RMの日記
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研究能力を認められて大学教員になる場合が多く、私もそうだ(と思う)。そして研究を始め、発見をし、この自然界のシステムを解き明かしていく。その成果は研究室内で、あるいは学会で語られていく。解き明かしたことをそのまま伝える。しかし、ある程度解き明かしができ始めた頃からそれだけではいけなくなってくる。求められる能力がある。語る力。解き明かしたことを研究にまったく触れていない人に理解してもらうのに必要な語る力。小学生、中学生、高校生にもわかってもらえるように伝える力。 相手の状況や理解レベルを把握して、平易な言葉のみで伝える。伝えるには惹き込まないといけない。魅力を感じさせないといけない。相手の興味に合わせて語らないといけない。そうやって魅力を伝えられた暁に、研究が世間から認められて、人が集まり、予算がつく。世間に認められるために研究をしているのではないけれど、世間に認められないと研究できないシステムになっているので、昨今の研究者には必須の能力。 正確に語る必要はあるけれど、細部にこだわることなく、エッセンスをいかに伝えるかに重点を置く話し方。完全に正確でないと話せない、という良心的な人は魅力的な語りはできない。研究者にはそういう良心的な人が多い。私もまだそういう部分から抜け出せていない。大胆に語らないといけない。伝えたいことを一つ二つのみ決めて、それを伝えることを重点に置いて、相手に合わせて語る。 子供の頃からあらゆるタイプの人と接してきたかとか、大人にもまれて育ってきたかとか、親にいろいろ物語を伝えてもらったかとか、親や友達とどんな類のものでもディスカッションしてきたか、とかそういうことが語る力を作っていく上で大事。過保護状態で幼少時を過ごし、反抗期には大人と話さなくなり、教員になってからは純粋に研究を楽しんでいたのでは、語る力はつかない。 今年から研究室では半独立状態で、私の語りのみでついてくる学生が何人かいる。今年から講義担当がある。真剣に語る力をつけないといけない。 今日、出前授業80回をこなしてきた先生と懇談してそんなことを思っていた。母校の出前授業にも行こう。
学会でいろんな人と交わり、多いに刺激を受け、アイデアのヒントになることももらった。今回の二国間会議では共同研究の芽を作ることが目的。一人の技術、能力だけで大きな研究をするには限界があることは皆が感じている。その上での共同研究。共同研究をしかけるにも依頼されるにもネタ、技術が要る。ネタを持ち、しかもコミュニケーション能力の高い人たちが共同研究を始めた傾向があるように思えた。自分自身はまだネタを提供するところまでいかず、もどかしいまま。人に気が遣えて、人の持っている技術を吸収する能力が有り、人の研究の利点をすばやく理解する能力が有り、自分の研究の重要性を訴える実力が有る人が共同研究を始める。現代の研究者に必要な能力の多くはコミュニケーション力。人のことを受け入れることができる力、人の思いを想像できる力。そういうものがないと務まらない現代の研究者。
どっぷり研究のことに浸かれる出張。研究者としてのおもしろさを堪能できる時間が流れている。業務に追われる日常でも工夫して研究のことに頭巡らせる時間を増やさなきゃ。って出張のたびに思うけど。 今回の出張では落ち込みもしている。周りの人たちの研究レベルが高い。どんどん新規遺伝子を見つけ、キャラクタライズしている。遺伝子にさえたどりつかない地味な研究を展開しているから、はやりの共同研究も展開できない。共同研究を頼まれることはあるけれど、こちらが主導となったものを提案できない。大きく発展していけない。もう10年も続けている研究だけど、なかなか遺伝子にたどり着かない。もどかしすぎる。いつまでこの研究をこのスタイルで続けていいんやろか。いつまで忍耐して難しいことにチャレンジしていっていいんやろか。
現在北欧に滞在中。とても素敵。一番素敵なのは、控えめな人が多いこと。国全体が裕福で余裕があるように感じる。ガツガツしていない。譲り合える。人の話を最後まで聞ける。日本人に似ている。とても心地いい人たちである。こんな国民性をもつ国があるとは知らなかった。声も大きくないし、講演の後は譲り合って質問しなかったり、質問しても攻撃的なものはなく、常に建設的。話する調子が穏やか。今回会った人だけの特性と思っていたけれど、他の人に聞くと、ここはみんなそんな感じなのだとか。日瑞の交流が密かに大事にされるのはそんな国民性に寄るのかな。ああ素敵。 この研究分野を国が力を入れて強化している。研究費は莫大ではないが十分な額。研究者のサラリーも良い。研究レベルは非常に高い。権利の主張をし合わないので、日瑞共同研究はうまくいく例が多いのだそう。ああ素敵。 食べ物がおいしい。味がある。まずいものがない。野菜が多い。高くない。日本人の口に合う。ああ素敵。 体が大きい人が多く、家具の大きさが合う。身長が185cmあるので、日本の既成の事務机なり、実験台は低くて、なんとも疲れる。こちらの椅子の高さ、机の高さ、トイレの便座の高さ、ベッドの長さ、すべて日本よりも楽に使える。北欧系飛行機(エコノミー)に乗ったが、席の間隔が他の会社より広く、楽に過ごせた。肩こりも少なくなるはず。ああ素敵。 日本からのダイレクト便が少なく、日本人観光客が少ない。ああ素敵。 大きな欠点は、冬にほとんど太陽がでないこと、寒いこと。国民の1/4は鬱になるらしい。いまは夜11時に寝ても朝4時に起きても明るく、得した気分。少し疲れてしまう気がするけど。この点を除けば、ほんとああ素敵。この国に留学したかった。
このところ出張が相次でいる。出張には、緊張の時間が必ずあり、疲れてしまうけど、いい点がある。一人になれる時間がとれること。普段大学では、実験室の学生と横並びの机に座り仕事する。メールは頻繁にあるし、電話もあるし、学生から実験の相談があるし、教授から依頼仕事がくる。1時間とて何にも邪魔されず何かに集中できることはない。家に帰れば、3歳Rと1歳Mがまとわりつく。 普段できる工夫は朝7時出勤。9時くらいまでの2時間は人がいないので集中できる。たまに論文にとりかかるけれど、日々のこまごましたやらなくてはいけないことを片付けるのに大概が費やされる。この2時間はすぐに経ってしまう。他の大学の先生方は夜中に一人の時間を作っている人が多いと思う。夜はイマイチ集中力が出ない。 論文を書くなど一人になって仕事したいときは、出張がとても都合がいい。先週の出張では、1日目はホテルチェックインまでかなり時間があったので、ファーストフード店へ。2時間がんばって飽きたので別の喫茶店へ。ここでも2時間。周りに人が結構いるけれど、一人になれるのである。店で仕事するときは、その店の雰囲気がとても重要。残念ながら今回の出張で入った店はイマイチ。はじめの店では元気な高校生集団が途切れなかったし、次の店ではJ-popがにぎやかに流れ、また座った奥まった席は喫煙席。 1周りの客が静かであること、2BGMが落ち着けるものであること、3店員さんがあまり来ないこと、4机が広いこと、5インターネット環境があること。これらが満たされれば最高。今回の出張で入った店は特に1〜2が満たされなかったが、普通のお店でこの点が満たされるところは少ない。家の近所に1〜4までが満たされる店がある。土曜日の午後にキャラメルカフェラテと共に数時間こもることがある。誰にも会わない感じの奥まった席があることと、店員さんが上品なことがポイントが高い。 現在別の出張中。行きの10時間のフライトはとても良かった。いつもは映画を楽しみにするのだが、格安チケットのせいか、個人用モニターがなく、小さな共通モニターで流れる映画は陳腐。隣の北欧系のカップルはずっとイチャイチャしており、このことも集中させる要因に。隣が日本人だったらしゃべったり気を遣ったりあるし。このパソコンはバッテリーが充電なしで5時間もつことも大きく、論文が書けた。一通り書き終えた。でもまだ足りないところがあり。
人が一日で変わることはあり得ないのだけど、急に変わったように見えるときがある。学生が急に力をつけて、研究の議論についてこれるようになるときがある。何かポジティブな結果が得られて自信が出てきたとか、研究に興味がわくようになったとか、そういうきっかけでそうなることがある。ここのところのUくんがそうである。議論できるのである。小所帯の研究グループにとっては大きなことである。一つ悩んでいたデータの解釈がUくんから提案されて何とももっともらしいのである。驚いたし、うれしかったし。あいかわらず勉強はそんなにしていないけれど、研究のことをここのところ熟慮している節があることがうかがえる。急に変わったようにみえたが、そう、やはりここのところ彼なりにいろいろ考えている。家でも考えていることがうかがえる。そうなんよ、実験室を離れてるときも常に考えていることが、いい実験計画を作れたり、いい実験結果に出会えることにつながるんよ。何がいい方向にさせたか。実験結果が最近出てきていることが大きいのかな。実験に慣れてきて、余裕が出てきたのが大きいのか。彼に身近な一つ二つ上の先輩のがんばり方を伝えた(がんばり方に気づいた)のがよかったのか。このまま実力つけていってほしい。
書類書きの驚異的なスピードが欲しい。一気に9割方書き上げてしまう初期段階のスピード、仕上げるスピード。明日は来週、再来週の学会のポスター、パワーポイントを仕上げる。投稿論文の図、レジェンドを完成させる。企画展その1のストーリーを書き上げる。その間に電気工事、廃棄物品リストアップ、アルコール使用明細書。6月から実験できるように、計画通りにスピードを上げて書類書き。
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