくても社会的にその成果が残ればそれでいい、と思っています。だから自分が自分がと自己顕示するよりも、組織の歯車として成功に貢献できればそれでいい。
しかし友人は、自分一人で大きいことをして成果を財産で残したい、と。…ま、要は権力と財力か。
どっちもどっちだね、と思う次第。
野心の差かな。
一緒に仕事したらしんどそうなので、違う会社でよかったと思ってみたり。
こういうのも、腹を割って話してみないとわからないことですね。
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