冷え込みの厳しい朝。きりりっとそれが心地よい。
夜明け前の満天の星空に誰を想えば良いのだろうか。
孫たちを保育園に送り届けて山里の職場に向かう。
昨日ほぼ済ませてあったのでずいぶんと楽な月末だった。
明日からはもう師走。今度は年末に向けて走り抜けなければいけない。
なんとかなると思ったり。なるようになると思ったり。
午後、少し早めに終わらせてもらって母を訪ねた。
ちょうど買い物から帰ったところでたくさんの食料品。
その荷物をアパートに運び入れて目を疑った。
なんとテーブルの上にもたくさんの食料品の山なのだ。
生物もそのままにしてあったので冷蔵庫を開けるとまたびっくり。
もう入りきらない程の食料品がぎっしりと詰め込んである。
怒ってはいけないと思いつつ声を荒げてしまった。
「こんなにたくさんどうするのだ」と。
案の定、母の怒鳴り声が返ってくる。やはり怒ってはいけないのだ。
おそらく毎日食料を買わないと不安なのだろう。
食べたいと思った物を片っ端から買い込んでいるのだと思う。
もう何も言うまい。好きなようにさせてあげようと逃げるように帰った。
帰りながら涙がこぼれる。それは無力感か、得体のしれない哀しみか。
老いて壊れていく母をどうすることもできない。
娘が帰宅が遅くなると言うので、保育園のお迎えにぎりぎり間に合う。
「おかあさんは?」と孫たち。でもおばあちゃんでも笑顔が嬉しい。
それは宝物みたいにとびっきりの笑顔だった。
母が遠ざかっていく。どんどん遠く離れていく夕暮れ時のこと。
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