小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
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短期戦略の検討会議(笛/三上と渋沢ヒロイン)。
2007年07月13日(金)

 かすかにほころび、淡く色づく。









 約束して待ち合わせて落ち合ってお出かけ。
 たかがそれだけのことに、今の彼女は頭を悩ませていた。

「どうしましょう三上さん!」

 半袖のシャツからのぞく、白い少女の腕。三上の机を両手で叩きつけるように駆け寄ってきた年下の少女は、焦った顔つきだというのに口元は喜びが滲んでいる。
 昼休みも半分過ぎた教室で、着席しているのはクラスの半分ほどの人間だ。そこに他学年の少女がいるというのは若干人目を引く。昼寝を決めこもうとしていた三上亮は、その少女を半眼で見やり、うんざりした顔を隠さなかった。

「知るかよ。自分で考えろ」
「話ぐらい聞いて下さい」
「イヤだ。うっぜえ渋沢の話なんか聞きたくねぇ」

 早く自分の教室帰れ。
 薄情に手を振って追い返そうとすると、彼女は困ったように眉根を寄せた。

「…だって、克朗が急に日曜出かけようって言うんですよ?」
「だからどーした」

 友人の幼馴染兼彼女といえど、三上にとっては同じ部活の後輩というわけでもない。だからこそ先輩付けをしない『三上さん』の呼称を許しているわけだが、何かと頼られる謂れはない。
 敢えて言うなら、今はただ眠かった。梅雨どきの湿気た空気と、昼食後の気だるさ。重なれば睡魔の甘美さが愛おしくてしょうがない。
 昼寝を邪魔する奴は死んでしまえ。己の黒い前髪を視界の端に捉えながら、三上は机に頬杖を突いた。

「あのな川上、俺すーげぇ眠いワケ。お前と渋沢のいざこざなんかどうでもいいワケ。自分のことは自分で何とかしろ。以上」
「…すみません」

 一級下の少女は、ようやく押しかけた自分の行為を省みたのか、謝りながらうつむいた。細い髪が、耳の横を滑り、その頬を隠す。
 謝るなら、そのまますぐに立ち去ればいい。それでも彼女はそうしない。ここですぐ去るぐらいならば、上級生の教室に下級生が入って来るはずがない。
 恋愛相談は三上の本質に向いていない。かといって、この少女をこれ以上突き放せるほど情がないわけでもない。
 致し方なく、三上は頬杖をついたまま、やや顎を彼女のほうへ突き出した。

「んで、渋沢が急に何だよ」

 聴いてやるから言ってみろ。三上のその考えは彼女にも通じたのか、年下の少女はほっとしたように顔を緩ませた。

「あの、克朗が出かけようって言うんです。日曜」
「行けよ。何の問題があるんだよ。用事があるなら別の日にすりゃいいし、行きたくないならあのアホに直接言え。俺は仲介なんてしねーぞ」
「何着ていけばいいんでしょう」
「は?」

 何の冗談だ。三上はそう思ったが、彼女は本気のようだった。生真面目さが宿る顔つきは真剣そのもので、年上を頼る後輩の目をしていた。

「だってこんな季節の変わり目に急に言われたって! 部活が忙しくて休日に服とか全然買ってないし、夏服は去年のばっかりだし、普段制服着てれば済むから私服のバリエーションって少ないじゃないですか!」

 十代乙女の主張。
 ここでおさらいすると、三上の目の前の少女と、三上の友人の渋沢克朗は実家が隣同士の幼馴染である。幼稚園の頃から兄妹のように育った。ところが兄貴分のほうがいつの頃から少女を恋愛対象として捉えるようになり、少女も結果的にその想いに応え、学園の公認カップルが誕生した。…それが彼と彼女の現在だ。
 ただの付き合いたてカップルではない。十数年も前から知っている仲だ。今さら着る服も何もどうでもいいのではないか。
 花も恥らう乙女の気持ちは、三上にはさっぱり理解できなかった。

「…三上さんそんなのどうでもいいって思ってますね」

 三上の沈黙とあからさまに馬鹿にした視線に気づいたのか、夏服の彼女は鼻白んだ声を出した。
 思って悪いか。大抵の男ならどーでもいいって思うぜマジでよ。…とは三上は言わなかった。彼女とここで揉めるのも面倒だ。
 世の中はこうやって些細なことで恋心悩ます少女を可愛いと呼ぶことがあるらしいが、生憎三上は全く思わない派だ。

「何でもいいだろ。つーかなんで俺に相談すんだよ」
「三上さんなら克朗の好みなんとなくわかるじゃないですか」
「わかるか。だいたいお前の私服なんかどうせ渋沢見飽きてるはずだし」
「あれで以外と細かいんですよ。新しい服とか微妙な服ならすぐ指摘されます」

 特定の分野で千里眼のように目端が利きすぎる男、渋沢克朗。
 そんな相手に逐一ファッションチェックされるなんて三上なら絶対に嫌だ。そもそも渋沢は、そうやって長年幼馴染の服の趣味まで網羅してきたのだろうか。

「…あいつってさぁ、どっかでストーカー気質あるよな」
「三上さんもそう思います!? 変なところで自分が全部知っておかないと気がすまないところありますよね!」
「その対象お前な」
「嫌です!」

 渋沢克朗の最愛の『妹』は頭を抱えるように叫んだ。すでに眠気も覚めつつある三上は、その有様を見ながら口端を吊り上げて笑う。

「とんでもないのに好かれてめんどくせーなお前も」

 それでも彼女は、どうにかあの兄代わりだった存在に好かれたくて、外見も中身も磨きたいのだろう。文句は言っても、少女は渋沢の束縛を厭わない。
 服も靴も鞄も、外側を飾るものを重視するのは相手がいるからだ。
 約束して待ち合わせて落ち合って一緒に出かけるのも、一人ではできないことだ。
 せいぜい悩んで、心を決めた服で彼の前へ行けばいい。似合っているのなら手放しで褒めるだろうし、逆ならばそれとなく似合う服を伝えるだろう。渋沢ならそのぐらいできる。
 ただ、困惑するほど焦って三上のところへ泣きついてきた彼女のことは黙っていようと、三上は残り十分となった昼休みの最中に思った。









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 しばらく書いてないと文章って書き方わ(中略)。
 あと結さん久しぶりで、どんな子か結構忘れてた…。書きながら思い出してました。そうだ髪の毛の表現は「肩ぐらいまでの細い髪」だ! とか。

 まあデートのときの服装ってかなり悩むよね、というのがテーマでした。
 制服時代は楽だったし、学生時代は平日私服なのでそのまま着ていけば済む。しかし社会人となったいま。会社用の服そのままじゃ仕事寄りだし、かといって土日の友達と飲むときとかの格好じゃアレだし、そもそもアレだしコレだしと悩み始めると尽きない。
 服とか靴とか鞄とかアクセとか、天候とか相手の服の趣味との合わせとか場所とか交通手段とか、考え始めた本当に切りがないと思います。
 …とりあえず蛯原さん路線でいっとくか! ぐらいの投げやり感って大切ですよね。
 でも仕舞いには「考える時間のために後一日遅らせてください」とか思うようになるワケですよ(バカじゃないの)。
 そして友人から「お前は中学生向けの少女漫画か」と呆れられるわけです。結構胸に突き刺さった2●歳の夏。台風寸前。

 そういえば先日神咲さんを待ってる間に立ち読みしていた「クジラの彼」(有川浩)を購入・読了しました。
 心理描写の緻密さと、時折ある良い感じでざっくりした表現力が大変好みだったので、他の作品も読んでみようと思います。「図書館戦争」とか有名どころっぽいので、本屋さんで遭遇できるとよいなぁ、と。
 まあこのクジラ本は完全恋愛小説なので、他のとはちょっと毛色が違うかもしれませんが…。女性視点の恋愛の『夢』を詰め込んだ感じの一冊でした。

<個人次回用メモ>
●本当に好きかどうかは、まだわからない。
●友達ひとり無くした場合。
●ゼロとイチ。
●賽を投げたのどちらさま。





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