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天竜



 センサー全開!

横浜から帰ってきましたよ!
もう〜〜ね、なんか巨大なテレビ観てるような感じで実感がなかなか沸かなかったですね、最初。10メートル先にキャプテンやらシャビやらカラガーがいるのがウソみたいでね。寒さも忘れてホケ〜ってなった。

試合は三段階でしたね。キャプテンがいる時間、キャプテンが交代してからの時間、スリーバックになってからの時間。
んで、キャプテンとシャビはよく話してましたね〜。ハーフタイムでホイッスル待ちのときもそうだし、三点目が入ったあともそうだし。手の動きから守備に関してのことだと思ったんですけど、あれなんですかね、ハーフタイムのとき、ラファからもう一点入ったらキャプテン交代というのはプランとして言われていたのかもしれませんね。思わずそのときだけはスタジアムの巨大スクリーンを食い入るように見ちゃいましたよ(笑)

なんか試合レポになっちゃうけど、二点目のキャプテンのミドルシュートは本当にすごかった。センターハーフ付近から右サイドに走り込んで両手挙げてボール呼び込んでドフリーでボレー。なんかね、シュートするその足の動きがスローモーションに見えましたもの。ほんとに。さんまさんの三十倍は感動した。間違いない。

シャビは相変わらず。右足にキャプテンセンサーついてるね。攻撃的なパスの七割八割がキャプテンにいく。それからピッチを隅から隅まですごくよく見てる。試合中、あんなに周囲を見渡す選手は他にいないんじゃないかな〜って思うくらい。

もう〜大満足!試合後にやるせなすの石井ちゃんに会ったことを今思い出したくらい(笑)そうそういたんですよ。思い出した。

あと最後に、ラファのお父様が亡くなられたそう。大会が終わるまで帰国はしないと言ってるらしいんですけど、心中を思うと胸が痛いですね。ファイナルは喪章をつけて黙祷から始まるかもしれません。ぜひとも優勝して、メダルとカップ、お父様のために持ち帰って欲しいところですね。

2005年12月16日(金)



 イラッシャーイ!

キャプテンもシャビも無事来日。



そしてすぐに記者会見。

腹減ったな〜。

はい、すぐになにか食べさせてあげてください。


疲れたな〜。

はいはい、すぐにベッドとシャビを用意してあげてください。

2005年12月12日(月)



 サッカルーな(要注意)ふたり


「ねーねーマークぅ、日本の首都って知ってる〜?」「……」

ワールドカップ組み分け決まりましたね。日本はブラジル、オーストラリア、クロアチアと同組。オーストラリアは↑のふたりが要注意人物。可愛さあまっての心境ですがな。

2005年12月10日(土)



 かんぺき

ラファがシャビとキャプテンがどれだけ仲が良いのかということを力説している合間にこんばんは。うんうん、ラファはよく分かってる。さすが知将、ヨ、大将!
同ポジションでいがみ合っても仕方ない状況であるにもかかわらず、互いを尊敬し、信じあってプレーしているから完璧なんだそうだ。

さて、そんな二人が揃って来週トヨタカップで来日予定です。楽しみですね。チケットも有休もホテルもとった天竜さんも完璧です監督!ほめてください監督!その代償として、今週は死ぬほど仕事してきます監督!

2005年12月07日(水)



 「本気」と書いて「ほんき」と読む

さて皆さん、ご自宅、会社のカレンダーはもう捲りましたか? 昨日から12月、本当に早いもんですね〜。

小説の方は、ようやくどうだろうな、3分の2くらいは書けたのかな、残り100枚弱、1日3枚書けば1ヶ月で書き終わるはずなんだけどな〜。終わる気がまったくしないのはなんでだろうな〜。
以前、マトリョーシカをアップしたときに皆さんにも駄目出しをしていただいたのですが、その辺りをね、やっぱり自分の中で克服していきたいという気持ちがすごくあるんですよね。

そうだ、うん、もうここで言っておかないと途中で挫けそうなので言っておこう。
今回の小説で、天竜さんの本気を見せますヨ!


……あ、なんだろう、この言ったあとの不安感。
ポストに手紙を投函したあとの心許なさに似てるじゃないですか。でも頑張ります。頑張りますよー。

2005年12月02日(金)



 カナシイサミシイサビシイ

「シツモンしてもいいデスカ? あのね、サミシイとサビシイとは意味がチガウんですか? おんなじ? じゃあ、ほかにはどんな言葉がアリますか? カナシイ? カナシイ…。カナシイとサミシイはおんなじ? 少しチガウ? どこがチガイますか?」

という来日まもない外国人の女の子に質問攻めにあった知り合いが困った顔で私に助けを求めてきましたが、「切ない」を表現できる外来語を教えてくれたら説明しちゃるとさらにその知り合いを追い詰めてみる天竜さんですこんにちは。
誰か説明できる方がいたら教えてやってくださいポルトガル語で。

昨日は長崎のカステラを食べました。

2005年11月30日(水)



 あしたの話

私がサッカーにうつつを抜かしている間に、以前言っていたヤッフウの文学賞が発表になってましたね。思い切り落ちてましたが、いろんなところから落ちなれている私には、お尻に青あざができるくらいへのへのかっぱです。

んなわけで、落選作品を載せるのも気が引けるのですが、もしお時間のある方は読んでやってくださいませ。共通テーマは「あした」でした。読みにくくてごめんなさい。


世界が終わるそのときに

晴天の霹靂とは、多分こういうことを言うのだろう。俺はハローワークの帰りに立ち寄った蕎麦屋でざるそばを啜りながら、カウンターの上に設置してある小さなテレビを凝視した。映し出されているのは、現在支持率が七ヶ月連続で落下の一途を辿っている内閣総理大臣の蒼白した顔だった。彼が日本国民に向かって呼びかける。
「皆さん、一週間後の十月十日に、地球は滅亡します」
俺はとりあえず唇からぶらさがっていたそば数本をずるずると吸い上げた。窓の隙間から入り込む秋風に煽られて、割り箸の袋がテーブルの上を滑っていく。
「……そりゃあまた、えらいこったな」
俺はテレビ画面をぼんやり眺めながら、他人事のようにそう呟いていた。

「信さんはさあ、怖くないの? 二十四時間後にはなくなっちゃうんだよ、地球」
目の前では、公園のゴミ箱から拾い集めてきた雑誌や新聞紙、枯葉や小枝などを燃やしてつくった焚き火の炎が揺れている。十月九日、秋の気配も濃くなり、夜ともなれば薄手のセーター一枚では肌寒いくらいだ。俺は手に持っていた細い小枝を炎の中に投げ落としながら答えた。「そりゃ怖いっちゃあ怖いけど、じたばたしたところでどうにもならんだろ」俺がそう言うと、タケ坊は不服そうに唇を尖らせた。白いパーカーのフードを頭からすっぽり被っているが、その横顔からは幼さと怯えが覗いている。歳はまだ十七、八といったところだろうか。
「さすがに年の功、肝が据わってますね。僕なんてもうちびっちゃいそうですよ」
横合いから口を出したのは黒ちゃんだ。黒ちゃんは全身に余すところなく張り付いた贅肉を揺らしながら、ウフフと笑う。彼は世界滅亡のニュースが世界中を駆け抜けたその瞬間まで引き篭もりだったらしい。俺は苦笑しながら黒ちゃんの方を向いた。
「肝なんて据わっちゃいないさ。ただ、俺には他の人よりこの世に未練がねえんだな多分」
「未練?」タケ坊が訊く。俺は「ああそうだ」と言って、頷いてみせる。
「俺な、半年前にリストラされたんだよ会社から。それが原因で女房も子供も愛想付かして実家に帰っちまって。こんな状況になっても電話一本よこしゃしない。まあ、ケータイもほとんど繋がらんから仕方ないのかもしれないけどな」
総理大臣のあの衝撃的な記者会見により、日本中は大混乱に陥った。それはもう、見るも無残な有様だった。残されたたった七日間の生命の猶予。人間は本性を剥き出しにした。恐怖というのはこれほどまでに人としての品格や理性、そして秩序を失わせるものかと、半ばあきれ、半ば憤怒さえ覚えた。だがそんな俺も、恐怖という魔物に取り付かれたひとりではある。こうして公園の真ん中で焚き火をし、行き場のない仲間たちとくだらないお喋りをする。ひとりでは抱えきれない孤独や怯えをまぎらわそうとしている。皆もまた、同じなのだろう。ここにいるのは、タケ坊と黒ちゃんと俺、そしてもうひとり、さきほどから少し離れた場所で一升瓶を抱えているジジイの四人だ。ジジイは、この公園で寝泊りしている浮浪者らしい。真っ白な頭髪を靡かせ、歯が抜けてしわくちゃになった唇をもごもごと動かしながらひたすら酒を呷っている。名前もわからないので、俺たちは勝手にジジイと呼んでいる。
「ジジイ、寒くねえか?」俺が声を掛けると、ジジイは虚ろな瞳をわずかに瞬かせたが、それ以上何の反応も示さなかった。彼は明日世界が滅亡することを、もしかしたら知らないのかもしれない。その方が幸せなのかなと、俺はぼんやりと思った。
パチパチと小枝が鳴り、火の粉が舞い散る。タケ坊が溜め息をついて、組み合わせた手の上に細い顎を乗せる。黒ちゃんは腕を伸ばし、コンビニから失敬してきたスナック菓子の袋を開ける。俺はただ黙って、煙草を一本咥えた。
明日、とうとう地球が滅亡する。実感がわかない。テレビ局もラジオ局もインターネットも、今は何の役にも立たない。新幹線も飛行機もバスもタクシーも走らない。俺が子供の頃は、こんな生活が日常だった。寒ければ火を焚いて、人と人とが身を寄せ合って生活をしていた。無邪気な子供時代だった。まさか四十年後、未来という言葉と同じ輝きを持って迎えられた新世紀に、こんな事態が訪れるなどといったい誰が予想し得ただろう。
「信さん、泣いてんの?」そっと声を掛けてきたのはタケ坊だった。俺はいつの間にか目尻にたまっていた涙を手の甲で無造作に拭い去り、えへへとバツ悪く笑った。「未練がないとか言っておいて、ざまあねえな」短くなった煙草が指先で燻っている。タケ坊は「そんなことねえよ」と言い、黒ちゃんは「泣けるだけ幸せですよ」と笑った。
愛する人と手を握り合って死ねる人は幸せだ。愛する家族とともに死ねる人は幸せだ。誰かに死なないでと縋られるのも幸せだ。あなただけは生き延びてと言える相手がいるのも幸せだ。だが残念ながらここにいる四人には、そんな人生最期の幸福も訪れそうにない。 ジジイがいびきをかき始めた。眠ったまま何もわからないうちに死ねるのも幸せか? 俺は自分に問いかけ、ちょっと幸せだろうなとひとり答えを出してみた。
俺はごろりとその場に横になり、秋の澄んだ夜空を見上げた。どこまでも続く高い高い天空。この向こうには数え切れないほどの星が存在する。地球という星のひとつが消滅したところで、宇宙は何の痛痒も感じない。ましてやそこに住まうちっぽけな人間の命など無きに等しきものだろう。何のために生まれてきたのか。人間に与えられた不変なるテーマ。その答えが、明日我々のもとに返ってくる。小学校で習う数式よりももっと簡単な、決して間違えることのないただひとつの解答が、我々人類のもとへと突きつけられる。俺は下からタケ坊の顔を見上げ、そしてスナック菓子を頬張る黒ちゃんの顔を見つめた。「……なあ、お前らの幸せだった頃の話をしてくれよ」俺が言うとタケ坊は「はあ?」と気の抜けた声を出し、黒ちゃんは動かしていた口をぴたりと止めた。
「聞きてえんだよ。最期くらい、暗い話なんかやめてさ、気分よく逝きたいじゃねえか」俺が催促すると、黒ちゃんが口をへの字に曲げて言った。「僕なんてね、小学生のときから引き篭もりですもん。楽しい思い出なんて少しもないですよ」
俺が「じゃあ幼稚園の頃の話を聞かせてくれよ」と言うと、黒ちゃんは助けを求めるようにタケ坊の顔を見つめた。タケ坊は鼻を鳴らし、「俺だって六日前までネンショウにいたんだぜ。わかる? 俺、喧嘩して相手殴って半殺しにしたの。楽しい思い出なんかいっこもねえよ」と拗ねた口調で答えた。俺は挫けず「お前だって生まれたときから不良だったわけじゃないだろう。だったら不良になる前の話をしてくれよ」とタケ坊にねだった。黒ちゃんもタケ坊も、俺のしつこさに辟易した顔をしている。そんな二人の顰め面を見ていると、なんだか可笑しさが込み上げてきた。俺がワハハと笑うと、「なんだよオヤジ。言い出しっぺのくせに笑ってんじゃねえよ」と言いながらタケ坊も黒ちゃんも笑い始めた。結局そんなものなのかもしれない。
俺が幸せだったころは、幸せだったという事実に気付かなかった。仕事から帰ると妻がいて、反抗期の娘がいて、野球バカの息子がいた。当たり前のことだった。なくしてから気付くなんて流行歌の歌詞みたいだけれど、本当にその通りだなと明日死ぬ身になって思い知る。三人の顔がよみがえった。どの顔も、幸せそうに微笑んでいてくれた。
と、そのときだった。すぐ近くで甲高い悲鳴が聞こえた。女性のものだった。俺たちはギクリと肩を竦めたあと、互いに視線を交し合った。二人の目が「厄介事はごめんだ」と訴えかける。俺の脳裏には、先ほどまで回想していた娘の笑顔がこびりついていた。俺はゆっくりと腰を持ち上げた。悲鳴が聞こえた方向は闇に包まれており、飛行機の形をしたジャングルジムの姿がうっすらと月光に浮かび上がっているだけだ。俺は二人と眠ったジジイを残し、声がした方角へと歩き出す。怖さはあまり感じない。ジャングルジムの下を抜け、木々の間を縫って進んだ。
「誰かいるのかあ」間延びした声で呼びかけた。すると、「きゃっ!」という短い悲鳴が返ってきた。目を凝らすと、そこにひとりの女が蹲っていた。俺の顔を見上げ、恐怖に慄いた表情をしてがたがたと震えている。歳は二十七、八くらいだろうか。上下揃いのスーツ姿で、髪を潔いほど短くカットしている。俺はできるだけ彼女に刺激を与えないよう、語り掛けるような口調で言った。「おい、大丈夫か。なにかあったのか?」
その女性は小刻みに首をふってから、喋る代わりにゆっくりとある方向へと指をさし示した。俺は小さく溜め息をつき、「見るんじゃないよ」と言った。
彼女が指差した先にあるものは、木の幹からぶらさがる大小四つの死体だ。一家揃っての首吊り自殺だろう。どうせ死ぬのであれば子供たちを苦しまずに死なせてあげたいと願った両親のエゴか、狂った家族の結末か、俺にはわからない。いまだ震え続ける彼女の二の腕を掴み、ほとんど強引といってもいい力で俺は彼女の身体を持ち上げた。
「俺は武内信夫。あんた、名前は?」俺が名乗ると、彼女も小さく口を動かした。「……サチ、池野サチ」「サチってどんな字書くんだ?」俺が続けて訊くと、彼女は幸せの「幸」だと答えた。俺が歩き出すと、サチも慌てたようにあとをついてきた。行き場のない集団にもうひとり加わったところで、誰も文句は言わないだろう。
焚き火のところまで戻ると、俺はタケ坊と黒ちゃんに彼女を紹介した。「サチさんだ」「僕は黒田って言います。黒田睦月」何を慌てたのか、黒ちゃんは口に入っていたスナック菓子を撒き散らしながら言った。タケ坊は不服そうな顔をして黙りこくった。代わりに俺が、「こいつはタケ坊」と顎をしゃくった。そして彼女が、自殺した家族の死体を見て驚いたらしいことを二人に説明した。
「しかし、どうしてこんな場所に来たんですか? 誰かご家族とか、ご友人とか、その、恋人とか、あなたのこと探していませんか?」黒ちゃんが続けざまに質問をぶつける。サチは何も答えようとしなかった。頑なな横顔が彼女の意志の強さを感じさせる。
「まあいいじゃねえか、これも何かの縁だ。サチさん、好きなだけっつっても時間は限られてるが、ゆっくりしていくといい。食べ物もあるし、毛布もある」
「……ありがとうございます」サチがか細い声で言った。
タケ坊はふてくされた顔をして膝を抱え、黒ちゃんは興味津々といった眼差しでサチを舐め回すように見つめている。ジジイは変わらず気持ちよさそうに惰眠を貪っている。俺は燃え続ける焚き火の中に破いた新聞紙と、何本かの木枝を投げ入れた。ボワっと一瞬にして火勢が増したが、すぐに炎は落ち着きを取り戻した。
俺は腕時計を見る。午後十一時を少し回っていた。明日までもう一時間を切っている。明日の何時、地球が滅亡するのかそれはわからない。午前零時かもしれないし、午後十一時五十九分かもしれない。だが、どちらにしろタイムリミットはあと僅かに違いない。
そのとき、俺の腹がぐうっと鳴った。こんなときでも、人間の胃袋というのは律儀に空腹を訴えてくる。俺は腕を伸ばし、背後に置いてあった買い物袋を引っ張り寄せた。中からお買得用のソーセージを取り出し、竹串にそのソーセージを三つ四つ突き刺して焚き火の炎に近づけた。しばらくすると、肉の焼けるいい匂いが辺りに漂い出す。
「信さん、俺も食いたい」今まで黙りこくっていたタケ坊がそう言って子供のように腕を伸ばす。俺は笑って、焼けたソーセージをタケ坊に渡す。すると今度は黒ちゃんがうらやましそうな視線をこちらに向けてきた。俺は続けてソーセージを焼くと、それを黒ちゃんにやった。次に焼きあがったものは、紙皿の上に乗せてサチの前に置いた。「うまいぞ」そう声を掛けてみたが、サチは抱えた自分の膝に額を押し当て僅かに首を振るだけだった。それでもいい。人生の最期の迎え方など、個人個人が勝手に決めればいいことだ。
俺は今度こそ自分が食べる分のソーセージを焼き、てらてらと脂が浮いてきたのを見計らって思い切りかぶりついた。カプっと皮が破れ、同時にじゅわっと口の中に肉汁が溢れ出す。ハフハフと息をしながら、俺は熱々のソーセージを噛み切った。咀嚼し肉片を飲み込んだあと「うまいなあ……」と独り言のように呟いていた。こんなものはスーパーに行けば百円玉二つ三つで簡単に手に入る。しかしこんなにおいしいと感じたことは今までになかった。タケ坊も黒ちゃんもあっという間に平らげてしまった。サチは泣いているのだろうか。細い肩が震えている。皿に置いたソーセージから、白い湯気が一筋立ち昇る。
「そういや、さっき話の途中だったな」俺が言うと、タケ坊が「もういいよ、そんなもん」とつまらなそうに言って、食べ終わったソーセージの竹串をぽいっと火の中に投げ込んだ。「まあそう言うな。今度は俺が話すから」俺はあぐらをかいて、星空を見上げた。東京の夜空にも、今は僅かながら星が煌いている。綺麗だなと、俺は素直にそう思った。
「明日地球がなくなっちまうなんてさ、いまだに信じられないけど、こうやって思った以上に冷静にいられる自分が、なんか嬉しいよ。幸せだなって思う。この六日間で、まあ、人並みにいろんなこと考えたけど、悪くないかなって思うんだ」
すると、黒ちゃんが「僕もですよ」と小さな声で言った。「僕も最期にこうやって普通に人と話が出来てよかったです。部屋に引き篭もったまま、家族のお荷物になって死ぬより、思う存分お菓子食べて、信さんやタケ君と話せて、僕は嬉しかったです」
今度はタケ坊が舌打ちして言った。「俺はどうせ生きてたって前科者のろくでなしだから、清々するよ。これで、ようやく清々する」
俺は笑った。黒ちゃんもウフフと笑った。タケ坊も自嘲めいた笑みを浮かべている。そのとき、いつの間にか顔を上げていたサチが、俺たちに訴えかけるような口調で言った。「わたしは、そんなふうに割り切れない。あなたたちのように死ねない。まだやらなくちゃいけないことがたくさんあったのに……」彼女の頬に、涙がひとすじ伝い落ちる。俺も、タケ坊も、黒ちゃんも、思わず顔を見合わせた。悲痛な声は続く。「仕事だって順調だったの。新しいプロジェクトを任されて、女性初のチームリーダーだったの。さあこれからってときに、どうしてこんな目に合わなくちゃいけないのよ」
俺が言葉を探している間に、タケ坊が先に口を開いた。「あんたさ、寂しい人だよね」 サチが唇を噛み締め、タケ坊をきつく睨みつけた。焚き火の明かり照らされ、涙に濡れた彼女の頬がオレンジ色に染まる。俺はそんな二人の様子を黙って見守ることにした。タケ坊はさらに言葉を続ける。「女なら、好きな男のこととか、そういうことで未練残せよ。仕事に未練タラタラなんて、ぜんぜん可愛くないね」
十歳も年下の男に「可愛くない」と言われる女性の心理はわからないが、サチがはっきりと顔を強張らせる様子は傍目からでもよくわかった。
「言い過ぎですよ、タケ君。サチさんにだって、サチさんの人生があるんだから」黒ちゃんが慌ててフォローを入れたが、彼女の耳には届いていないようだった。サチはタケ坊のまだ少年の幼さが残る顔を凝視し、唇を小さく動かした。「あなたに……わたしの気持ちなんてわからないわよ。仕事に生きなくちゃならない、わたしの気持ちなんてわかるはずないんだから……」タケ坊は珍しく彼女の言い分に固執した。「ああ、わからねえな。年増女の惨めさなんて、俺にはちっとも理解できないね」
黒ちゃんではないが、さすがにタケ坊の言葉はきつ過ぎる。物には言い方というものがある。タケ坊の言葉は、故意に相手を傷付けるためのものだ。俺が二人の間に割り入ろうと口を開きかけたそのとき、座っていたサチがその場にすっくと立ち上がった。両手をぎゅっと握り締め、一度口を大きく開くと、突如耳を劈くような声で絶叫した。ワーとか、キャーとか、アアーとか、オオーとか、すべてを混ぜ合わせたかのような、言葉にならない叫び声だった。その雄叫びは尾を引くように長く長く続いた。断末魔の叫びそのままに、人間の根源を揺さぶるような、胸の奥底を抉るような、人生すべての悲しみと絶望をよみがえらせるような、そんな叫び声だった。
響き渡ったサチの絶叫は、やがて余韻を残して夜空に吸い取られていく。
タケ坊はあまり表情を変えず、自分の膝に下顎を乗せてじっとしている。黒ちゃんは両目を大きく見開き、小鼻を広げている。俺は黙って、新しい煙草を咥えた。サチは肩で大きく息をしてから、俺たちに向かって言った。
「わたし、子供が産めないの。だから仕事しかなかったの。あなた達が言う通り、わたしは女としての価値もない、寂しい人間なのよ。そんなこと自分が一番よく分かってたの」 沈黙が続いた。サチは再びその場にしゃがみこみ、手近にあった小枝を炎の中へと投げ入れた。火の粉が舞う。炎が揺れる。皆の顔が赤く照らし出される。
どれだけ時間が経ったのだろう。サチが涙でぐちゃぐちゃになった顔を俺たちに見せ、そして悔しそうに言った。「ああ、もう、叫んだらなんかすっきりしちゃったじゃないの」微笑んだその顔は、固い蕾から芽吹く花弁のように、とても可憐に見えた。多分、彼女の笑顔を見た俺も、タケ坊も、黒ちゃんもきっと、そのとき同じことを考えたはずだ。ああ、この娘を死なせたくないなあ――って。
ジジイは相変わらず居眠り、いびきをかいている。世界の終焉。明日を失った俺たちは、それでもこうやって最期の一秒まで生き続けている。幸せだなあって、不幸だなあって、バカなことを考えて、それでも明日が来ることを望んでいる。
俺は夜空を見上げた。腕時計の針は、てっぺんで重なり合おうとしていた。目を閉じる。 明日は晴れるかな。そんなことを俺は、のんきに思ったりしたんだっけ。
瞼に浮かぶいつかの澄んだ青空を――俺は、俺たちは、きっと忘れない。


2005年11月28日(月)



 ぎりぎり間に合ったかな

今日はシャビの誕生日。
サッカーサイトでもないのにお祝いページ作っちった。

お暇な方はどうぞ。

2005年11月25日(金)



 お尻オチ

さて、今日から負け犬人生突入の天竜さんですこんにちは。昨日ね〜誕生日だったんですよ。祝われても素直に喜べない年齢ですが、小説を書き続けられている今がちょっぴり幸せです。シャビが御用達のツナ缶を買うくらいに幸せです。

実は週末、わたくし寝込んでおりまして。風邪とかそんな可愛らしいものではなく、朝、寝ぼけて階段から転がり落ちました。ええ、そりゃもう新喜劇ばりの勢いでごろごろと。
背中とお尻を強打して、もう〜ね、ほんとに痛いのなんのって。二日目にはロボットダンス踊れるくらい身体がカクカクしちゃって大変でした。
今日で四日目かな、だいぶ痛みも引いてきましたが、お尻に青タンできました。ハリーのセクハラより、キャプテンのバチコーイより、アタイのお尻が一番大変でしたという話。

天竜さんはいたって元気です。

2005年11月22日(火)



 HGならぬSG

バチコーイ!!

ってキャプテン、いいよ、調子の上がらないFW二人だったからいいよ。これがもしシャビの右足だったらワンキックワンボールでど真ん中撃ち抜かれますよ。
いろんな意味で、イギリスに戻る飛行機の中で歯痒い思いをしている男の姿が目に浮かぶようよ。

2005年11月18日(金)
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