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閻魔刀か、と呟いた髭男。ネロはクレドの隣で一応大人しく彼を見据えていた。 写真は男の・・・ダンテと言った男の手から机に放たれ、クレドの前に戻ってきた。 偉そうに足を組んで、ダンテはソファの背もたれに体重をかける。こんな男に、なにが出来るのかと。ネロはクレドの意思がわからないでいた。 「・・どこにある?」 「フォルトゥナから北へ向かった氷河山の中に見つけました」 クレドが地図を広げた。 城塞都市フォルトゥナを中心にして、海に囲まれた中での、広大な島。小さな離島が周りに点在していた。 中心の市街地から北東の位置に今いる本部。その東、市街地から北にあるミティスの森。その更に東、市街地から北東にダゴンの塔とバエルの塔がり、その北に氷河山があった。それは小さな離島だが、全てが氷に覆われ、無人島だとクレドは説明した。 この場合、本部からミティス、塔、それから氷河山に行けばいいように見えるが、塔と氷河山の間には海が広がり、橋もない。氷河山に行くには、ミティスの森の北、炎岩に行き、そこから通じる橋でしか行けない。 「・・・数日かかりますが、準備はこちらがします。それぞれ支部がありますので、なにかあればそちらに寄っていただければ支援いたします。通達はしておきますから・・・」 「その辺は問題ない。特に支援もいらないが・・・一つ聞こう」 「なにか?」 地図をネロに渡しつつ、クレドが顔を上げる。ネロは無言のまま地図を綺麗に畳みながら、二人の会話を聞いていた。 「地図を見るに・・・氷河山は人が行くような場所じゃあないな?───なぜここで見つけた?」 「・・・氷河山にはスパーダが暮らしていた屋敷があるのです。我々は定期的にそこを訪れ、清め、守ってきました。それが突然、氷が張り付き始め・・・氷河山支部の者が閻魔刀を見つけました。教皇様によると、閻魔刀はスパーダが持っていた刀とわかり、その後もう一度氷河山に行こうとしたのですが、氷に覆われ尽くし、悪魔も出始めたのです」 「で、アンタ方は俺になにを望むんだ。閻魔刀を手に入れるか・・・悪魔狩りか」 す、とダンテの瞳がクレドを射抜いた。 青く澄んだ瞳。けれど、その奥には、悪魔の鋭さが垣間見えた。ゾクリと悪寒が走ったのは、勘違いではない。 ごくりと生唾を飲み込んだクレドは無意識に恐怖を感じていた。 なにも悪いことをしていないのに、親に叱られる。でも違うと言えない、圧迫。 「・・・いいだろう。引き受ける」 ダンテが瞬きすると、その瞳は何事もなかったかのようにクレドを映していた。ほ、と息を吐いたクレドは暴れる心臓を押さえ、全身に感じた疲労を押し隠す。 「あ、ありがとうございます・・・出発は・・・」 「今日は祭りをやっているんただろう?出発は明日だ」 暗に"祭りに行く"というのがわかって、クレドは軽く頷いた。 「わかりました。よろしくお願いします。・・・道案内を兼ねてこのネロが同伴します」 「はあ!?なんで俺が・・・っ」 「ネロ!慎め」 「・・・っ」 胸倉を掴むほどの勢いでネロが立ち上がる。クレドに抗議しようとしたが、彼の一言に大人しく座った。 が、納得はしていないらしい。 「お嬢ちゃんの言う通りだ。俺は一人で行く」 「ですが・・・っ」 「・・・それとも、教団の人間を同行させる理由があるのか?」 「い、いえ。地図では簡単に見えますが、実際には複雑なので・・・慣れなていないと・・・」 「俺が普通の人間じゃないことは知ってるな」 「・・・はい」 「なら同行はいらない。OK?」 「わ、かり・・・ました・・・」 膝の上でクレドが強く拳を握る。女だから、と馬鹿にされた気分になったネロだったがクレドに叱られるのもイヤなのでダンテを睨むだけに抑えていく。鼻で笑われて、銃を抜く寸前だったのは、クレドにはばれていなかった。
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