Jacarandaの日記
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2005年05月25日(水) 尼崎脱線事故発生から今日で一ヶ月



2005年4月25日午前9時18分発生の脱線事故現場
写真提供 : Yomiuri News


死者107人、負傷者549人に上った兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故は、5月25日の今日、発生から1カ月たった。
各地で、追悼式が行われ、痛ましい事故が再び起こらないことを願いつつ、犠牲者の冥福を祈った。
この事故で、負傷者は549人に上り、うち139人が以前として入院中で、6人が重体であることが23日、兵庫県警尼崎東署捜査本部の調べ(5月19日現在)で分かった。

そこで、今日は、ここにこれまでの事故関連の新聞記事を抜粋して、事故を振り返ってみたいと思う。





尼崎脱線車両
非常ブレーキ4回
事故調解析「 運転士、負い目に 」


 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、事故を起こした快速列車は、計4回も非常ブレーキが作動していたことが24日、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会の調べで分かった。
1回の運行では異常な回数で、高見隆二郎運転士(23)=死亡=が、オーバーランなど運行ミスが重なった焦りから、高速で「回復運転」をした結果、事故につながったとみられる。
25日で、事故から1ヶ月。 事故調は他の運転士らから事情を聴くなどして、当時の運転状況や心理状態の解明を進めている。
 非常ブレーキは、始発の宝塚駅で2回、途中の伊丹駅で1回、さらに事故現場付近で1回作動していた。 運行状況を記録していたモニター制御装置やATS( 自動列車停止装置 )記録装置のデータを解析して判明した。
 事故調によると、同列車は4月25日朝、始発の宝塚駅の折り返しホームに入線。 この際、ホーム周辺で連続して非常ブレーキがかかっていた。 駅構内の信号が「赤」だったのに、ATSの地上子(発信機)上をブレーキをかけずに走行し、ホームをオーバーランしかけるなどしたため、自動的に非常ブレーキがかかったとみられる。
 会見した事故調の山口浩一委員は、「宝塚を定時で出発しているが、ATSの非常ブレーキで止まるのは運転士にとって不名誉なことで、運転指令所にも連絡していなかった。 それが負い目になり、通常の運転ではなかった可能性がある」と分析している。

毎日新聞 2005年5月25日 東京朝刊


宝塚〜北新地間、「1分の競争」の果て−−快速、最速「29分」

 JR福知山線で脱線事故を起こした快速電車が、朝の通勤・通学時間帯に宝塚(兵庫県宝塚市)−北新地(大阪市北区)間を最短の29分で結び、競合する阪急宝塚線の宝塚−梅田間の最短時間を1分上回っていたことが分かった。JR西日本は、宝塚駅付近に「朝通勤時間帯29分」のPR看板を掲げており、運行にゆとりを持たせる「余裕時分」をゼロに設定した背景には、ライバルの私鉄に対する秒刻みの競争意識があったことも浮き彫りになった。
 関係者によると、分割民営化後のJR西日本のスピードアップなどの影響で、阪急宝塚線の乗客が減少。このため阪急は00年6月、最高速度100キロの特急を導入し、宝塚−梅田間で初めて30分を切る29分を達成した。しかし通過駅が多く不便との声が上がり、03年8月、29分の特急を廃止。停車駅を増やした快速急行を新設し、所要時間を30分にした。
 これに対し、JR西日本は03年12月、快速急行が停車しない阪急の中山駅に近い中山寺駅に快速を停車させた上、全快速の約3割で宝塚−尼崎間の余裕時分をゼロに削るなどして、時刻表上の所要時間を増やさなかった。このうち午前9時3分宝塚発の快速は、同32分北新地着、と所要時間は29分に。 

毎日新聞 2005年5月24日 大阪朝刊


 スロータイムは「心の余裕時間」

 東京や大阪では、電車かタクシーに乗らないと仕事にならない。当然、ぼくの足は車内で静止したままだから、すべては運転手さんにお任せということになる。遅れたら小腹が立つし、遅れなくても足時計が使えず、少々いら立ってくる。我ながら勝手なものだ。
 ところで、JR西日本の尼崎脱線事故の背景には、過密ダイヤとスピード化が会社側の要因として指摘されている。
 安全対策を怠ったJR西日本に弁解の余地はあるまいが、わが身を省みるに、電車はレールの上を頻繁に、速く、正確に走ってほしいと望んでいた。技術立国・日本の電車なら当たり前だと思っていた。ぼくは、そんな乗客だった。これまた勝手なものである。
 ぼくは内省した。そしていま、自分にこう言い聞かせている。
 スロータイムでいこうぜ。電車やタクシーに限らず交通機関は遅れることが間々あるものだ、そう思って、早めに家を出ようじゃないか。(編集局)

毎日新聞 2005年5月21日 大阪朝刊


デスクです
 尼崎脱線事故の後、JR西日本をめぐるニュースを見ない日はありません。オーバーランや誤った線路進入なども相次ぎ、「どうなってるの」と言いたいところです。それでも「何両目が安全?」とか考えながら、毎日JRで通勤しています。
 10年前、阪神大震災で関西の鉄道は甚大な被害を受けました。しかし、各社が一丸となって復旧に取り組む姿を間近で取材し、「不屈の鉄道魂」を実感したものです。JRは果たして本当に利用者本位の鉄道に再生できるのか。ずっと見つめています。

毎日新聞 2005年5月20日 大阪朝刊


JR西社員への嫌がらせ220件 ホームに警備員、安全運行守る
 尼崎脱線事故の後、JR西日本社員への嫌がらせや暴力行為が相次いでいる。同社は「列車の安全な運行に支障が出かねない」として、主要駅のホームに計約30人の警備員を配置、運転士や車掌の安全確保に乗り出した。
 警備員は大阪や天王寺、京都など運転士らが乗務を交代する主要駅に配置。午前9時〜午後10時まで、ホームで乗務員に付き添うように見守っている。
 同社によると、報告があった暴言や嫌がらせなどは計約220件(11日現在)。このうち7割を超える約160件が京阪神で起き、女性運転士がけられたり、乗務員室に強引に入って来て車掌を小突くなどの暴力行為も目立っている。運転士らからは不安を訴える声が上がっており、警備員の配置は当分の間続けるという。

毎日新聞 2005年5月20日 大阪朝刊


高速時、加速力弱く 減速操作、遅らせる?−−事故調調べ
 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、事故を起こした「207系」車両は、時速110キロ以上の高速運転時に加速力が急激に落ちることが、国土交通省・鉄道事故調査委員会の調査で分かった。事故現場直前までの直線区間(制限速度120キロ)でいったん減速すると、速度を回復しにくい性能だった。この快速電車は運行時間の「余裕時分」がゼロ設定だったため、事故調は高見隆二郎運転士(23)=死亡=が遅れを取り戻そうと、現場カーブ手前ぎりぎりまで減速操作を遅らせたとみて、モニター制御装置の解析を急いでいる。
 事故調によると、207系は高速域での加速力が弱く、主に各駅停車の普通電車として使用され、高速走行する快速電車には向いていないという。平たんな場所では120キロ以上の速度は出せず、下りこう配でも130キロは出ないとされる。
 伊丹駅から現場手前の塚口駅までは1キロで約5メートル下がるこう配で、その後は現場まで平たん。県警尼崎東署捜査本部の調べでは、複数の運転士がカーブ手前の直線区間について「制限速度を超えて走ったことがある」と証言している。
 事故調が同区間を走る運転士らから事情を聴いたところ、伊丹駅出発後は通常、下りこう配を利用して時速約118キロまで加速。塚口駅のホームは上下線で一つのため、軌道はホームを避けるようポイントが前後に設置されており、時速105キロ前後まで減速して通過することになっている。
 また、脱線した快速が塚口駅を通過した際、「腰から振られるほど揺れた」という乗客の証言があることも判明。高見運転士は伊丹駅を約1分30秒遅れで出発しており、事故調は、遅れ回復に焦る高見運転士が、減速後の加速力不足を恐れてアクセルを開放し続けた可能性もあるとみている

毎日新聞 2005年5月19日 大阪夕刊


追跡:
尼崎脱線事故 危険、私も感じてた−−ベテラン運転士「進言していれば」

 ◇彼は焦りブレーキ遅らせたのだろう−−オーバーランのうそ、ばれたと思ったのか

 速度超過が主原因とされる兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故。事故現場のある宝塚−尼崎間で1000回以上も快速電車を運転したベテラン現役運転士に、普段の運転と比較しながら、死亡した高見隆二郎運転士(23)の運転状況や心理を推理してもらった。浮かび上がったのは、高速化を追い求めた会社の体質にのみ込まれた若い運転士の姿だった−−。(< >はベテラン運転士の発言)

 ●伊丹駅到着

 4月25日9時15分ごろ。約30秒遅れで伊丹駅に到着。さらに、高見運転士は60メートルのオーバーランをしたとされる。
 <停車駅だと認識していたら、どんなに行き過ぎても10メートル。通過駅と勘違いしたのか>
 同駅を16分20秒に出発。高見運転士は「なかったことにしてくれ」と車掌に求め、結局、「8メートルのオーバーラン、1分半の遅れ」と運転指令に報告された。
 <だが8メートルの修正なら通常1分もかからない。勘のいい指令ならおかしいと気づく。虚偽報告がばれたら、理不尽な日勤教育、乗務停止が待っている。遅れを取り戻さねばならないとの強迫観念にとらわれたのだろう。
 国鉄時代の隠語『丸にする(現場でミスをもみ消す)』に象徴される体質は今も残る。これが、すべての始まりだった>

 ●塚口駅通過

 通常運転ならブレーキなしで塚口駅を制限速度の110キロで通過。だが、高見運転士は制限速度を上回って通過したとされる。
 <通常ならアクセルを解除し、惰性運転している場所だが、彼はアクセルを入れたまま加速していたのかもしれない。伊丹−尼崎間では、制限速度ぎりぎりで走ってもせいぜい20秒の回復が限界なのに>

 ●信号機

 事故現場から約400メートル手前にある信号機が、ブレーキをかける目安。03年12月のダイヤ改正で、快速が中山寺駅に停車する一方、運転にゆとりを持たせる「余裕時分」が削られ、所要時間はほとんど変わらず。120キロまで出すことが常態化し、早めにブレーキをかけなければならなくなった。高見運転士に指令から無線で呼び出しがかかったが、応答しなかった。
 <虚偽報告がばれたと思い、頭が真っ白になったかもしれない。しかしここで少しでもブレーキが遅れると、制限速度を超えてカーブに突入してしまう>

 ●そしてカーブ

 カーブ「R300」(半径300メートル)は、120キロ制限の直線がいきなり70キロ制限になる構造。高見運転士はカーブに100キロ超で進入、脱線したとされる。
 <彼はブレーキをぎりぎりまで遅らせ、遅れを取り戻そうとしたのだろう。ダイヤ改正で速度を上げざるを得ない状況になり、私もうすうす危ないと感じていた。だが、私は会社に進言しなかった。私も会社に飼い慣らされていた1人だった……>

 ベテラン運転士の目に涙が浮かんだ。

毎日新聞 2005年5月19日 大阪朝刊


カーブで急ブレーキ、「せり上がり脱線」か ◇車輪内側に大きな摩擦

 兵庫県尼崎市のJR福知山線塚口−尼崎間で、快速電車が脱線、線路脇のマンションに衝突した事故は、兵庫県警の調べで27日午後1時現在、死者91人(男性50人、女性41人)が確認された。うち8人の身元が不明。負傷者は456人。先頭車両と2両目のすき間付近には、少なくとも十数人の乗客が生体反応がないまま取り残され、救助活動は難航。また、尼崎市消防局の救助隊員が同日午前、先頭車両に入り、10人前後が閉じ込められているのを確認した。
 県警などは、マンションの壁にへばりつくように折れ曲がった2両目から遺体を相次いで収容、車両の撤去作業をほぼ終えた。1階駐車場に突っ込むかたちで横転している先頭車両についても救出活動が終わり次第、撤去作業に入る。
 一方、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会は「脱線直前にかなりのスピードが出ていた」との認識で、レールなどの傷痕や車両の損傷状況を調べている。4、5両目に設置されていたモニター制御装置の分析も継続する。制御装置には、車両機器の故障記録やブレーキをかけた時間、ATS(自動列車停止装置)の信号を受けた時間などのデータが残っており、事故が起きるまでの電車の動きを詳しく調べる。
 尼崎−宝塚間は27日も始発から運転を見合わせ、阪急電鉄などが振り替え代行輸送を行っている。事故発生から26日までの2日間で、計665本が運休、約26万3000人が影響を受けた。
 兵庫県尼崎市のJR福知山線の脱線事故で、電車がカーブに制限速度を約30キロも上回る速度で進入し、その直後に急ブレーキをかけたため車輪がせり上がって脱線した可能性が出てきた。遠心力が加わり車輪内側の突起「フランジ」とレールが激しく接触して摩擦が生まれるためで、「せり上がり脱線」と呼ばれている。国土交通省航空・鉄道事故調査委員会のメンバーは複数の要因があった可能性を示唆しており、県警は脱線直前の運転動作についても慎重に調べを進めている。
 フランジは脱線防止のため、左右の車輪の内側に設けられている。専門家によるとカーブ区間でブレーキを作動すると遠心力のかかる外側の車輪のフランジとレールの側面との間で急激に摩擦が生じ、車輪がレールからせり上がることがある。
 今回の事故では、複数の乗客が「カーブ付近でブレーキがかかり大きく揺れた」などと証言。現場は右カーブで制限速度は70キロだが、5両目の列車に設置されたモニター制御装置の分析でカーブに入った時点で時速100キロ前後だったことが既に判明している。その数秒後に急ブレーキがかかっており、カーブで猛スピードのまま急ブレーキをかけたため車輪がせり上がり、カーブ外側への遠心力で列車ごと脱線した可能性があるという。
 カーブで非常ブレーキをかけると、車輪がロックされ、脱線する可能性があることがわかった。JR西日本が27日の会見で明らかにした。今回の事故との関連を調べている。
 車輪がレールからせり上がって脱線したケースでは、乗客5人が死亡、64人が重軽傷を負った00年3月の営団地下鉄(現・東京メトロ)・日比谷線脱線事故がある。

 ◇秒単位遅延調査、JR西が認める

 脱線事故が起きたJR西日本の三浦英夫運輸部長は27日の記者会見で、1秒単位で電車の遅延状況を把握する調査を実施していたことを認め、「列車の遅れはお客様に最も迷惑であり、信頼を裏切るもの。定時運行が求められる」と説明した。
 会見によると、「定時運転確保ウイーク」の一環として02年10月から開始。実施時期は、学校の1、2、3学期の開始日から1週間、ゴールデンウイーク明けの1週間、12月1日からの2週間の年5回。通勤通学に慣れない乗客が多く、定時運転率が低くなる傾向がある時期といい、今年は今月8〜14日に行った。
 対象の電車は、福知山、阪和、山陰、奈良線の快速、普通電車計9本で、特に込み合う朝の通勤・通学時間帯。うち脱線事故のあった福知山線は4本が対象で、内訳は▽新三田−大阪2本▽新三田−四条畷1本▽福知山−大阪1本。
 同ウイークでは、秒単位の遅延報告を乗務員に求めるとともに、車内や駅でスムーズな乗り降りを乗客に要望する放送を行っている。

 ◇1000人態勢で捜索

 兵庫県警が乗客の救出、捜索などのために設置した重大事案対策本部は27日、大阪、京都両府警からの応援も合わせて、警察官約1000人態勢で事故現場での捜索を続けていることを明らかにした。

毎日新聞 2005年4月27日 大阪夕刊


以上、時系列に新聞記事を見ていくうち、事故の原因が、スピード社会がもたらした悲惨な結果という気がしてならない。
JR西を始めとして、多くの人命を預かる公共交通の従事する機関の一層の安全管理の徹底を望む。
二度とこんな事故が起こらないことを切に願って・・・

事故の犠牲者のご冥福をお祈りいたします。

合掌


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