甘く感じないキス
何度も何度もキスをされる。
だけど、私の心を満たさない。
胸がぎゅっと苦しくなることもない。
午前零時前、玄関を開錠する音が聞こえる。
体調を気遣ってくれる君がやってきた。
抱き締める腕に力が入ると、吐き気が込み上げる。
それは君に対しての嫌悪ではなく
背中の痛みが取れないからだ。
薬の副作用で、吐き気と下痢が続く。
胃薬を飲みながら、もう1種類の薬の副作用に
悩まされるなんてね。
だから、今は胃薬だけを飲む。
疲れることはさせてないのに。
君の体力と気力は、私のそれとは比較できないほどだ。
だから私の弱々しい体力が理解できない。
吐き気が治まらない。
痛みが消えない。
軽いキスをされるたびに、彼を思い出した。
彼なら、ここまで気遣ってくれなかった。
こんなに優しく静かに背中をさすってくれなかった。
やまに東京で会った時、目が覚めたように
いつか彼に会うことがあるなら、目が覚めるだろうか。
9ヶ月が過ぎた。
彼の顔を最後に見てから、9ヶ月が過ぎた。
私は君に、心にもないことを簡単に言う。
一緒に帰ろう。
ね、一緒に帰ろう。
君がどう答えるか知りたいだけで
本当に一緒に帰りたいと思っていない。
君の居場所はここだから。
雨が降り続いて、このまま冬になっていく。
気温が5度下がると、体温がついていかない。
慣れる前に、また気温が下がる。
君が突然、東京に行こうかと言う。
私がここでは耐えられそうにないと思ったから。
現実にはならなくても、気持ちを汲んでくれただけで
ありがたい。
彼は言っていた。
誰も知らないところで、二人で静かに暮らそう。
叶えられたら、どんなにいいだろう。
あのときは甘い期待で胸が一杯になった。
今、誰も知らない場所で、君と静かに暮らしている。
現実になると、苦痛だと知った。
相手が違うからかもしれない。
だけど私の性格では、相手が誰だろうとダメだ。
やってみてよくわかった。
久しぶりに外食した。
楽しかったよ。
気分転換になったよ。
ありがとう。
2004年10月05日(火)
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