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2025年01月07日(火) 彼女のバッグを持つ男性

一月三日は夜勤の明け。帰りに寄った百貨店は初売りセール目当ての客で大にぎわいだった。福袋を買っている人もたくさんいて、こちらまで気分が上がる。
さて、財布を新調しようかなあと売場を見ていたら、隣にいた若い男性がピンク色のハンドバッグを手に提げているのに気づいた。
彼の持ち物ではなく恋人のバッグを持ってあげているのだということはわかっている。それでも、ガタイのいい男性に可愛らしい小ぶりのバッグはかなり違和感があった。
初詣の参拝のときに前に並んでいた男性も真っ赤なショルダーバッグを肩にかけていた。ハートが連なったチェーンストラップにダウンを着た腕を通していて、とても窮屈そうであった。

職場でこの話をしたところ、
「私も前から疑問だった。どういう理由で彼女のカバンを持ってるんだろう」
「レディファーストのつもりでしょ」
「『ジェントルなオレ、お姫様なワタシ』っていう自己陶酔型のカップルだね」
「『オレの彼女』アピールなんじゃない」
「でも男がオンナもののカバン持ってたら、ふつーに変だよ」
「お付きの人みたい」
と辛口の意見が続々。どうやらこの中には「バッグは持ってもらいたい」派はいないらしい。
そうだろうなあ。これだけ自立心が強くバリバリ働いている彼女たちが「バッグ、持つよ」と言われてウットリするとはちょっと思えない。きょとんとして、「え、なんで?」と返しそうだ。
私も同じで、荷物や買い物袋を「持つよ」はうれしいが、ひとつしかないバッグを人に持たせて自分が手ぶらになろうとは思わない。
それに、自分で持たないことによる不都合もあるだろう。買い物やトイレのたびにいちいち返してもらわなくてはならないし、服に合わせてバッグを選んでいるからせっかくのコーディネートが崩れてしまう。

バッグは重くもなんともないのに、どうして「持ってあげよう」となるのか。きっと彼は恋人のことが可愛くてしかたがないのだ。
以前一緒に香港を旅行したメンバーの中にカップルが一組いたのだが、その男性が実に甲斐甲斐しく彼女の世話を焼く。お世辞にもきれいとは言えない粥麺店の前で「でもこういう店がおいしいんだよねー」とみなが入る気満々の中、「ここでええか?食べられるものありそうか?」と彼女に確認する。店のドアを開けてやり、テーブルに着けば彼女の前をウェットティッシュで拭く。道路は手を引いて渡り、羽虫が飛んでいたら彼女の目元を手で覆う。缶ジュースもプルトップを開けて渡すくらいだから、バッグなんか持たせるわけがない。
「彼女はガラスでできてんのか?」
と思うくらい大事に大事にしていて、“尽くす喜び”ってやつなのかなあと不思議な気持ちで眺めたっけ。
ここまでではなくても、それを自分の役目だと思っているかのように恋人のバッグを持つ男性も「なんでもしてあげたい」気質なんじゃないだろうか。

私ももちろん大切にされたいと思うけれど、守られたいではない。子どものように扱われたいとも思わない。
だから彼女のバッグを持っている男性を見て、「優しい人ね」「まあ、男らしい」と評価がアップすることはない。ただ、「過保護だな」と思うだけだ。

こんな私は「バッグ、持つよ」と言われたことがない。やっぱガラス製じゃないからかしらん。
それに愛を感じる女性には持ちたがる男性が、バッグを人に持ってもらう意味がわからないという女性には同じ感覚の男性が自然とセットになるのかもしれない。

【あとがき】
遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。二〇二五年ものんびり書いていきますので、よろしくお願いします。