見えない目
彼にとってはほんの出来心。
それを私のせいにされた。

加齢と老いを感じないよう、精一杯してきたつもりなのに。
20年ぶりに脱毛に通い、形成外科を探し、まめに美容院に行き。
服を買い小物を買った。
月に2回整体に通い、秋口にはしみやほくろの除去を考えていた。

何度目の裏切りなんだろう。
何度目の絶望だろう。
私がした覚悟はまだまだ甘かったんだろうか。

買ったばかりのDVDのリモコンを投げつけ、壊してしまった。
今すぐ殺してくれと、殺してやりたいと摑みかかった。

なのに一人で生きていく未来を想像できない。
今度こそ一人になってと思うばかりで、そうならばいっそのことと。

平日の終わりには目が見えにくくなる。
眼精疲労のせいだから目薬を買えばいいと彼は言う。
こうしてここに打ち込んでいるけれど、ほとんど見えていない。
新聞も買った文庫本も読めない。

こうやって老いを実感する。
若い彼には理解できない。

彼と撮った写真をプリントアウトして飾った。
何度裏切られても、惨めな目にあっても。
見えない目で老いさらばえても。




2006年08月20日(日)

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