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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2006年04月27日(木) 空と君のあいだに(その4) 夕食・お風呂・男女に分かれてAAミーティング・コーヒーを飲みながら雑談です。
イベントだと必ず夜更かしをする僕も、この日はスキーの疲れで早々と寝てしまいました。
翌日は午前中滑ってお昼に解散の手はずです。ホテルはチェックアウトしてしまうので、荷物は自分の車に積んでしまいます。ゲレンデに散ってしまったら、あとは集合しないので、はぐれたらおしまいです。
僕は彼女と二人で滑る気満々でしたが、さすがに昨日の夕方の事件でみんな心配になったのか、朝からみんなで集まって滑っていました。ゲレンデじゃなくて林間コースを滑ったりして結構楽しかった。でも、やっぱり少しうまい人は初心者用コースはつまらないのでしょう、だんだん人数が減っていきました。結局、人のいいおじさん(失礼)のNさんと3人になりました。
白金から、表太郎を抜けて、日の出ゲレンデへ。彼女とNさんの後をついて行ったつもりだったのですが、途中ではぐれました。僕は表太郎の上級者コースへ紛れ込んでしまったのです。最大斜度30度。道を間違えたと気がついたときには、もう上へは戻れません。文字通り転がるようにして麓まで降りました。スキー板を吹っ飛ばしながら転がっていくと、哀れに思うのか上級者の人が板を僕のところまで持ってきてくれるのでした。それでまたスキーを履いて転がって・・・。
リフトでまた尾根まで上って二人を捜すのですが、なにせ周囲は中・上級者コースばかりです。また紛れ込んでは先ほどの二の舞をしてしまうのでした。
麓でどうしたものか途方に暮れていました。僕のPHSは圏外で使い物になりません。そうこうするうちに、スキーは手練れとして知られているSさんが、脇腹を押さえながらスキーを車に積んでいるのに出会いました。話を聞くと、転んで止まらず、支柱にぶつかったので医者に行くんだそうです。
「いやー、死ぬかと思った」
それを聞いて僕は、もう一度中・上級者コースに入る危険は犯せないなという気持ちになりました。肋骨にひびが入っていたそうです。
集合する予定はなかったものの、ホテルの前でタバコを吸っていると、三々五々みんなが集まってきました。彼女はNさんとコーヒーを飲んでいたそうで、「ひいらぎも、私たちを見捨ててどっかへ行っちゃったでしょ」と言われました。おやおや。
ともかくイベントはそれでおしまいで、「また会いましょう」、「うん、ひいらぎ、またね」、「ミーティングで会いましょう」。そう言って別れました。
また春になれば彼女も峠を越えてくるだろうし、僕も行くことにしよう。また一緒にミーティングができるだろう。そう信じていました。
彼女も回復して、いずれ男ができるのかも知れないし、結婚するのかも知れない。それを考えるとちょっと淋しい気がしました。僕は結婚するのをちょっと早まったかなぁと後悔しました。が、もうしばらくは、また遊んでもらえるかも知れない。AAライフは少し楽しくなりそうな予感がしました。
しかし、彼女と会ったのは、結局それが最後になりました。
2週間後か3週間後。2月になっていました。
夜10時か11時頃でした。突然僕のAAスポンサーから電話がありました。
「みんな死んでいってしまうな。俺は悲しくてやりきれないよ」
スポンサーはなんだか悲しくてやりきれないという声で、彼女の死を伝えてくれました。
僕はなんだか信じられない気持ちで、「早くこの電話を切ってくれないかな」とぼんやり考えていました。悲しいという気持ちは不思議とわいてきませんでした。
スポンサーはそれ以上の情報は持っていませんでした。
(明日で終わりです)
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