心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2009年05月20日(水) 脳の病気(その2)

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精神病は、心の問題であると同時に、脳という臓器の障害でもあるという話の続き。

近年になって、統合失調症(精神分裂病)患者には脳萎縮があるという知見が定着してきました。画像で脳萎縮が判別できないレベルであっても、すでに脳神経細胞の消失が起きていると考えられています。
ただ、臓器の病気だからといって、これが恐ろしい遺伝病だと考えるのは間違っています。一卵性双生児の片方が統合失調の場合、もう一方が発症する確率は十パーセントあまりです。つまり残りの八十数パーセントは同じ遺伝子を持ちながら(脳萎縮がありながら)発症しないわけで、環境要因の大きさが分かります。

近赤外線を脳に照射して中の血流量を図る「光トポロジー」という技術があります。開業医の精神科医がこの装置を導入し、うつの診断に使っているというニュースをテレビでやっていました。例えば「<た>で始まる言葉を思いつくままに並べてください」というふうに脳を使わせると、健常者の場合前頭葉の血流量が増え、うつ病患者の場合は増えない、のだそうです。この機能の違いは、当然脳の器質的な違いからやってくるものでしょう。

部屋が片づけられず、すぐに汚部屋になってしまう人の中には、ADHDという病気の人が含まれているのですが、このADHDは「注意欠陥多動症」という「症状」に焦点を当てた病名です。この病名以前はMBD(微細脳損傷)と呼ばれていました。これは症状よりも原因に焦点を当てた名前ですが、ふたたび原因に関心が集まっているのだそうです。

どうやら21世紀初頭の精神医学は、心より脳へ向けて舵を切っているようです。

ところで(依存症を含めた)精神病というのは、親から遺伝によって受け継いだ脳の器質的脆弱性が問題なんだよ・・と言われても、実際その病気にすでになっている人間には何の慰めにもなりません。精神病の親を持っている(いまのところ健康な)子供たちにとっても同じことが言えるでしょう。

では、そういう脆弱性を抱えてしまった私たちは、それにどうやって対処していったらよいか、という話は、また次回に続くのであります。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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