天国から地獄へ - 2004年03月17日(水) ・・・こんなタイトル書くと 「プライベートで何かあったのでは!?」 なんて下世話な想像をされたあなた!! 違いますよ。 幸せです♪ (←バカ) 昨日サー・コリン・デイヴィスの指揮するロンドン交響楽団(LSO)の コンサートを聴きに行った。 素晴らしかった。 こうしてしょっちゅうコンサートに行っている私だけど 考えてみれば去年の秋、ケント・ナガノ指揮のベルリン・ドイツ交響楽団を 聴きに行って以来、 外来の超一流オーケストラのコンサートを聴きに行くのは久しぶりだ。 今まで何回となく聴いているLSOだけど やっぱりプロフェッショナル中のプロフェッショナル集団だなあ、 と感じ入りました。 そしてサー・コリンもまた名匠中の名匠だな、と。 さらにピアノは掛け値なし、現代最高のピアニストの一人、 内田光子さん。 これで悪かろうハズがない。 果たして最高のご馳走を食べたような気分です。 サー・コリンはもう75歳にもなるのだろうか? 情熱的な指揮は全然変わらず、 でも音楽作品の「かたち」を大事に、決して崩れることがないので 安心してその音楽を楽しめた。 なにより品格があった。 あ、ところで曲目は シベリウスの交響詩「タピオラ」、 モーツァルトのピアノ協奏曲第22番、 そしてベートーヴェンの第8交響曲。 特に内田さんが弾いたモーツァルトの協奏曲が ピアニストも指揮者もオーケストラも天国で遊んでいるような 自由闊達な演奏で、なんだか夢のようだった。(世紀の名演だと思う!!) で、満場のお客さんの盛大な、幸せな拍手の後、(もちろん私もね。) 内田さんはアンコールを弾いた。 シューベルトの「楽興の時」第2番。 私はそれまでの天国的幸せ気分から、 一気に荒涼とした絶望に叩き落された気がした。 いや、こう書くと演奏が悪かった、とかそう受け取られそうですが それはそういう意味では全くなくて シューベルトの音楽が「こういう」音楽なのだ、 ということを目の前に突きつけられて、私は驚愕した。 心の底から冷え切った。 なんという悲しい音楽。 底知れない悲しみを超えて、救いのない絶望だけが静かに鳴っている ひたすら美しい音楽。 美しいことがどうしてこんなに絶望へと結びついていくのか。 シューベルトは「僕は楽しい音楽などというものは聴いたことがない。」 と言ったそうだが この時ほど、こんなにまでこの言葉をリアルに伝える演奏もあるまい、と思った。 モーツァルトとシューベルトは 汲めども汲めども湧き上がってくるメロディーとか 色々共通するところの多い天才作曲家だと思うが、 内田さんは、その2人の大きな違いを見せつけてくれた。 正直、あんな愛の溢れる幸せなモーツァルトの後に (つくづくサー・コリンという巨匠は健康的で寛大な人格の持ち主なのだろうな、と思う。) ああいうシューベルトを聴いて (あんなシューベルトは他にルプーやシフ、ブレンデルくらいしか弾けないのではあるまいか。) 良かったのかどうか、私にはわからない。 というか、ちょっと寂しさと怒りと喜びがないまぜになって 自分でもワケのわからない気分になった。 ... 機内プログラム - 2004年03月16日(火) 札幌の行き返りの飛行機で 色々な機内プログラムを聴いた。 私はフライト中でもやっぱり音楽を聴くのが好きで (とはいえ、最近は機内ショッピングカタログを見るのがそれ以上に好きだったりする。) 特にポップスを聴く。 最近のヒット曲で聴いてなかった曲を聴いて 「いいなー!」と思ったり 「なーんだ。」とガッカリしたり。 かつて機内でなにげなく『One more time One more chance』を聴いて 山崎まさよしの大ファンになった前歴もある。 で今回良かったのは一青拗(字がでなーい!)の『ハナミズキ』。 それからクラシックにチャンネルを回してみれば 今月はスペイン特集で アルヘンタ指揮ロンドン交響楽団のリムスキー=コルサコフ『スペイン奇想曲』なんかすごく良かった。 この曲、かれこれ10年くらいは聴いてなかったんじゃないか? 魅力的な曲です。 それからかの、20世紀最大のチェリスト、パブロ・カザルスが マールボロ音楽祭でオーケストラを指揮した バッハの『ブランデンブルク協奏曲第4番』。 これに驚いた。 何に驚いたのかといえば、その演奏スタイル。 多分、多くの人がそう思うと思うのだが カザルスくらい昔の人がバッハを演奏する、といえば イメージとして、 重々しく、ロマンティックに歌い上げるような演奏を想像するのではあるまいか。 (彼の有名な『無伴奏チェロ組曲』がそういう演奏ですしね。) ところが、全然違う。 テンポは速め、ひとつひとつのフレージングはハッキリと区切られ 細かいアーティキュレーション(音楽上の活舌みたいなもの) で徹底されている。 そしてとっても生き生きと、エネルギーにあふれている。 要するに、今、バッハをはじめとするバロック音楽の演奏スタイルの主流となった 「時代的演奏スタイル」に近いのだ。 (↑ これを説明するのはまた難しいのだが、古楽器のオーケストラだとか、そうだ、こないだ書いたベルリン・バロック・ゾリステンなんかもこういうシャキシャキとしたスタイル。) 古楽器を演奏するように、ビブラートを抑制したり、 そういうことはしていないまでも、かなり近い。 やはり超一流の演奏家というものは 時代の風潮にまったく染まらない、ということはないまでも 徹底して作品を研究して、極限まで考え抜き演奏を練磨することで その結果到達するところは、どんな時代でもある程度共通するものになる、 ものらしい。 このカザルスのバッハは改めてそう思わせてくれた。 そんなこんなで機内チャンネルって 私には結構楽しみなワケなのです。 ...
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