ほんの少しの青空だったけれど気温が高くなり真夏日となる。
山里へと向う道。はっとしたのはもう稲の穂が見え始めていたこと。 田んぼの緑は目に沁みるように青々としていてとても清々しい風景だ。
仕事中に蝉の声を聴く。初蝉やどこからともなく夏の声。
わずか七日の命だという蝉の声はまだか弱くて少しせつなかった。
帰宅していつものようにお大師堂まで散歩する。 会うのはこれで何度目になるのだろう。 すっかり顔なじみになった長髪青年遍路さんと再会した。 前回会ったのは5月の始めで、少しお説教をしてしまったのを覚えている。 ウザイおばさんだなと思ったことだろうに、今日は私を待っていてくれた。
そうして目をキラキラさせながら旅の話をきかせてくれたのだった。 今回が9巡目。目標の10巡までもう少しになったと嬉しそう。 家を出てから一年と三ヶ月にもなったのだそうだ。 髪の毛もずいぶんと伸びた。それが彼の日々を物語っているのだと思う。
なんとしても目標を達成するのだと言う強い意志。 彼をここまで動かしてくれたものはいったい何だろうか。
長髪青年遍路さん。いまだ私は彼の本当の名を知らずにいる。 次に会えるのは9月だろうか。今度こそ最後のお遍路になることだろう。
ねえ、ボクは何て言う名前なの?最後にはきっと訊ねようと決めた。
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