もはや猛暑。真っ青な空に入道雲。そんないつもの夏とは違い。 もわんとしていて。空は熱い膜に覆われているような。そんな夏だった。
午後になると。不思議な鳴き声が聞こえて来る。 鳥の声のようで虫の声のよう。か細いようで。絶え間なく。 「しゃあ しゃあ」と私には聞こえるのだか。 それがとても心地良く耳に響くのだ。空に幕が下ろされて。 とても美しい何かが。そこに佇んでいるようにも思う。
河鹿だろうとひとが言う。無知な私はそれが鳥だと思った。 どんな鳥なんだろうって。そしたらなんと。それは蛙の名だった。
明日も鳴いてくれるだろう。山里の風物詩は。蛙さんあなたですよ。
夜になり。南風ではなく西風が。昨夜の月のことを思い出しては。 とぼとぼと夕涼みに出掛ける。大橋の真ん中あたりに展望スペースがある。 そこから見下ろす大河のなんと雄大なことか。水に吸い込まれそうな感じ。 とくとくと流れているものを。見続けていると自分も流れてしまいそうだ。 ぽちゃんと落ちてしまいそうで。実は怖くてたまらなくなるのだった。
背中に風の心地良さ。月は薄雲に覆われて。なんだか秘密っぽい姿。 聞けないこともあれば。話せないこともありまして。 特にそれで悩むこともないのが現状。ただそこに月がある。そう思って。
今度は向かい風。家の灯りを目指して歩く。
あとはただ。自分に幕を下ろしては。ひたすら酒に酔ってそうろう。
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