2004年12月14日(火)
朝刊をパラパラめくっていると劇作家の平田オリザ氏の写真が目に止まった。 ある小学校で平田氏が講師的というか案内役的な役割をしながら子供たちに芝居の楽しさを教えるみたいな企画。NHKの番組に似たようなのがなかったか?まあいいや。
記事を読んでいて驚いたのは、平田オリザというのは本名だということ。オリザとはラテン語で稲という意味なんだそうだ。
平田氏がまずそのクラスでやったことは6人一組を作り大縄跳びをさせることなんだが、ただし縄はない。見えない縄を跳ぶという、準備運動に見せかけて実はいきなりの芝居である。 そこでの平田氏の言葉に深く共感したのは子供たちだけでなく新聞を読んでいた私もである。 氏曰く「縄はなくても、あるかのように役者たちが心をひとつにして演じれば、観客にも縄が見える。お芝居の基本です」
ああそうか。そうなんだ。ハタと思い当たった。 大がかりな舞台装置も凝った小道具も何もない舞台を見たことがある。 ただ役者が板の上で演じている舞台を見たことがある。感動した。使い古しの薄っぺらい言葉に聞こえるかも知れないが、感動した。 舞台の大きな可能性みたいなものも感じた。 あれだ、あの時の感動だ。あの時、私はお芝居の基本に触れたんだ。
そんな思いを胸に芝居を観に出かける。 この日記にも登場したことのある私のご贔屓劇団、ニットキャップシアター公演である。 久しぶりに、実に久しぶりに友人と待ち合わせをしてランチしてお芝居へというコース。 誰かとどこかに出かけるなんて、本当に久しぶりだった。 美味しいランチ、好きな劇団の芝居、観劇後のお茶、『演劇のこれから』に思いを馳せる友人。 何もかもが久しぶりのことで、バイト先と自宅の往復で疲弊していたココロに一服の清涼剤。
家に帰って夕刊をパラパラめくると小さな死亡記事が目に止まった。 松原みきの死亡を伝えていた。記事によれば亡くなったのは10月7日となっている。 44歳。3年前に子宮けいがんとなり闘病していたという。 松原みきをご存じですか? 1979年に『真夜中のドア』という歌でデビューした歌手です。
『松原みき BEST SELECTION Paradise Beach』というカセットテープ(!!)を持っている。よく聴いたのだ、このテープ。 44歳の若さで逝ってしまった松原みきを急に聴きたくなってテープを回すと、あり得ないくらいの音質で歌声が室内に流れる。 何度も何度も聴いたテープだ。しかも昔々のテープだ。音も悪くなっていて当然なんだが、それにしてもあり得ない!! そんなテープでもやっぱり聴いてしまった松原みき。 心よりご冥福をお祈りいたします。
昔、確かに触れたお芝居の基本。 昔、何度も何度も聴いた歌手の歌声。 などを思い出し振り返りした2004年12月14日でありました。
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