心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2008年04月27日(日) 意味のないことは起こらない

長女が「算数のノートがない」というので、車でジャスコまで買いに出かけました。僕のカーステレオは最近滅多に音楽がかからないのですが、その時は珍しくCDがかかっていました。そのCDには、植村花菜の『その先の想い』の次に、平原綾香のジュピターが入っています。

「愛を学ぶために孤独があるなら 意味のないことなど起こりはしない」

というところで、長女が「こどくって何?」と聞いてきたので、「ひとりぼっち、ということだ」と答えると、彼女は「ひとりになることなんて、ないなぁ」とつぶやいていました。

さて、土日はAAのイベントで過ごしていました。最近緊張続きで、お腹を下す日々が続いているのですが、この二日間もいろいろな理由で緊迫していて、逆に便秘になりました。スピーチは二人分しか聴きませんでしたが、そのぶん他の人と話をしていました。

僕はこんなところに自分のことをいろいろ書いているせいで、僕に多少なりとも関心を持ってくれている人には、近況報告が大幅に省けるという利点を得ています。なんであれ、話を始める切り口があるのはとても助かります。

僕のソーバーが始まった頃からお世話になっている男性メンバーとは1時間ほど隅で話し込みました。たまたま?同室になった男性メンバーとの話は、深夜に及びました。また、翌日には女性の立場からの話も聞かせてもらいました。みなさん、自分の経験と考え方を僕に分けてくださり、また僕のぶしつけな(金額などの)質問にも率直に答えてくださいました。それは、僕が僕の考えをまとめ、方向を修正するのにとても役に立ちました。本当にありがとうございます。

このイベントの参加費を支払った頃には、まさかその後、身辺が急展開するとは思っていませんでした。それが今はどたばたしているので、疲れや忙しさなど、参加を取りやめる理由はいろいろ考えられたのですが、結局はそこへ行ってしまいました。でも、行かなければ得られなかったものが、行ったからこそ与えられたと感じています。前進しようとするとき、ふっと背中を押してくれる不思議な力の存在を感じるときがあります。今回もそうだったのではないかと。

ともかく、これからしばらくは小休止の期間。これを利用して心身を整えなくてはいけません。


2008年04月22日(火) 近況

4月から新グループに移っています(まだオフィスなどには登録していません)。
それまで「新グループやろうぜ」というメンツは集まっていたものの、3月中頃になってもまだ、何曜日にやるのか、場所はどこが借りられるのか決まっていませんでした。ただ、メンバーの仕事の都合上、金曜日なのはほぼ確定していて、それが断酒会の例会の日と重なっているのが問題でした。
そこで、AAと断酒会の両方に出ている複数の人に媒介を頼み、断酒会の会長さんにご挨拶に出向いたりして、一つ一つハードルをクリアしていきました。「さすがに(断酒会とAAが)同じ建物の隣り合わせの部屋になるのはやめてくれ」という条件でしたので、別の建物で部屋を借りるべく交渉したり・・・。このままでは会場が始まるのが5月になるか、6月になるか・・。なんて言っていたら、4月から1年間部屋が借りられてしまいました。

まったく準備不足だったのですが、せっかく部屋が借りられたのに使わないでおくことはない。その部屋にアルコホーリクが2〜3人集まればグループになるんだから、ともかく始めちまおうぜ! ということで、ともかく毎回10人前後が集まっています。いろいろ用意できて、グループらしくなったら登録しようと話し合っています。

相方の仕事はシフト勤務制で、今週から夜勤も始まるので来られないこともあるようになります。いままで司会からは逃げてきましたが、いよいよやらざるを得ないか。

前のホームグループの会場が水・土で、それにプラス月・火が他のグループの会場をオプションにしていました。現在はホームが金で、月・火・水がオプション。土曜日に家にいることにしたのですが、なんとなく落ち着きません。

AAのとあるサービスの委員会をクビになりました(正確には再任されなかった)。もう一つも今年限りとお知らせがありました。サービス関係からは手を引いて、別のことをやれという、神さまの思し召しかも知れません。現在AAサービスの舵取りをしている人たちは「僕とは合わない」ということです。AAの素晴らしいところは、どんな人であれ最長四年でその立場から追い出される輪番制が確立していることで、またサービスに関われる日もいつか来るでしょう。

スポンシーの一人は、ステップ9をこなしながら、毎日ステップ10の検討をするところまでたどり着きました。もう一人はゆっくりさんなので、4の表が全部終わるのは夏か秋か。でもそれが、彼のドミノの倒れるスピードなのでしょう。

サービス関係は手じまいして、ホームグループ、スポンサーシップ、地元地区の仲間との関係、それより何より自分のことに集中して行きなさい、というふうに、ハイヤー・パワーが余計な荷物を取り除いてくれたのだろうと信じて。


2008年04月20日(日) Jさんの物語(その10/おしまい)

さらに半年後(それはもう今年ですが)にJさんからメールが届きます。
まだ二人が別れていないとしても、僕には「こういう関係では、そのほうがありがちなこと」だと理解できてきた以上、驚くことはありませんでした。ちょうど、アル中さんのご家族からのメールが、半年後も「まだ飲み続けています」という話であるのが普遍的であるように。

AAで何年間か酒をやめた「彼」は、Jさんとの交際の中で酒を飲み出し、そして当然のように加速度的に悪くなって、悲惨な状態になっていました。メールには彼がJさんを思い通りに操ろうとした、あるいは支配しようとしたエピソードが多数うかがわれます。その行動が、彼のもともとの性格から来ているのか、それともボーダーの彼女に振り回された結果の反応なのか。あるいはアルコール乱用による精神の荒廃の結果なのか。止まらない暴力癖の一面なのか。僕には分かりません。

一方彼の言い分としては(それはJさんのメールを通してしか知れないのですが)彼女に「いままでどれほど譲歩し、負担に感じてきたか」と憤ります。そうして彼女を拒絶しながら、別の日には「すぐに来てほしい」と呼び出すのです。

そうした彼に対して、Jさんは、好かれるように、嫌われないように、捨てられることのにないように、懸命に努力してきたと主張します。しかしながら、ボーダーの人と接したことのある人ならご存じだと思いますが、接することで「まるでこちらが操作されているかのような」感覚を味わいます。ボーダーの人は決して人を操ろうなどと意図していないのでしょうが、結果としてその行動が人を操るかのような印象を与えます。しかもその操作の基準がころころと変わります。Jさんが、そのことを自覚していないのであれば、一切その記載がなくても不思議ではないはずです。邪推がすぎるでしょうか?

彼の態度はアルコール問題の否認へと変わり、Jさんは家族のグループに出たりしましたがなじめず、それでも共依存について考え出したところで、彼が仕事で遠方に行き、電話で彼女の家族まで激しく非難を始め、Jさんは「一時的にせよ別れます」という決断を下したのが現状です。

その後のメールのやりとりは、僕がこの件を雑記に書きたいとお願いし、許可をいただいたりする事務的なことが数通あるのみです。

摂食障害の人の約半数、薬物乱用者の半分以上はボーダー(BPD)だそうです。AAにもボーダーの女性は結構います(男性もいるけど女性ほど目立ちません)。彼女たちの評判は(飲んでいなくても)概して悪いものです。「何を考えているか分からない」「わがまま」「回復していない」「回復する気がない」などなど、ひどい言われようです。それは、アルコール依存症に対する理解のない世間が、飲んでいるアルコホーリクに浴びせる言葉とそっくりです。

改めて掲示板でこの件を取り上げたスレッドを読み、BPDにも12ステップが有効だという話を伺いました。確かにそうかも知れないと僕も思います。しかし、今の日本のAAにBPDの人をも回復させるしっかりしたステップが普遍的に存在しているのかどうか、あるいはアルコール以外の(BPDを含めた)メンタルな問題に対する理解や受容が広がっているのかどうか。そういう疑問には否と答えざるを得ません。
なにぶん問題に取り組むには、問題の存在を認めなくてはならないのですが、それを促す雰囲気は今のAAにはありません。これからオンラインでもリアルでも、いろいろなグループが出来ていくのでしょう。
AAはアルコールの問題専用ではあるものの、アルコールと他のメンタルな問題の両方を抱える人に対する理解は必要不可欠だと思います。

Jさんと彼の幸せを祈ります。それぞれ別の人生を歩くのが幸せへの道だと思うのですが、回復しなければ他の人を相手に同じことを繰り返すだけかもしれません。実はそれが二人にとって一番耐え難い未来予想図だったりして。

末筆になりましたが、Jさんに改めましてお礼申し上げます。ありがとうございました。お幸せに。


2008年04月19日(土) Jさんの物語(その9)

このときの僕からの返信は10日以上遅れています。

――――――

Jさん、ひいらぎです。

ずいぶん遅くなりました。

知り合いのあるアルコホーリクは、家を飛び出してアルコホーリクの彼女と暮らしだし、そして二人で飲んでいます。母は殴っても、彼女は殴らなかった彼もいまでは立派に彼女を殴っています。
それでも彼女は彼の元にとどまり続けています。彼を助けたいという一念で。

男がアルコールに取りつかれ、依存しているように、また暴力というパワー幻想に取りつかれ、依存しているように、女もまた「私ならいつか彼を助けられる、いま面倒を見られるのも私だけ」というパワー幻想に取りつかれ、依存しています。
男が酒をやめるためには、酒に対する敗北を認めなければならないように(暴力も同じ)女が男の元を去るためには、敗北を認めなければなりません。それをお互い嫌うのです。

ようするに、面倒を見る方も、酒を飲むのと同じ依存症の心理に陥っているのです。だから、アル中の家族のグループアラノンでは、AAと同じ12のステップを使います。

いかなる人間的力も、取りつかれ病んだ心を救済することはできず、それができるのは(その人の)神様だけ。

敗北を認めなさい。あなたに彼は救えないし、彼もあなたは救えない。
無力を知り、助けを求めなさい。

酒と暴力はイコールですから、そのことを忘れないように。進行性ですよ。

――――――

数日後のJさんからの返信は、彼への依存を認めつつも、やめられない心情を吐露しています。そしてまたまた半年経つのであります。


2008年04月18日(金) Jさんの物語(その8)

さて、彼と別れて、EAのミーティングに行ったという報告から半年後。Jさんから「めでたく私たちは本当のDVのカップルになったようです(笑)」というメールをいただきました。

(ああ、やっぱり)

それ以外の何の感想を持てるでしょう。

「殴る側の辛さの訴えをどう受け止めたらいいのでしょう」

暴力も、やめたいのにやめられない、ということではないでしょうか。自分自身に経験がないことですので知識でしか語れませんが、病的であることは確かです。

そして僕のかつての忠告を受け止めていなかったことを詫びる文面が続いていましたが、酒をやめられない人に「やめろ」と言ったのと同じことですから。

そして、これから彼とドライブに行くのだが、その誘いに従うことは、従わないことより若干安全だろうという言葉で結ばれていました。


2008年04月17日(木) Jさんの物語(その7)

慣れないことをしているので胃が痛い状況が毎日続いていて、もう体重を量るのも嫌になってきております。メールをいくつか頂いていますが、返信が遅れていてすみません。すこし余裕ができるまで時間をいただきます。

さて、Jさんの話の続きですが、この時期の僕もどたばたしていて、Jさんからもらったメールに一通一通まめに返信していません。なので、多少はしょる部分もあります・・・。

――――――

Jさん、ひいらぎです。

お酒の影響が完全に抜けるまでは、男性で3〜5年、女性で5〜7年はかかると言われています。女性のほうが長いのは、生理的な原因によると言う人もいます。
もちろん、医学的な検査の話ではないのですが、そう信じる人も多いのです。

あなたも彼も、男女のつきあいをするには、まだ早かった。
結論はそういうことではないでしょうか。
結果がそれを示していると思います。

あなたはあなたの道を歩めば良いのです。
診察室では、自分の行動を正直に伝えることをお勧めします。

それから、これは心からの忠言として申し上げますが、
「なにがあっても、よりは戻さないように」
であります。

仮によりが戻って、さらにつきあいが長く続いて、さらには結婚ということになったとしても、おそらく彼は「殴る夫」になり、あなたは「殴られる妻」になっただけのことでしょう。

神さまは、あなたに必要なものを与えてくれ、不要なものは取り去ってくれます。
あなたに彼は必要なかった。ということでしょう。

ひいらぎ

――――――

この時点で暴力があったか、という確認をしたのですが、彼からの暴力はもっぱら言葉によるだけで、わずかに顔を叩かれたことがあるものの、それは彼女の「殴って」「何でもして」という懇願によって行われたものだと返信がありました。
でも、女に殴ってと言われたって、普通殴れないもんじゃないか? と思うんですけどね。

さて、一週間後にJさんからまたメールがあり、自分を保つために意図的に忙しくしていたこと、冷静になって彼にメールしたものの、彼からの返事も冷静な別れの言葉だけだったことなどが告げられてありました。
そして初めてEAに行き、シェアリングから得るものがあった、という報告をいただいたあと、何もないまま半年経過したのでした。


2008年04月16日(水) Jさんの物語(その6)

さて親密だったはずのJさんと「彼」。
しかし彼は突然限界を越えてしまったかのように、Jさんに暴言を吐き、拒絶の態度を取るようになりました。彼女を置いて一人で帰ろうとする彼を、彼女は「帰らないで」と言って抱きつき、30分から1時間泣きわめいて止めたのです。

実はこうした事態は数ヶ月前にもあった、とJさんは告白します。だからその二の舞は避けたいと、彼の側は冷静を努めていました。ところがJさんほうは、「自分がとたんに幼児のようになり、『見捨てられる事がその瞬間死ぬ程の恐怖』に変わってしまったのだ」と言います。

その時彼女の頭の中には、ずっと以前に彼女が離婚を経験したときの混乱が再現されていたそうです。それでも彼は、Jさんを無理矢理引き離して帰って行くのでした。

AAメンバーでもある彼は、数年間飲まないでいる生活を維持していたのですが、Jさんとの交際を初めて数ヶ月後に再飲酒し、加速度的に悪くなって精神科に入院を勧められるほどになってしまいました。だから、彼の飲酒による心の荒廃が、この修羅場をもたらしたと考えることもできます。

ところが、飲んでいる彼との交際続行を希望するJさんのスタンスは、「そんな彼を助けてあげたい」という共依存的なものではなく、拒絶されても捨てられたくないというしがみつきです。

おそらくJさんにアルコール乱用の時期があったとしても、それは依存症ではなく、ボーダーの「自己破壊的行為」の一つにすぎなかったのではないか、という考え方もできます。

まあ、メールという狭い窓から覗いた風景で、全体を判断するのは誤りのもとかもしれません。しかしながら、二人とも男女のつきあいをするには回復が足りなかった・・ということは確かに言えると思います。

明日は、僕がこのときに返信したメールの内容です。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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