海洋堂クロニクル

食玩(お菓子のおまけ)のチョコエッグでその名を世間に轟かせることになった海洋堂の歴史を追いかけたノンフィクション。元々プラモデル屋だった海洋堂に様々な才能が結集して,やがて爆発に至る過程が描かれている。海洋堂はガレージキット(少数しか作られないクォリティも価格も高価なプラモデルのようなもの)の製作販売をメインにしてきた会社であり,筆者はガレージキット業界の人間(らしい)。ときには感嘆しときには反発し,ある一定のパッションを保ちながら近くから海洋堂を見つめている。本人によれば,金子達仁のサッカーノンフィクションに影響されたとのこと。

綴られる物語もまた破天荒なのだが,それによりも山ほど掲載されている海洋堂作品の質の高さには正直驚いてしまう。写真を多数使ったせいで(?)本の価格が高いのがたまにきずだが,ボリュームたっぷり,本当に海洋堂を満喫した気になる一冊。
2003年11月23日(日)

裁判長 ここは懲役4年でどうすか

北尾トロの裁判傍聴記。といっても特定の事件をおいかけているわけではなく「裁判傍聴」をひとつの趣味として,いろんな事件を膨張しまくった記録である。これがまためっぽう面白い。普通のオヤジの普通の事件もあれば,救いようの無い事件,オウムのような大事件,様々な事件があり,筆者は被告に同情したり,元鉱区に感情移入したり,女性検察官に萌えたり(けっこう美人が多いとか)しながら,事件の概要をつづっていく。

社会科見学で痴漢の裁判を女子高生の集団が傍聴していると,検察も裁判官も大張りきりになったり,傍聴を趣味として何十年も続けている「傍聴マニア」の存在が明らかになったり,ヤクザの事件の傍聴にいって怖かったり,いやまあオモシロすぎです。「ビギナー」ファンの人はぜひどうぞ。
2003年11月20日(木)

科学書をめぐる100の冒険

私がこよなく愛する「本の雑誌」は,あらゆる分野のオモシロ本を紹介してくれるのだけど,文系スピリットにあふれる本なので,唯一科学モノに関して空白がありました。ところが1年程前?に私の尊敬する進化論科学者佐倉統をホストにして,コラムニスト田端到が様々な科学書について話を聞くという連載が始まり,それを一冊にまとめたのがこの本でありまーす。

科学書には解説書から読み物や暴露モノまで範囲は広いのだけど,比較的マジメ本を中心に取り上げられている感じですね。けっこう読んでいるつもりだったけど,まだまだ面白そうな本がたくさんあるってことを知ることができて(科学書はどマイナーな出版社から出ることがあって,なかなか目に触れないし),また楽しみが増えたというところですか。
2003年11月10日(月)

ファイナルファンタジーXI プレイ日記 ヴァナ・ディール滞在記

ファイナルファンタジーXIは,スクウェア・エニックスの開発したPS2用のロープレであり,なによりゲーム機用としては国内初の大規模なオンラインRPGであーる。プレイ日記というのは,プレイ中に起きたことを日々綴った日記で,Webを探すとけっこう大きなジャンルになっている。

著者の永田泰大は「ゲームの話をしよう」シリーズを書いた人で,ゲームのオモシロさ楽しさを伝えることにかけては天才的なところがある。ファイナルファンタジーXIを始めようと決意してから,実際に始めるまでの長い長い道のりがオープニングとなるんだけど,それだけでもう楽しいもんね。またこの人はゲームにのめりこむタイプではない(つまりゲーマーではない)ので,これがまたほのぼのしていてヨイ。

読むと絶対にファイナルファンタジーXIを遊びたくなるという危険な本ですな。
2003年10月15日(水)

陰陽寮(6)(7)

日本一のリーダビリティ作家富樫倫太郎の「陰陽寮」シリーズもとうとう7巻まで来ました。しかし読み出したら止まらないのは相変わらず。けっこう厚いノベルスなのに,ほんの数日で読み切ってしまう。

平安時代の「刀伊」と呼ばれる異国の兵団と,安倍晴明を中心とする平安の人々との戦いがメインの物語だけど,とにかくわんさか出てくるキャラがどれもこれも濃すぎるのが特徴ですね。"神の罰"を受けて千年の間不死となった一族,死から蘇った始皇帝の使者除福,盗賊,浮浪児,超能力者シヴァ,陰陽師の面々,そして安倍晴明。さらに政争にあけくれる平安貴族たちがからんで,いったい話はどこに行くのか。まったく。
2003年10月10日(金)

漢字と日本人

高島 俊男。文春新書。ワタシの尊敬する増井俊之さんのサイト(http://pitecan.com/)でほめられていたのですぐ買って読む。ミーハー。しかし,これは驚くべき本であった。漢字の成立と現状についていかに自分が無知であるかがよーく分かる本。

漢字は日本語が文字を持っていない時期(つまりコトバだけで成立していた時期)に今で言う中国から入ってきた。当時の日本語は具象的なものを指すコトバはあったが,抽象的な概念をさすコトバはなかった。ところが漢字がはいってきて,そこには当然抽象的な概念を指す単語がたくさんあったため,日本語は自分で進化することを止めて,それらを使うようになった。

うーん。これだけでも驚くでしょ? その他にもはじめて知ることがヤマとあります。びっくり。
2003年10月01日(水)

おかしな男

うーむ。このあたりで読んだんだと思うので,適当な日付で書いておきます。小林信彦の「おかしな男」。渥美清の実像に迫るノンフィクション。ハードカバーで出版されたとき,中森明夫が「悪魔の筆の冴え」と言っていたけど本当だよなあ。渥美清をめぐるあらゆるヴェールを引き剥がして,「ホンモノ」の渥美清に迫っています。

後年の渥美清は「寅さん」のイメージが本人のものとなってしまい,なんかいい人っぽく語られることが多いが,友人を作らず,他人の芸に厳しく,強面の一面を持つ"実像"を,様々なエピソードを積み重ねて明らかにしていく。これは小林信彦と渥美清に個人的な付き合い(友人ではないらしい)があったからこそ可能なのでしょうね。ま,なんにせよ小林信彦の書くものは面白い。
2003年09月20日(土)

マルドゥック・スクランブル [排気]

SF美少女ダークアクションのシリーズもこれで完結。2巻の後半からカジノシーンになって,これが3巻の前半まで延々続くので,「カジノSFと化してエンディングか!」と思いましたが,後半は本筋に戻りました。よかった。でもあとから思うと,カジノのシーンがマルドゥック・スクランブルシリーズのクライマックスなんですね。最後はちょっと惰性っぽいような。
2003年09月12日(金)

お笑い男の星座2

浅草キッドの「お笑い 男の星座2」を読む。最強に笑える。水道橋博士の文章の面白さはホームページの日記でも証明済みだが,こうして一冊の本で読むとますます面白いね。特に笑えるのが,ダチョウ倶楽部の寺門ジモンの話ですな。何十年も欠かさずトレーニングをして,ヒクソンよりも誰よりも強いと自負する男の魂の叫びを読めー。
2003年07月24日(木)

だからWinMXはやめられない

WinMXを始めて,ずぶずぶとのめりこんでいく過程を綴ったノンフィクション。これって犯罪のドキュメンタリーだよなあ。

WinMXはP2Pのファイル交換ツールだけど,日本の村社会に合わせて独自進化を遂げている。「ファイル公開するけど,許可するまでダウンロードさせない」機能(0パッチとか言うらしい)が重要視されていて,自分の欲しいファイルをDLするには,代わりに相手の望むファイルを与えたり,IM(1対1のチャット)で許可をもらったりする必要がある。このためWinMXのネットワークは日本的というか非常に閉塞的になっていたりする。

筆者はこのWinMX業界?で,ひたすら地位向上を目指し,レアファイルを集め,レアな非公開ピアに参加し,レアな人脈を作っていく。目的のようなものはあるけれど(アニメの××のファイルが欲しいとか),きっとこの人にとってはどうでもいいんだろうね。WinMX空間の中での自分の位置だけが目的になってしまっている。で,ここで行われていることはおそらく犯罪なので,犯罪者ファミリーの中での地位を追い求めてもなあ..と,ちょっとむなしい読後感が残るのでありました。
2003年07月20日(日)

ま2の本日記 / ま2