小ネタ日記ex

※小ネタとか日記とか何やら適当に書いたり書かなかったりしているメモ帳みたいなもの。
※気が向いた時に書き込まれますが、根本的に校正とか読み直しとかをしないので、誤字脱字、日本語としておかしい箇所などは軽く見なかった振りをしてやって下さい。

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オリオンをなぞる(笛/渋沢と三上)。
2011年08月16日(火)

 見逃して欲しい、と彼は言った。









「頼む」

 窓枠に足を掛けた渋沢は、短い言葉を三上に向かって言った。
 草木も眠る丑三つ時。ここはいつもの二人の寮部屋ではなく、共同浴場近くの窓辺だった。
 外出厳禁の時間帯に外出しようとする者と、それを見咎める者。いつもとは逆の光景に、三上はあっけに取られた。

「…ということで」
「おい」

 じゃ、とさっさと出て行こうとする渋沢を、三上は慌てて引き留める。
 渋沢の長身では、秘密の出入り口の窓はやや小さい。窓枠に足を掛けた無理な姿勢で渋沢が振り返った。

「たまにはいいだろ」
「普段俺らに注意してんの誰だよ」
「……………」

 部長兼寮長として、規律違反を咎める立場。そんな渋沢が、わざわざ夜中に寮を抜け出すとは、珍事中の珍事だ。

「女?」
「ちがう」
「…あ、そ」

 夜中に彼女と会いに行くのかという下世話な問いは、言下に真顔で否定された。
 じゃあ何しに、という三上の気持ちが顔に出たらしい。渋沢はやや足をずらしながら、苦笑した。

「ちょっと流星群を見に行って来る。今日がピークらしいんだ。すぐ戻るから」
「星ぃ?」
「ちょっとだけだから、な?」

 頼み込む口調は、「他の連中には内緒で」という秘密を暗黙のうちに含んでいた。確かに渋沢の立場上、たとえ生徒間でも夜間外出が知られれば、この先何かとやりにくい場面が出てくるだろう。
 常日頃、規則違反をたまに見逃してもらっている三上としては、なかなか断りづらい。

「…じゃ、俺も行く」
「え?」
「どうせ明日の午前練習ないし。靴持ってくるから先出てろ」

 ぴっと開いたままだった窓を指さすと、三上はそっと踵を返す。渋沢の回答は聞いていない。
 三上が戻ると、渋沢の姿はそこになかったが、窓の外に人の気配は感じ取れた。周囲に人がいないことを確認し、三上も慣れた窓によじ登る。

「待たせたな」

 Tシャツとハーフパンツという似たりよったりの格好で、地面に飛び降りた三上を渋沢は複雑そうな顔で待っていた。

「何もお前まで」
「うるせ。夜遊び慣れてないお前一人外に出して、何かあったら、俺らが困るんだよ」
「失礼な」

 頼りないと言わんばかりの三上の発言に渋沢は不服そうだったが、三上は気にしない。事実だ。真面目ではあるがその真面目さが仇になり、規則から逸脱したことに渋沢は慣れていない。
 ふと夜空を見れば、真夏の湿気と共に多くの星が瞬いている。

「で、どこ行けば見れるんだ?」
「北西の方角が見えればいいらしいから…学校だな」
「は? アホかお前。学校なんかグラウンド入った途端に警備会社来るぞ」
「そうなのか?」
「ったく、これだからお前は…」

 やっぱり一人で行かせなくて良かった、と顔の周りを飛ぶ蚊を掌で追い払いながら三上は思った。
 私立校のグラウンド設備は侮れない。学校生活の安全のために、巡回の警備員とセンサーが導入されており、不審人物がそうそう入り込めないようになっている。
 名門部の部長が、夜中の学校に入り込もうとして警備員に捕まり、朝一で寮集会で厳重注意される。そんな事態になるなど御免である。

「…北西の空が見えればいいんだろ?」
「ああ」

 数秒考え、三上は数ある候補の中から穏便な場を思い当たった。

「よし、行くぞ」
「すまないな」

 すっかりナビを任せた渋沢だけが、やけにうれしそうだった。









 長く細い階段を抜けた上は、遮るもののない夜空が広がっていた。
 北西どころか、全天を見渡せるロケーションだ。
 ところがそこに連れて来られた渋沢だけが、やけにむっつりとした顔をしている。

「文句ありそうだなオイ」
「当たり前だ。ここ、人様の家だろう!」
「家ってか、マンションだな」

 流れてくる風に乱れた髪を抑えながら、三上はふんと鼻から息を吐いた。文句あるならば立ち去れ。そんな風情だ。
 無愛想なコンクリートと、渋沢の胸の位置ぐらいまでしかない鉄柵に囲まれたそこは、松葉寮からやや離れたところにある15階建のマンション屋上だった。もちろん、二人の実家でもない。

「ここの非常階段、外から誰でも入れるんだよ」
「だからって見つかったらまずいのは学校以上だ!」
「ぶちぶち言うと、今すぐ帰るぞ」

 まるで夏休みに子どもを連れて来た親のような台詞を吐くと、三上は憮然とした渋沢を無視して空を仰ぐ。
 昼間の暑さも、この時間になればかなり和らぐ。湿り気を帯びた風が実に夏らしい。宵っ張りの三上にとって、夏の夜は嫌いではない。

「結構星出てんなー」
「…この時間ならもう月はないしな」
「なんで」
「授業でやっただろう。今は上弦だ。月はとっくに沈んでる。だから星がよく見えるんだ」

 解説する渋沢は、色々あきらめたのか、三上の隣で同じように空を仰いだ。

「今年の流星群は、夜明け頃が一番見えるらしい。…あまり見たことなかったから、ちょっと見てみたくなってな。付き合わせて悪かったな」

 まだ流れぬ星々を見上げる渋沢の横顔は、少し楽しそうだった。
 風流な奴、と渋沢ほど自然現象に興味のない三上は空を見上げるのが面倒になり、その場に適当に腰を下ろした。幸いこのところ雨がなかったせいか、乾いたコンクリートはそれほど汚くない。
 非常灯があるせいで、周辺を見るのに困るほど暗いわけでもない。

「三上はこういう隠れ家を一杯持ってそうだな」

 三上の近くに同じく座りながら、渋沢が笑った。
 渋沢はもちろん、こんなイレギュラーな場所の知識が少ないほうだろう。

「それほど多いわけじゃねーけど、適当に」
「ここは、うちの連中もよく知ってるのか?」
「まさか。こんなとこ、見つかったら問題になるから、一部しか教えてねーよ。あ、お前も言うなよ!」
「わかった」

 神妙にうなずきながらも、渋沢の視線は北西の空を見つめている。まるで流れてきた星を一つでも見逃すまいとするような真剣さだ。
 三上も倣って、無言で北西を見つめ続けたが、視線の先に流れる光は見あたらない。

「…流れねーじゃん」
「タイミングだ。多いときは雨のように降る。願い事でも考えていればいいさ」
「願い事ねぇ」

 女子か、と突っ込みたくなる気持ちをこらえて、三上は鼻から息を吐く。
 胡座をかいた隣の渋沢は、普段と同じくゆったりした雰囲気で空を見つめているだけだ。

「…オリオン座が見えるな」

 ふと、渋沢がつぶやいた。

「オリオン?」
「ああ」

 長い腕を延ばし、渋沢はやや東の方角を指さす。一際輝く三つの特徴的な星座が、そこにあった。

「冬の星座だが、夏も夜明けになれば見られるんだ」

 目を細め、口元にうっすらと浮いた笑み。三上も知らなかったが、渋沢は存外に天文分野が好きらしい。流星を見たいがために、性格に反した規則違反をする程度に。
 三上はそれほど星が好きなわけではない。月の満ち欠けはわかるが、いざ空を見上げて星を数える趣味は持ち合わせていない。

「お前、星好きだったんだな」

 単純な気持ちを言葉にすると、空を見上げた渋沢が笑いながらうなずいた。

「好きだな」
「…ふーん」
「好きなものが多いと、人生が楽しいしな」

 まだ十代のくせに言うことが老けている。
 そう思いながら、友人の天体観測に付き合い、三上もまた夏の夜空を振り仰いだ。










*****************
 夏の流星群と渋沢と三上。
 先週末流星群だったそうなのですが、私は見てません。
 特に意味はないんだけど、夜中の出歩きはちょっとわくわくしますよね!みたいなのをかきたかったんですが。なんかいまひとつテンポがよろしくない感じで…。

 タイトルは、タイバニの1期OPから。
 オリオン座って冬の星座なのに、なぜこの時期の番組主題歌? と思ってましたが、夜明け頃なら見えるんですね!
 あーだからオリオンをなぞる『こんな深い夜』なのか、ということで真夜中散歩となりました。
 僕がいて、あなたがいて、それだけで十分かな! …そんな内容にはなりませんでしたが!






ほんとねぇもう。
2011年08月15日(月)

 ここのところ、「最近笛にはまりました!」的な初めましてさんいらっしゃいませ、なお話を聞くことが数度あり。
 なんか公式で数年振りの動きでもあったの? と思いましたが、まああるわけないですよね。ただの偶然ですよね。はは。

 なんとなくばたばたしているうちに、すっかり楽隠居みたいなオタクになってしまいました。
 いっそ卒業すれば、とすげなく言われたこともありますが、オタクって卒業できんの? という気持ちです。留年は出来ても、一度入ったら卒業するのって至難の業な気がする。
 そんな絶賛留年中です。

 そしてまた久々に笛創作巡りをしてみましたが、まあなんというこのホームグラウンド感。
 落ち着くわぁ。
 あと十年ぐらい笛オンラインでいいや。

 オタク留年中で、新しいものにはさっぱり疎い今日このごろでしたが、珍しく時流に乗ってタイバニは観てますよ!
 先月の13話無料放映で、一気にリアルタイムに追いつきました。
 カップリングには全く食指が動かないですが…。
 カップリングの妄想が始まらないから、たぶんまだ留年中なんだな…。
 ていうか生きるのに一杯一杯な日々ばっかりだったので、娯楽のほうに思考が追いついてないんですよ、マジで。心に余裕がないと、現実逃避の妄想すら出来ない(私は)。身心の安定があってこその妄想。

 最近ツイッターばっかりになってましたが、やっぱりちゃんと長文書かないといかんな、と思ってこんなどうでもいい日常書いてみました。

 あ、そういえば、指摘受けて知ったんですけど、最近のネット閲覧て携帯(とスマホ)が結構多いようで。
 …モバイルには当サイトは対応しておりませぬよ!
 いや、見られることは見られるとは思うんですが、携帯画面から見やすいかとか、名前変換機能が対応しているかっていうと…んーと…(未確認ですすみません)。




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