鮭肉色のカーニヴァル
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ミュンヘン、ミュンヘン!
2005年07月28日(木) 

 貴婦人なら紅茶が飲みたいわと思うような時間に起きてそのまま味の素スタジアムにいきバイエルン・ミュンヘン対FC東京を観戦。自由席アウエーにはドイツ人の熱狂的バイエルンサポーターが二十名ほどいらっしゃって信じられないような団結と声量を轟かせていた。それがあんまり衝撃だからついつい彼らの隣に席を移して本場の熱気を頬に感じつつ試合を楽しむことができた。

 先日のクラスの飲みで同じ被害(いわゆる散財)にあった友達とまた飲み会をしようよということになって渋谷のパブで企画を練る。二年前のクラス旅行は伊東に行った(チェックアウトの時間になっても二名泥酔していてブラックリストに載った)。去年はキャンプ場に行った(台風が来てテントごと飛ばされそうになった)。今年はさすがに就職活動などでみんなが集まらないだろうということで考えたのがホテル合宿。都内のこ綺麗なホテルのリッチな部屋を借りて、みんなで酒を持ち込んで飲むというもの。ネックは何か壊したときの請求額が天文学的な数字になりそうなこと。んー、それって致命傷じゃん。

 肩の荷が下りた人たちの集まりはいつだって陽気だ。春じゃなくても、晴れじゃなくても。




浮世離れ
2005年07月27日(水) 

 最近読んでいる本は、と聞けば、アリストテレス、と答え、このまえ酔って目を覚ましたら、新宿駅だったよ、と言えば、詩的だね、と返す、そんな、そんな人たちに、なにか愛しいものを感じたよ、やさしい気持ちですごせそうだね。




考古学に似た行い
2005年07月26日(火) 

 ウラジミール・ナボコフは中毒性の作家だ。あらゆる場面になんらかの仕掛けが施してあって、流し読みをすればいっきに飛ばしてしまい印象に残らないのだけど、丁寧に読んで幸運にもその緻密な隠し絵に気がつくと忘れがたい興奮に包まれるという希有な、ナボコフでしか味わえない深みにはまると他の作家は作家に思えなくなる。これほど考古学にちかい読書はないのではないだろうか。地層をこつこつと叩き、なにかの化石を細かく掘り出していく狂気のような作業。そして精密さだけが優れているのではないのが恐ろしいところで、作品を支配する大胆な構図にも感動があるのだ。まだ今の段階ではぼくにはナボコフのナの字も読めていないことが素直な実感としてあるのに、素敵なことに絶望ではなく将来にとっておく幸せな料理みたいに思える。
 と、このくらい熱っぽい説明をくわえないと三百五十円で四時間もファミレスに居座ったことの正当化ができないわけで。それにしても『ディフェンス』はおもしろかった。




重なり合う水のイメージ
2005年07月25日(月) 

 最後のさいごでどしゃ降りになってつま先まで濡れて帰ることになる東京ヴェルディ1969がレアル・マドリードを3-0で下した歴史的試合を味の素スタジアムにて観戦したあとでモントリオールのレーンを泳ぐ競泳者たちを髪をふきながら自宅で見ているとなんだみんな濡れてんじゃんと思え、さらにそのときに聞いたMr.Childrenの新曲もポカリスエットのCMに使われていたことに依拠するイメージ喚起の渦によってずぶ濡れに濡れている印象すらあって世界に雨が平等に降ったことを確信した。




ぴょんぴょん
2005年07月24日(日) 

 答えが出ているのなら、跳べ。
 よめよめ読め、かけかけ書け、跳べ。




ないことの心地よさ
2005年07月23日(土) 

 朝起きると新宿駅だった。実際には新宿だとわかるまでに数分要するわけだが。荷物はなにひとつ持っていない。怪我はしていない。靴は履いていない。財布はあるが千円を残してお札が消失している。ケータイには着信が一件。昨日の夜、一緒に飲んでいた友達からだ。それにしても、ふらつく身体は思考する、バックはどこへ消えてしまったのだろう。買ったばかりのハードカバーと読みかけの文庫本が入っていたのに。
 なにもなかった、なにもない、なにもないだろう。
 不思議と絶望ではなく希望を感じた。
 次に目を覚ますのは自宅のベッドの上だ。靴下で道を歩くのは痛かったことを思いだす。失われた記憶を取り戻そうとしても何も出てこない。もういちど目を閉じて取調室に入っていく。
 取調官が聞く、さいごに憶えているのはいつだ?――本郷の居酒屋です。店員がラストコールだと言いました。
 どうしてそんなに飲んだ?――わかりません。
 取調官の表情はすこし優しくなって、何か食べるかと聞く。それよりも飲み物が欲しいと答える。近くのコンビニにいってレモン水と和風パスタを買ってくる。レモン水は帰る途中に飲みきってしまった。
 ぬるいシャワーを浴びながら、あるのは現在だけだと考える。言葉の意味がそうなのだから同語反復にすぎないけれど。隣の部屋では掃除機をかけているようだ。




職業ガイド
2005年07月21日(木) 

 希望を与える仕事がしたい!

 スポーツ選手よりも毛髪活性剤の製造会社がおすすめです。レジにもって行くあいだだけでも夢を見させてあげることができます。

 いろんな国を旅行したい!

 旅行代理店やフライトアテンダントは確かにいろんな国へ行きますが、自由な時間はあまりありません。どうせなら国会議員になってみてはいかがでしょうか。




2005年07月20日(水) 

 公園のベンチで本を読んでいたら鳩がいちゃついていた。片方が首の周りをつっついて、そのあとくちばしを互いにくわえて握手のような動作をシンクロさせていた。

 ポール・オースターの翻訳書も底が尽きたので明日からはペーパーバックに突入かしらんと思うけれど(誰だいったいこんな暑い部屋に閉じ込めたのは)これまでの経験から原書を買うのはデンジャラスだといえるし、どうしよう、なんて考えているうちに(蒸し蒸しするぜ)日が暮れてしまった。




いちばん美しい音は休符
2005年07月19日(火) 

 半年以上そのままにしてきた洗濯場の水漏れをついに修理してもらった。というのも近くのコインランドリーがクレーン車に破壊されていたから。蛇口ひとつを取りかえるのに一万五千円もかかった。昼は怒濤の洗濯合戦。これでもかこれでもかと洗って干した。洗濯機も復活したし、あとは来週に無印良品の通販で買ったアイロンが届くのを待てばシャツが着れるようになるわけだ。

 脂っこい食事をしたあとに飲む水がなによりも旨いように、長い音楽が終わったあとに訪れる静寂がいちばん美しい。




むしゃむしゃ読む
2005年07月18日(月) 

 サイゼリヤでキャベツが半分くらい煮込んである料理を食べながら、ヴィ・ド・フランスで失敗作のようなブルーベリー・ティーを飲みながら、ジョナサンでドリンク・バーに通いながら、ポール・オースターを読む石のようにじっと読む。休憩や移動を抜いても計七時間半。『リヴァイアサン』を読了、『鍵のかかった部屋』と『空腹の技法』を齧りはじめる。

 そういえば『リヴァイアサン』と『鍵のかかった部屋』のどちらにも「はじめてキスをするときのように情熱的にキスをする」シーンがでてくるのだけど、ぼくの場合、はじめてキスをしたとき気持ち悪くてすぐやめてしまった(もちろん失礼を欠かない程度に)。




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