振り返る1
2019年3月を振り返る。
たった2年しか経ってないのに記憶が曖昧だ。

あの日、父から電話があった。
私は昼寝していて気づかなかった。
何度もかけてるのにと怒鳴られたような気がする。
パニックになった父は何を言ってるのかわからず、ただ妹が
もうこの世にいないことだけわかった。

すぐに母が電話を代わり、私は今から行くと言った。
電話では死因は聞かなかった。
来ても会えないと言われたけど、会うつもりは毛頭なかった。
実家に着くと、私は世間話を始めた。
妹について聞きたいと思わなかった。

時折、咆哮のような泣き声で泣く父。
少しづつ話し始めた。
最後、部屋のドアを閉める寸前、スリッパが散らかっていたそうだ。
いつもはきちんと揃えているのに。
おかしいと思ったのに、そのまま帰ってしまった。

警察から電話があり、まず父が疑われたそうだ。
警察署、妹の部屋、実家と何度も行き来して
そのたびにパトカーで送迎してもらったそうだ。

妹は度重なるストーカーに対抗するため
セコムに入っていた。
だから、警察官と一緒に部屋に入ろうとしても入れなかった。
錠前屋さんを呼ぶとあっという間に開いた。
解錠するのに7万円かかった。
警察官も両親もドアから離れてくださいと言われ
解錠する瞬間は見せなかった。

そんな話や、警察署で尋問まがいのやりとりをした話や
思い出や、後悔や、自分を責める言葉やを聞き
時折泣き叫ぶ父を宥めて、夜を明かした。




2021年06月02日(水)

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