心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年03月09日(火) ストーリー形式の棚卸しを聞く

スポンシーの棚卸しを聞きました。今回はいままでの人生をストーリー形式で振り返るやり方で、従来の日本式の手法です。僕はこれにライフストーリー形式という名前を付けています。

書いてもらう前にスポンシーに出した指示は「これを書くのに何週間も、何ヶ月もかけてくれるな」でした。これが済んだら表形式の棚卸しに取りかかる予定なので、それが何ヶ月も先に伸びてしまっては、ステップ全体の進行が止まって困るのです。完璧を求めすぎる余り、時間がかかりすぎるのは良くありません。それよりも設定した期限までに仕上げることを要求したのです。

僕がこの方針をとるのには理由があります。僕はストーリー形式の棚卸しから性格上の欠点を分析する技法をスポンサーから受け継いでいません。聞いていれば大まかな欠点はわかるものの、その原因・根源を探っていく技量を持っていないのですから、そこに注力する意味はありません。表形式をやる前フリとしてやっているわけです。

このやり方にも利点があり、その人の人生全体を鳥瞰することで、行動や考え方の傾向を知ることができます。また登場人物も一通り把握できます。これは大事なことです。正直になりきれないスポンシーは表を書くときに、特定の相手を完全に無視して表に載せないことがあります。あるスポンシーは恨みのリストに奥さんと子供を載せませんでした。理由を聞くと、「妻と子に対してまったく恨みはありません」と真顔で答えたのでした。こんな具合なので、なにか重要なインシデントがあっても、その相手を表から外してしまう可能性は十分あります。棚卸しから誰かを外せば、埋め合わせからも外すことになり、それがステップ全体の効果を台無しにする可能性もあります。ストーリー形式を先にやっておけば、本人もスポンサーもそれをチェックできます。

ストーリー形式の場合、書くときも、話すときも、聞くときも、「考える」よりも「感じる」ことが大事であるように思います。しかし感じたことの効果は、月日とともに薄れていってしまうわけですが。

今回は全体を聞くのに3時間を要しました。これは決して長い方ではありません。けれど短すぎるとは思いません。なぜなら、今回の話では中学校以降は現在まで、ひたすら同じパターンの繰り返しだからです。場所を変え、相手を変えて、同じことを繰り返しているだけです(だから聞く方はすごく飽きる)。

おそらくご本人は、いままでの人生が同じことの繰り返しだったとはほとんど気がついていないに違いありません(けれどなぜ自分の人生がうまくいかないのか悩みはある)。酒や薬を飲んでいるときも、飲んでいないときも同じです。今回はソーバーが始まって数ヶ月での棚卸しでしたが、これが仮に数年後に聞いたとしたら、酒や薬を飲んでいた頃とやめた後でまるで変わっていないことに気づくでしょう。つまり、

人間は酒や薬をやめたぐらいでは考え方も行動も本質的に変わらない。

という当たり前の事実が判明するのです。(これは何も今回のスポンシーに限ったことではなく、僕を含めたアル中に普遍的な傾向でしょう)。
これは自分で自分を変えることの難しさ。「自分の性格上の欠点に対する無力」の認識につながります。これを理解するからこそ、ステップ6、7の「自分は自分の欠点に対して無力だが、ハイヤーパワーにはそれを変える能力がある」という考え方に発展できるわけです。

ここにおいてステップ2の「解決=ハイヤーパワー」という理解はとても大事で、それがないとどうしても「解決=自分の努力」になってしまいがちです。すると、自分の欠点を自分で見定め、自分で直そうとします。これは何でも自分の力で解決できるはずだと思いこんでいた、飲んでいた頃の考え方と同じです(その人を酒に導いた考え方と同じと言っても可)。酒をやめただけでは人は変わらないので、「古い考え」に戻るのは自然なことです。そうやってステップ4・5の効果が失われていくのでしょう。

僕はステップ4・5は一回やれば十分だと思っています。前回やった効果が薄れてしまったのでまたやらねばというのであれば、それは前回のステップ4・5が不十分だったというよりは、その前のステップ2・3がちゃんとできていなかったということです。その状態で棚卸しをやっても前回と結果は同じでしょう。

しかし今回も疲れました。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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