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天竜



 明日への萌え力

(音が出ます)何度観てもキャプテンの耳に齧り付く理由がわからん。いや、わかってはいるんだけど…。

先日の試合でもハーフタイム明け、ホイッスルを待つキャプテンに呼ばれ一目散に駆け寄るのはわかる。だがその後いちいちボディタッチする理由がわからん。いや、わかってはいるんだけど…。

2006年10月15日(日)



 ラブシーンも可愛いんだこれがまた

大好きなゲイムービーと大好きなサッカーと大好きなドルトムントがごちゃ混ぜになってさあ大変な映画「WE LOVE BALLS!(邦題)」という作品をDVDで観ました。
地元チームのゴールキーパー・エキーは仲間にゲイだということがばれチームを追放されてしまい、売り言葉に買い言葉、ゲイだけのチームを結成し元チームメイトたちと試合をすることになる、という内容。
コメディでめちゃくちゃ面白いし、胸キュンもあるし、最後はハッピーエンドだし、もう大変です。

ドイツといえば堅物というイメージがあるのですが、ヨーロッパの中でも性に関してはかなりオープンなお国柄。この間のワールドカップでも、ベルリン市長は自らゲイだということをカミングアウトしているので、ボーイフレンドと一緒にスタンドで大盛り上がりしていましたしね〜。
ドルトムント地方は鉄鋼業や炭鉱が盛んな地域で、週末ともなればマッチョないかつい男達が大挙してサッカー場に訪れるわけですが、そこを舞台に撮られているというのも洒落がきいているというか、ただ単に監督がボルシア・ドルトムントファンだったのかもしれませんが、個人的には親しみのある土地なだけに大いに楽しめました。
なにげな〜く、いまだバカンスに彼女ひとりも連れてこないとマスコミにまで本気で心配されるドルトムントの選手の写真が主人公エキーの部屋に飾ってあったり、さりげな〜く、ベッカムが当然のようにゲイ認定されていたり、小ネタも満載でナイスないい映画でした。もうあたくしは買う気満々です。

興味のある方はぜひどうぞ!サッカー好きじゃなくてもずぇんずぇん楽しめますよ!

2006年10月14日(土)



 この場を借りて

大失態です。
ネット遮断中に頂戴したメールのお返事をウッキウキしながら書かせて頂いていたのですが、どうやら私の凡ミスでいくつかのメールが消えてしまっていることに気付きました。本当にごめんなさい!お返事をする前のメールもあったので、自分のバカさかげんにへこみまくっています。
ありがたいことに日記を読んでくださっていた方が多かったので、この場を借りてお礼を言わせてください。
メール、本当にありがとうございました。すべて嬉しく拝見させて頂きました。
皆さんから掛けてくださる言葉のひとつひとつが創作への活力になります。まだまだ至らない部分もたくさんありますが、どんな形にせよ、今後もチャレンジ精神を忘れず創作に取り組んでいけたらいいなと思っていますので、連載含め、どうぞ最後までお付き合いしてやってくださいね。

2006年10月13日(金)



 パロディでしめるよ短編 10

猫目洞夜 弐


世の中の混濁と憂鬱と殺伐を攪拌しビーカーに注ぎ込んだかのような昏い夜。誰もが早足で帰路につこうと躍起になっている中で、木場はこんな重く怠惰な闇こそが相応しいと感じる店のドアを潜った。
「あら、いらっしゃい」
躰に纏わりつく陰鬱を拭い去ってくれるかのような、鈴の音にも似た声が木場を迎え入れる。「猫目洞」の女主人潤子にとって、闇は共存すべきものであり、愛すべきものであるからこそ、彼女自身は常にこうも凛としていられるものなのかもしれない。
「相変わらず客が少ねえな」
カウンターに座りながら、店に足を踏み入れた途端に感じた得体の知れない妙な後ろ暗さを押し隠すようにして潤子に声を掛ける。
「あんたこそ覇気の欠片もないような顔してるじゃないの。吐き出したい愚痴が喉元までせりあがってる雰囲気ね」
「うるせえ、俺は年がら年中こんな顔だ」
「やだわ、景気が悪い」潤子はくすくす笑いながら、慣れた仕種で木場の酒を作る。
紺青の着物を細身にまとい、薄化粧にして年齢を想像させない潤子のもとへこうして足を運ぶのは久しぶりだった。決して多忙だったわけではない。避けていたわけでもない。ただ、潤子という女性が木場の中で、木場自身の預かり知らぬところで、ひとりの女性としての輪郭を結ぶようになってからというもの、何かが木場の足に絡まりつき、猫目洞へ向かおうとする意志をその都度折ろうとする。臆病なのだ。木場は自覚している。色恋沙汰とは無縁の日々を過ごしてきた木場にとって、潤子に対する自らの気持ちの変化が腰の据わらぬ落ち着かない状況を生み、弱気を生み、やましさや後ろ暗さを伴って、過分な杞憂として木場の精神を縛りつけようとする。
愚かだと思う。
女を知らない小僧でもあるまいに。
そんな木場が久方ぶりにこの店を訪れたのには理由があった。
「誰かと待ち合わせなのかしら」潤子ができた水割りを木場の前に置きながら訊いてくる。木場は「ああ」と答え、「別に約束してるわけじゃねえけどな」と正反対のことを言った。勘の鋭い潤子は「探偵さんね」と言って女性独特の微笑を頬に浮かべ「変わらず仲良しなのね」と途方もないことを言った。
「腐れ縁だ、腐れ縁。あんな野郎と同類にするんじゃねえよ」
「あらあら、拗ねた子供みたいね」
いちいち言うことに腹が立つ。木場はグラスを傾け、半分ほどを喉の奥へと流し込んだ。一緒に流れ込んできた忌々しさは、しかし何故か懐かしく、親しみのあるものであり、またそれが木場を不機嫌にさせた。

世間では連続殺人と噂された事件の経緯を青木からすべて聞いた木場は、まずこれ以上死人が出ないということに安堵し、たった一雫の毒と偶然と必然とが絡み合って生まれた連鎖に慄き、女という生き物の執着に呆れ、そして同時に、どこかもやもやとした、言葉で言い表すことができない不可解な感情が腹の中で蠢くのを感じた。前回会ったときよりも幾分やつれ、また幾分男臭さが増した青木には「お疲れさん」とだけ言い、解決した事件、それも自らが捜査に加わったわけではない、言ってみれば余所の事件にこれ以上心を割くのは得策でないと自分に言い聞かせ、頭と腹にこびりつく名残を無理やり剥がし取った。いや、結果、剥がし取ったつもりであっただけで、馬鹿探偵からの馬鹿電話が掛かってきたことで、結局は青木の報告を受けてから纏わりついて離れない引っかかりをあの男に押し付けようと考えているわけだから救いようがない。
目の前のグラスに張り付いていた水滴が、木場の煩悶をよそに、つるりと滑り落ちてコースターへ小さな染みを作った。潤子は木場の様子から今夜はあまり構わない方がいいと決めたのか、ただ単に厄介な男の世話に愛想をつかしたのか、別の客のもとでなにやら談笑をしている。
その時だった。
背後で威勢のいい音を立てて店の扉が開いた。振り向かなくとも、場末の寂れたバーに場違いな高笑いを響かせて登場する馬鹿などこの世にひとりしかいない。
「やあやあ、四角い豆腐が四角い顔をしてしかめ面をしているな! そんなふうだからいつまで経っても豆腐ようにはなれないんだぞ。しゃれた洋酒なんか飲んでいるから余計に性質が悪い。豆腐には泡盛と昔から決まってるじゃないか」
「うるせえよ馬鹿探偵、さっさと座れ」
「あら榎木津さん、いらっしゃい、お久しぶりねえ」
木場の声に重なって、軽やかな鈴の音が鳴った。榎木津は潤子に「豆腐ようは焼酎にもビールにもあってなかなか旨いんだぞ」とわけのわからないことを説明し、潤子は潤子で「納豆よりおいしそうね。今度ごちそうしてくださいな」と適当な相槌をうっている。
木場は小さくなった氷と一緒に、残っていた酒をいっきに飲み干す。潤子はカウンターに戻り、木場のおかわりと、榎木津のために新しい酒を作ると、再び席を外して別の客のもとへと戻って行った。
「どうした、とうとう潤ちゃんにも嫌われたか」
「年増相手に潤ちゃんだと? 笑わせるな」
榎木津は長い腕をビシッと伸ばし、潤子を指差して言った。「潤ちゃんは十年前も十年後も潤ちゃんであって、潤ちゃんは桃太郎にも金太郎にも浦島太郎にもならんのだぞ! とうとう耄碌したのかスカスカオクラ頭め!」
木場はすでに後悔していた。自分は、今回の事件の顛末を聞き、この目の前の馬鹿男に少なからず同情のようなものを抱いていた。一時期は恋人だった女が、犯罪の核となり、例え不可抗力や無意識や無作為だったとしても、多くの人間を死に追いやったのだ。榎木津は彼女に会い、「視た」はずだ。過去の自分も、当時の彼女の姿も、そして現在、彼女が出会い、そして死んでいった多くの男女の顔を。
青木は言っていた。「榎木津さんは、いつもの榎木津さんじゃないように見えました。自分の知らないところで、自分のせいで、たくさんの罪なき人が殺人者になり、被害者になり、死んでいったわけですから、もし僕なら耐え切れないかもしれません」
榎木津はそんな柔な男じゃねえよと青木に言い、自分にも同時に言い聞かせた。その程度のことで、あの男が変わるわけがないと。だが心の奥底で、木場は「もしかしたら」という思いもあった。もしかしたら、榎木津はあの神崎とかいう女に何かしらの手を差し伸べ、黒い海に沈もうとする彼女を救うのではないかと。
期待、に近かったのかもしれない。
なぜか。木場は自分に問う。答えは、解かっている。あの男、黒衣を纏ったあの男に、榎木津は縛られている。同時に、あの男を榎木津は縛っている。二十年、多くのものが移り変わり、戦後という時代からの脱却、忘却、果たして向かうべき未来があるのかもわからず前進を続ける人々。その中で、変わらず互いを必要としてきた二人の関係を木場は、頭ごなしではなく諦めに近い感情で認めてはいるものの、どこかで崩れれば良いと願っているのも確かだった。男は女と所帯を持ち、子を成し、家族という骨格に嵌るのが「普通」であると言われるのは、それが人としての「幸せ」であるとともに、そうして家族を増やし、人は子を残すことでこの世に生を受けた人間として何らかの「証」を残すことができるからなのだと思う。自己満足の極みではある。しかし、誰もそれを疑わない。なぜ疑わないのか。疑うこと自体、「間違っている」のだとわかっているからだ。

「女々しい豆腐だなあ。子供が欲しいならその四角頭を地面にこすり付けて潤ちゃんにお願いすればいいのだ」
鳶色の瞳を細め、にやにやと笑う榎木津はどうやら木場の頭からこぼれ落ちた断片を視、適当なことを言っているのだ。
「お前みたいなトンチンカン野郎には付き合っていられねえ。俺は帰る」
「逃げるのか、木場修」
「逃げ……なんで俺がお前みてえな男相手に逃げなくちゃなんねえんだ、あぁ?」
「素直じゃないな。僕のことが心配だったと素直にどうしてそう言えない。神崎宏美もおおばかものだが、お前も変わらずばかものだ豆腐頭。豆腐頭ふにゃふにゃ馬鹿男だ」
木場は舌打ちし、憎たらしいほどに眉目秀麗な男の顔を睨み付ける。榎木津の口からそうもたやすく例の女の名前が出てくるとは思っていなかった。それほど「簡単」なことだったのか? 違う、それならばあの拝み屋がわざわざ出向くわけがない。
「俺が馬鹿なら、てめえはどうなんだ。己の色恋沙汰の後始末もできねえから、こういうことになったんだろうが。復員してまっさきに会いに行ってやりゃあ良かったんだ。恋人だったんだろう? あの京極に写真まで預けて、しおらしいこと言って、結局てめえは今も昔も他人の気持ちなんて考えちゃいねえんだ」
なぜか止まらなかった。言いたいのはそんなことではなかったはずだ。それなのに――。
「京極はてめえのことを慮って、落としたくもねえ憑きものを落としに行ったんじゃねえのかよ。あいつに言えば、どうせ仕事だとか、成り行きだとか、そう言うに決まってる。だけどな、言わせてるのはてめえなんだぞ馬鹿探偵。別にお前ら二人に限ったことじゃねえ。今回の事件で死んでいったやつらだって一緒だ。人と人がいて、誰かを守りたいとか大切だとか、そういう感情があって、人間てえのは馬鹿だから、そういったもんに振り回されて、それでも仕方ねえって思って、あいつのためならって思って、理不尽なこってもどうにかやってやろうって思うんじゃねえか。京極だって別に化けモンじゃねえ。感情ってもんがある。あの男がどんな気持ちで平塚に」
「木場修」
榎木津に名前を呼ばれる。止められなかった言葉が止まった。榎木津はさきほどと変わらない笑みを湛えてはいたが、何かが変わっていた。解かっているはずだ。木場は再び自問し、回等を探し出す。榎木津はその回答を奪い去るように口を開く。
「始末は、仕度があってからこそするものだぞ」
意味がわからない。解かりたくないのか。榎木津は続ける。
「仕度は、<呪>さ木場修。あの写真、あの紙切れ一枚が、あいつにとっての<呪>になるんだ」
「……どういうこった?」唸るような声になった。榎木津は形のいい指先で、グラスの中で揺れる氷に触れ、小さな雫を払う。
「木場修、僕は化け物か?」
そうだ、この目の前の男は化け物だ。いや、違う。周囲からそういう目で見られている男だが、長年の付き合いである木場は知っている。榎木津は強いが、その強さは人であるがゆえのものだ。木場が黙り込むと、それをどう判断したのか、榎木津は「僕は猿男でも馬人間でも、豆腐頭でもないぞ」と言い、人間だからなと言って笑った。
死ぬかもれない。死にたくはない。死んで本望だ。死んだら終わりだ。
戦地に赴く人間は、誰しも覚悟のようなものを持っていた。木場自身、無事に生きて日本国に戻って来ることができるか否か、そんなものは考える余地すらなかった。
榎木津も、この破天荒な男も、出向のときは死を覚悟したのだろうか。いや、したに違いない。それでなければ、わざわざ写真を内地勤務であった京極に預けたりはしなかったはずだ。もし自分が死ねば、写真は京極の手に残る。破り捨てればいい。たった一枚の写真、たった一枚の紙切れ、しかし、京極はそうはしないだろう。持ち続けるはずだ。実際、京極は持っていのだ。
写真に、囚われていた。
それがつまり<呪>ということなのか。

榎木津はグラスを傾ける。氷がカチンと小さな音を立てた。
「神崎宏美は周囲を利用してことを成し遂げようとした。しようとしていなくても、結果そうなったのだ。おおばかものだから。だけどな、僕も神崎宏美を利用していたことに違いないんだろうな」
「京極を、縛るためにか」
木場が言うと榎木津は太い片眉を器用に上げ、僕はそんなにマニアックじゃあないよとわけのわからないことを言う。
「でもてめえはよ、少なくともその当時、神崎と恋人関係にあったんだろうが」
「きれいな子だったよ。賢くて聡明だった」
「じゃあ京極は」
「あいつは」
榎木津は言葉をそこで止め、木場を見つめた。
視られているのか、見透かされているのか。
榎木津はビスクドールさながら、表情を消し去り、血も肉も感情さえも消し去った声で言った。

「――あいつは、僕のものじゃない」

黒い雫が、落ちる。
木場はその場所を探すかのように、正面から榎木津の顔を真っ直ぐに見返した。
人は狡賢く、傲慢で、強いものだ。
同時に、人は愚かで、臆病で、弱いものでもある。
見つけ出した雫はあまりに滑稽で、どうしようもないほどに脆くそこに存在していた。
木場はため息をつき、小さく首を振る。
「榎、てめえが一番の大馬鹿野郎じゃねえか。ガキじゃあるまいし、なにが<呪>だ。怖かっただけじゃねえのか。死ぬのが、離れるのが、忘れ去られるのが、他人のもんになるのが、怖かっただけだろうによ」
榎木津は何も言わなかった。ただ、グラスに残った飴色の液体を玩ぶようにしながら、探偵らしくない落ち着いた様子で木場の言葉を聞いている。木場は続けるしかなかった。
「京極は、どうせ何もかも解かってんだろう? 解かっていながら、後世大事にてめえの恋人の写真を持ってたんだろう。てめえも馬鹿なら、あいつも大馬鹿だ」
やけくそだと言って、木場は水割りをいっきに飲み干した。
榎木津が笑って、「赤い豆腐は不味そうだなあ」とつまらないことを言った。それから少し黙り、少し真面目な顔に戻り、少し酒を飲んでから木場を見遣る。
「もしあいつと僕が逆の立場だったとして、千鶴さんの写真を託されたとしたら、僕は間違いなくすぐに燃やすよ」
「ひでえ男だ」木場が言うと、榎木津は僕は探偵だと言ってまた笑う。
「それが、僕とあいつの違いで、だから、一緒にいられるんだ木場修」
その声が、愛しているんだと聞こえた。
馬鹿だと、木場はあらためて思った。
探偵がではない、拝み屋でもない、そんな二人の間を気にかけた自分自身が、おおばかやろうなのだと思った。

闇は人々の混沌や憂鬱を孕んで質量を増していく。
それがやがて、大きなひとつの雫となる。
誰の心にもそれは存在し、その雫に何もかも吸い込まれ、飲み込まれ、個としての形を失っていく。
木場でさえ、自分が何者であり、隣に座る男が何者であるのか、暗闇の中で輪郭を崩していく只中では、なにひとつ掴み取ることができない。
夜は更けていく。
木場は気付く。
漆黒の鴉が今、誰がために小さく羽ばたいてみせたことを。
榎木津は知らぬふりをして、ただ小さな微笑を浮かべてみせただけだった。

<了>

2006年10月09日(月)



 ネタバレありあり

読み終わりましたよ邪魅!邪魅りまくりましたよ!
ネタバレしまくりまくりますので未読の方はご用心。そしてすべて榎京視点でヨコシマくりまくりですのでそれ以外の方はさらにご用心。

そうだな〜、やはり前作「おんもらき(漢字変換面倒)」が、読んだ方ほとんどが途中で犯人が分かってしまうという、もちろん先生がそれを設定に入れての構成であることは承知のうえで、ミステリ小説としての「誰が犯人なの〜?」というどきどきわくわく感はちょびっと少なめだったわけで、今回はどうなんだろうと興味深々でしたが、京極が謎解きをしてくれるまで私もコケシくんたち同様何が何だかちんぷんかんぷんで、最後まで「へえ〜」「ほう〜」と感心しながら楽しむことができました。
もちろん、京極に負けず劣らず榎さん大好きっこな私達(道連れ含み)にとっては、戦前榎木津が付き合っていた女性の名前が出た時点で、その「神崎」という字面は脳裏に焼きついて離れなかったでしょうから、比較的早く要注意人物も分かってしまったとは思いますが、それでも面白かったです。えらそうに言いますが、やはり京極作品サイコーだと思いました。

で、萌えポインツはたくさんあるし、皆さんが感じた箇所ではもれなく私も榎京心をくすぐられ大変だったわけですが、それにしても京極の健気さが私は切なくてたまりませんでした。
つうか、榎さんのあまりに罪作りな男っぷりに憤死しかけました。女の写真を京極に預けるなんて、なんてひどい探偵!益田からムチを借りて一発くらい引っ叩いてやりたいですよふんとにもう!無理やら関口でいいや!

でも、復員してから「返せ」って言わない辺りがニクイんですよね〜。京極の身にもなってやってよ探偵さん。
結局、榎さんに辛い思いをさせないために、自分が色んな意味で切ない思いして拝み屋しちゃったわけですからね。

まあ結果、今回は榎京バンザイ!榎京スキーバンザイ!ということで大団円ってところですか。
ちなみに、私が一番キュン死しそうになったところは、隣にいる榎さんを見上げて話す京極です。身長差、上目遣い、毛穴から黒毛和牛が出てきそうです。本当にごちそうさまでした。


あ、書き忘れ。というか今思い至った。
神崎女史が今でも榎木津に思いを寄せていたとしたら、京極は謎解きをすることで彼女を追い詰めることになるわけじゃないですか。彼女が直接手を下さなくとも、そう「思って」いたことで事件は連鎖していったわけで、じゃあその彼女を追い詰めた京極にその「思い」またの名を「独占欲」はなかったのかい?と、死んじゃう覚悟でヨコシマなことを考えてみるわけです。黒い雫が京極の中にないとは限らないわけですからね。榎京妄想のたわごとですが。

2006年10月08日(日)



 連載再開しました

自宅からネットがようやく繋がりました。二ヶ月も休止してしまった「真実の〜」13話目もアップしましたので、なんとなーくそれとなーく12話までを振り返りつつ、また続きを読んでやってくださいませね〜。

2006年10月02日(月)



 どうか

先日、私が好きなサッカー選手のひとりが母国で交通事故を起こし、潰れた右足を切断し、サッカー人生に終止符を打ちました。怪我は足だけではなく、頭蓋骨も数箇所を骨折。しばらく昏睡状態だったのですが、今は意識を取り戻し、医者とも話せるようになったみたいです。でもまだ彼は自分の右足が切断されたことを知りません。
33歳、まだ現役のストライカーだったのに辛すぎますよね。上っ面の言葉になりそうで怖いのですが、どうかこの困難を乗り切って欲しいと、心からそう思いました。

2006年09月28日(木)



 まんぷく太郎です

昨日の試合でシャビは、センタハーフ手前の自陣、50m以上ある距離からとんでもないゴールを決めたわけですが、

「僕はキャプテンにパスを出すつもりだったんだ。それなのに気の利かない空気読めないレフェリーが僕とキャプテンの間に入って愛のパスコースを邪魔するもんだから、ゴールを狙うしかなかったってわけ」

だってさ。ハイハイ、ごちそうさまでした。

2006年09月22日(金)



 ご褒美

しゃーない!今日はどんなニヤケ顔も許したる!

たまにはガッツリ、

ハグってもらえ! くそ〜幸せそうだな〜

2006年09月21日(木)



 今日は秋晴れだよ短編 9

詩人の罪


切った野菜を鍋に入れ、潰したトマトと一緒に煮詰め、パプリカ、ペッパー、塩で味をつけた上にナイフで切ったバケットを並べて蓋をする。トマトソースがパンに染み込むまでのひととき、私は気まぐれな詩人を捜す。
彼の居場所はいつも不特定だ。屋根裏にいるときもあれば、裏庭で虫を観察しているときもある。シーツにくるまっているときもあれば、近くのカフェでエスプレッソを飲んでいるときもある。
今日はうさぎ小屋の前で小さなアリエルに餌をやっていた。幼い頃、唯一の友達だったアリエルは五年前の寒い冬の日に死んだ。私は三日間彼を抱いて眠り、四日目に森に埋めた。悲しすぎてさよならは言えなかった。彼のように寡黙で、心優しくて、暖かい親友には二度と出会えないだろうと思う。涙を流しながらアリエルの森から戻った私に、門の前で待っていた詩人は言った。
「別れを悲しんではいけない。死は時間ではない。君も決してひとりではない」
その頃だった。
私は自分が詩人を愛していることを自覚した。
彼に告げると彼は何も言わずにそっぽを向いたが、出て行けとは言わなかった。

彼が私の許可もとらずに勝手に市場で買ってきてしまった生まれたてのアリエルは、スミレほどの短い耳をひくひくと動かし、詩人の手からクローバーを貰って食べている。
「食事が冷めますよ」
「見てごらん、彼が咀嚼する数だけ、この世界が薔薇色に染まっていくのがわかるだろう」
私は身を屈め、彼の頬にキスをする。
「あなたがいる世界だからこそ、アリエルは生きるために草を食べるんです」
「理屈だな」つれない言葉を吐く詩人は立ち上がり、私の隣に並ぶ。ようやく彼と同じ目線にまで背は伸びたが、彼と同じものを見ることはまだ叶いそうになかった。
二人で小さなテーブルを挟んで食事をする。
私と一緒に暮らす前、詩人は空想とアルファベットとワインだけを飲んで生活していた。金がないという理由だけではなく、ただ単純に生きるということに対し無関心であるとともに、空腹から生じる自己愛に満ちた個の欲望にさえも嫌気を差しているように見えた。
だが私は、そんな詩人を無理やり椅子に縛り付け、作った料理を食べさせた。
最初は「口に合わない」だの「時間の無駄だ」だの、まるで子供のように駄々を捏ねて私を困らせたが、今では彼好みの味もだいぶ分かるようになり、いくらか彼の舌を懐柔することに成功した。
「――午後は街に出るよ」
珍しく、詩人がそう告げた。彼が行き先を私に教えるなど珍しい。
「どなたかと約束ですか」
「約束ほど無意味で無価値なものはない」
「私もお供しましょうか」
「結構だ」詩人はぴしゃりといい、膝に置いていたふきんで口を拭いた。
「ならば私は、アリエルと散歩にでも行ってきます」
「跳ねるうさぎの後を追ったところで、君のように臍が曲がった男は不思議の国などには辿り付けない。せいぜい現実という扉が明日という怠惰を従えて待ち受けているのが関の山だ」
「ひどいことを」私が笑いながら言うと、詩人は席を立った。
「この世に存在するありとあらゆるものは何かしらの罪を背負って生きている。君は自身の罪状を聞きたくはないかね?」
私はテーブルの上で両指を重ね合わせ、「もちろん」と答えた。
「君の罪は、君の左胸の奥にある。ほらそこだ、青いブローチの下に眠ってる」
詩人はそう言うとブーツの踵をカツンと鳴らし、ドアから出て行ってしまった。私はその後ろ姿を見送り、ため息を吐いた。私の罪、それは詩人への「愛」というわけだ。懺悔など、到底できそうにない。

詩人が街から帰ってきたのは、私がベッドに入ってうとうとしている頃だった。いつものように飲んだくれてきたのかと思いきや、私の部屋の前を行過ぎる靴音は彼らしくもなく物静かだった。
ふと不安になり、私はベッドから降りて寝室のドアを開けた。足を止めた詩人が私を振り返り「起きてたのか」と呟くように言い、そして少し思案に耽った顔をすると、やがて指先をちょいちょいと動かし、私を自分の部屋へと誘った。私は一度部屋に戻りガウンを羽織ると、すぐに詩人の後を追う。彼の部屋はいつも床の木目が見えないほど詩の断片によって埋め尽くされている。私は足許に散らばった紙を拾い上げながら彼のベッドへと腰を下ろした。
詩人は窓際に立ち、まるで異国の神のように漣ほどの表情もその顔に浮かべていなかった。妙な不安が胸をよぎる。私はたまらず口を開いた。
「街で何かありましたか?」
詩人は私を振り返り、「この世界にあるべきものは、あるべきときにあるべき場所へといざなわれるものだ。私も今日、あるべき使命に従いあるべきところへ行ってきた」といつもの陽気さを雲間へ隠し終えたあとの陰気な声で言った。彼のこうした声を聞くのは、三度目のことだった。一度目はアリエルの死を私に伝えたとき、二度目は私の父親が私を捨て家を出て行ったことを知ったとき、そして今夜が三度目だった。嫌な予感は、さらに密度を増していく。
「教えてください。私に関することですか?」
詩人は一度固く口唇を引き結んだあと、目に見えぬ頑丈な錠前を開けるかのごとく、重々しい口調で言った。
「君の父上が死んだ」
私は思わず目を見開いた。「父が……」
「三日前、酒場からの帰り、湖のほとりで足を滑らせて溺れ死んだのだ。今日、街外れの墓地で葬儀があった。私はそれを見届けてきた」
私はベッドから立ち上がり、詩人へと詰め寄った。
「なぜ、今ごろ私にそれを告げるのですか?」
「知りたくはなかったか?」
私は大きく首を振った。「いいえ、私はもっと早く知りたかった。可愛そうな父、哀れな父、どれほど心細かっただろう。私が側にいてあげられたらと思うと胸が痛い。なぜ、私を父のもとへと連れて行ってくれなかったのです」
詩人は闇で縁取られた瞳で私を見つめる。月夜の下ではいつもエメラルドに輝いている彼のそれとは天と地ほどの落差があった。父を亡くした悲しみと同時に、目の前の詩人さえも私の見知らぬ何者かへと擦り返られたのではないかという恐怖が全身を襲う。
何かを取り戻し、何かを拒絶するために、私は搾り出すような声で訴えた。
「私は……父を愛してました」
「お前が口にする愛とやらがそれほどまで愚かであるというのであれば、二度と私の前でその言葉を口にするな」
詩人はそう言うと、甲高い靴音を鳴らし部屋を出て行った。取り残された私は、世界の行進に乗り遅れた浮浪者のように、ただ呆然とその場に立ち尽くした。
せめてもの慰めに父の顔を思い出そうとしたが、なぜか白い靄に覆い尽くされた男がひとり立ち尽くすだけで、懐かしい微笑みひとつ見つけ出すことができなかった。

翌朝、見つけた詩人はアリエルの隣で藁に埋まって眠っていた。
狭いうさぎ小屋で、長身を折るようにして眠る詩人は子供のようであり、昨晩の変貌が夢のようでもあった。
私は小さなアリエルを胸に抱き、詩人の肩をそっと揺さぶった。
「いつまでもこんなところ寝ていては、朝陽に笑われますよ」
詩人は僅かに寝返りをうち、邪険に私の手を振り払った。
「……好きに笑わせておけばいい。詩人など、喜劇の役者よりも滑稽な生き物であるということは万人が知っている」
「ええ、そうですね」
私がそう言うと、詩人が瞑っていた瞳を開いた。まだ昨夜の余韻を残しいくらか薄暗さを湛えてはいたが、深い緑色はいつもの彼の温もりだった。
私は手を差し伸ばし、詩人の頬に触れて言う。
「……愛してます」
「その愚かな口を閉じろと、私は昨夜言ったはずだ」
私は笑い、「そうですね」と答えた。
詩人は身体を起こし、真紅のコートについた藁を手のひらではたき落とした。私は小さなアリエルをそっと小屋の中に戻し、詩人とともに外に出た。
「今朝は赤ピーマンのムースを作ったんです」
「規則正しい朝食が必要なのは修道院の子供らくらいのものだ。今の私に必要なのは、無尽蔵に湧き出る言葉の樽と世の摂理、それに子うさぎの小さな寝息のほかにない」
「あなたも子供に違いない。世話がやける大きな子供です」
私の言葉を無視し、詩人は前方を見据えたままカツカツとブーツの底を鳴らして歩く。私もその隣に並んだ。
「……父は、苦しんだでしょうか」
「苦しんだかもしれないし、苦しまなかったかもしれない。少なくとも私は、苦しんでいればいいと思うがね」
「死ぬとは、どういうことですか」
私の問いかけに、詩人は足を止めた。
「死とは? 死とは時間ではない。記憶の遮断であり、慰めであり、開放であり、自由だ」
「ならば父はこの世を去り、神の御許へいざなわれることができるでしょうか」
「さあ、私にはわからん」
詩人は言い、再び歩き出した。私は立ち止まり、詩人の背中を見つめる。
父への愛、詩人への愛。
どちらも決して届くことはない。届かぬ想いを胸に抱き続けることが愚かというのであれば、私は誰よりも愚かで構わなかった。愛することが私の罪であるというのなら、喜んでその罰を受けよう。
それに比べれば、気付かぬふりをすることなど私には容易かった。
彼の手がアリエルの森にある湖のほとりで神の手に変化したとして、どうして彼を憎むことができようか。

私は前を行く詩人のあとを追った。
私だけが知る彼の罪。
それさえも、今は愛しい。


<了>

2006年09月20日(水)
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