ほろ酔ってまた陽が暮れて。三日月の少しふっくらとしたのを。 ぼんやりとながめてみたり。この脱力のこの溜息がほどよくて。
たたむようにしている。閉じるようにしている。その裏側でそっと。 息をひそめているものの正体を。いつか見たような気がしたのだが。
いまはただそっとしてあげたいなと思うのだった。
あいかわらずサチコを待っている。肉じゃがのほくほくしたのと。 豚肉の生姜焼きにキャベツをてんこ盛りして。胡瓜の浅漬けも作る。
上げ膳据え膳して。おおよしよしといっぱいしてあげたいと思うのが母心で。 目の下に隈が出来てるサチコが「ばあや、ちょいと肩をもんでおくれ」とか。 いつも言うのだけれど。「はいはい、お嬢様、どうれここらへんですかね」と。 凝りをほぐしてあげると。とても気持ち良さそうにして喜んでくれるのだった。
ばあやはいつだって幸せなのだ。家族ほど尊くありがたいものはないと思っている。
特に娘。サチコは私の太陽であり。その陽をいつも私に注いでくれるのだった。
「もう、いっつもお兄ちゃんばっか」って今までどれほど寂しい目にあわせたことか。 それほど私は息子にばかり執着していたらしい。男の子って不思議な存在だった。 子供のような男のような。今おもうとその複雑な感情など。まさに過去の出来事で。
熱が醒めてしまうと。現実ほどありがたいことはなく。 家族の群れから飛び立った。一羽の鳥のように思える。
立派に巣立ってくれたのだ。それが親の喜びでなくてなんだろうと思う。
どんな日も私のかたわらに寄り添うことを選び。蔭の日も陽になろうとして。 笑顔を絶やそうとしなかった娘に。感謝することも忘れていた日々があった。
ごめんねサチコ。ありがとねサチコ。
母さんね。こんな母さんだけど。サチコの太陽になりたいなあって。
すごくすごく思っているんだよ。
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