びーだま |
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2005年11月09日(水) | |
もう何年前だろう。 そうだ、もう3年。今年で4年目になる。 彼が私の前から消えて丸3年だ。 これは失恋なのだろうか。 ずっと考え続けてきたことである。 私が他人に興味を示さないのは、恋をしないのは 彼をまだ想い続けているからだろうか。 でも、もう彼はいない。 私が彼の〝死〟と向き合わずにきた時間は これからも延びていくのだろうか。 もう人を好きにならないと決めた。 これ以上の痛みはもう、いらないと思った。 他の誰も愛さないと思った。 〝僕には、僕の満ち足りた人生には、あのひとが必要だったわけで……その空白を埋めることは、ほかのなにものにも、ボーナスで買ったお気に入りのブーツにも、出来ない。〟 〝あのひとはきっと胸を痛めるだろう。嘔吐するかも知れない。困ることは確かだ。〟 気付いたら泣いていた。 自分の心を覗き見されたような気になる。 きっとあの人も同じように困っている。 私が人を好きにならないこと、自分のことを想い続けている私を きっと悲しんでいる。 私は〝僕〟と違って彼に沢山の手紙、指輪、真っ白なコートをもらった。 どれも封印してあるけれど、捨てられない大切な宝物だ。 この〝僕〟と同じように「ちゃんとした失恋」をそろそろしないと いけないなあ、なんて苦笑い。 失い方は違えど、あまりにもシンクロしすぎて 胸が痛い小説でした。 私が菅原さんの作品を好きだなと思う瞬間は、ふいに使われるやわらかいひらがなと、その瞬間の空気です。世界をこわさない優しい世界だと思うのです。「かなしみはオレンジの匂い」で言うところの「人生はほんのりとかなしみに満ちている」感じなのです。 亡霊にすがりついて生きている自分にはとてもやさしい小説でした。 |
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