形跡
手書きでログを取るのは、捨ててしまった写真と
メールと他のたくさんのモノの代わり。
5月11日に初めて読もうと思ったのは
前の夜に、何か話したからだったかな。
5月18日に、117回も来てるのは
私が、日記のどこかを反転して読めばいいと言ったから?
午前9時前のログを見ると、早起きしたんだねと思う。
週明けの午前10時過ぎは、二日酔いだったのかなと思う。
21時過ぎは、遅くまで仕事してたんだねと思う。
6月に入り、私の気力が尽きてきて
それと同時に、彼が1日に来る回数も減っている。
こんなことしてなんになると思う?
いつもいつも、この3年間、逢えない日はこうやって
モニターの向こうに、彼の存在を感じてた。
日付、時間、回数、こんな記録を取って、なんになると思う?
ずっと、ずっと傍にいるよ
こんなふうにモニター越しに毎日話してたから。
数字の羅列が、私には、無機質じゃない。
彼がどんな気持ちで、ブックマークをクリックしてるのか
読んで、どれだけ腹を立てたか
読んで笑ってるところ、悲しそうな表情
そんな光景が浮かんでくる。
恋人同士が同じ場所で、日記を書いて
相手に直接言えないことを書くことで
お互いへの思いを深める場合もある。
羨ましかったよ。
顔を見て、どうしても言えないこと。
あとで浮かんだこと。
それをお互い確認できる。
だけど、私にはできなかった。
読まれているかもしれない。
まだ確信できなかった頃から書けなくなった。
まるで目の前にいて、言いたいことがちゃんと言えず
思ってもみないことを、口走ってるみたい。
読まないで、私の心を覗かないで
私の毎日を追わないで。
あなたが支えにしてるもの
貴方の拠りどころを壊してやろうか
する気が無いのはわかってた。
何度かそんなふうに言ってみて
私がどう反応するか知りたかっただけ。
突っぱねたけど、私はもうダメだった。
やれるものならやってみろ、そう言ったけどダメになった。
そんな残酷なことを言われて
だから、私は、消えたんだ。
だけど、彼は私を見つけるために毎日読んで
その形跡を、私は毎日追いかけている。
2004年06月29日(火)
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