と学会年鑑BLUE

2002年のと学会の活動と,2002年度大賞の選考の様子が納められた一冊。今後と学会本はこの方向なのかな。まあ,トンデモ本のストックがなくなっちゃうから,あとは会員個人の芸に頼っていくしかないかも。といいつつトンデモのネタが一向に尽きないのがおかしい。

注目としては「奇跡の詩人」日木流奈クンと,「白装束」パナウェーブ研究所を(世間よりはやく)取り上げているところかな。この本とは関係ないけれど,2chの山本弘スレはけっこう笑えます。
2003年04月25日(金)

シャロウ・グレイブズ

ああ,またディヴァーを読んでしまった..

ロケハンする人ジョン・ペラム・シリーズの第一作らしい。昔の作品をリライトしたものだとかで,反則炸裂のディーヴァー節はおとなしめ。それでも面白いのはこの人の人物造形力がすぐれているから?

あるアメリカの田舎町にロケハンのためにおとずれたペラムたちをなぜか次々とトラブルが襲うというストーリー。映画ときいて,浮足立つ町の人々,丁寧だけど非協力的な警察,シンプルだけどやはり面白い。三作まででているらしいので,ゆっくり読むことにしよう。
2003年03月24日(月)

進化論の挑戦

私の大好きな科学ライター佐倉統の本。
進化論の本は最近わりと多めに読んでいるんだけど,この本は優生学との対比などを通じて,進化論の立場を明確にしている点が素晴らしいです。そして,進化論の新しい流れである,社会進化論や,進化認識学などのトピックが問題点も含めて分かりやすくまとめられていて,なんかこれを読むとイッパシの専門家になった気がしますな。進化論なんて古い学問かと思ったけれど,これを夜半とまさに最新のホットな学問だということがよーく分かるです。
2003年03月14日(金)

死の蔵書

だいぶ前に奥さんが読んでいて「面白かった?」と聞いたら「そうでもない」と言ったので,読まないでいた本。なんか書評を読んだり,評判を聞いたりすると,どうにもこれはオレ向きの本ではないかと思いなおして読んでみた。

いやー面白いではないの。古書業界を舞台にしたミステリで,コアになるミステリ部分にあっと驚くトリックがあるわけではないけれど,伏線の張りかたやミスディレクションがうまいね。最近の海外ミステリに多いタイプだと思う。でもこの小説を面白くしているのはなんといっても古書業界の面白さでしょうね。キングがやたら人気があるのに主人公が不満に思うところとか,安い本の中から「当たり」を探す掘り出し屋のキャラとか,古書店主の面々とか,「場所」と「人」が生き生きとしていますね。だから伏線も効いてくるわけじゃな。
2003年03月11日(火)

奇妙な論理 I/II

マーチン・ガードナーの「奇妙な論理」が,なぜかハヤカワからでていたので思わず回直してまた読む。いやー相変わらず面白いわ。これは50年ほど前に書かれた疑似科学の批判本で,いわば「トンデモ本の世界」のルーツみたいなもの。ここで批判されているのは,インキチ医学(カルトを含む),UFO,超能力,未発見の新エネルギー,相対論批判,進化論批判などで,恐ろしいほど今と変わっていない。やってるやつのメンタリティも,だまされる側の行動パターンもまるで同じ。人間はなぜ科学に対してここまで愚かになれるのだろうか。

マーチン・ガードナーはすぐれた科学解説者なので,文章が明晰で分かりやすく,豊富な資料に基づいて疑似科学を批判している。ときどきこういう本を読んで頭を「クリア」にしとかないとね。
2003年02月26日(水)

青い虚空

例によって読んだ日を忘れたので,適当な日付に突っ込んでおきます。
「ボーン・コレクター」のジェフリー・ディーヴァーの本。ハッカーものということで読んでみた。

敵は悪質なハッカーで,これに対するはハッカー行為で牢屋にブチこまれていたおじさん。敵ハッカーの捜査に協力することを約束させられて,牢屋からでてきます。敵ハッカーの得意技は「社会工学」ってやつで,他人に成り済ますことです。現代社会ではIDとか電子メールとか証明書とかなんでも電子化されているので,このへんをハックすると他人に成り済ますことができます。昔のルパンの変装みたいなものだよね。どんな人間にもなれるなんて反則じゃんと思ったものだが,社会工学を駆使するハッカーってまさにその反則的存在なわけです。しかもディーヴァーって作家は反則すれすれ(あるいはそのもの)技が大好きと来ていますから,登場人物のみならず読者まで「こいつはハッカーが化けているんじゃ」と疑心暗鬼の固まりとなって読み進めることになります。

リーダビリティは抜群。反則でもなんでも面白ければいいというディヴァー節炸裂でございます。
2003年02月23日(日)

火怨 (上・下)

蝦夷(といっても北海道ではなく,いまの東北地方)の英雄阿弖流為(アテルイ)の一生を描いた,血湧き肉躍る小説でごわす。いやー燃える。ときは平安,野蛮人と軽蔑されてきた蝦夷の地に黄金が出土して,朝廷は蝦夷征伐に乗り出します。これに立ち向かうのが,若きリーダー阿弖流為を頂点とする蝦夷の将たち。最初から男泣きシーン続出で(ってオレは泣かなかったが),分厚い文庫二冊があっちゅーまに読めてしまいます。
2003年02月17日(月)

謎のギャラリー 怖い話

いつ読んだか忘れたので適当な日付で書いておく。
北村薫のアンソロジーで,確かハードカバーでは北村薫の解説兼エッセイみたいのが一冊と作品集一冊の二本立てだったような気がするけど,文庫になって四本立てに増加。テーマ別に分かれました。巻末には宮部みゆきとの対談付き。

冒頭の南辛坊のマンガ(?)がいいですね。奇妙な味で,読んだ覚えがあるがどこで読んだかは忘れてしまった。そして,北村薫の好きな「理由のない悪意」モノがいくつかあって,これはちょっと疲れますな。いわゆるモダンホラー的なものも1つだけ入ってました。けっこう怖い。しかし,なんといっても凄いのは巻末の乙一の短編でしょう。恐るべき完成度なんだけど,なんとこれは少年ジャンプ(!)の懸賞の応募作で,当時乙一は16歳だったとか。天才か。
2003年01月15日(水)

コラムは踊る

いや「誘う」だったか?「笑う」だったか。小林信彦のこのコラムシリーズは題名が似ていて困ってしまう。1995年ごろのコラムをまとめたもの。いま読むと小林信彦の「予言」があたったかどうか分かるからちょうどヨイ。タイミングよく文庫になったところだし(ということは新刊がハードカバーででたのですね)。

・爆笑問題を死ぬほど誉めている
・SMAPを死ぬほど誉めている

という2つが目立った。SMAPはそれほど誉めるものかなあ。「いい人」のツヨシ君の演技まで誉めなくていいと思ったですよ。爆笑問題に対する見立ては正しかったようですね。あとがきで「誉めすぎ」と自分で言ってますが。まあ,このコラムシリーズは小林信彦のジジイ芸なので,ただ読むべし。
2003年01月05日(日)

エンディミオンの覚醒

いやあ,とうとう読み終わりました。大部の"ハイペリオン"シリーズも「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」「エンディミオン」と続いて「エンディミオンの覚醒」でついに完結。

オムニバス形式であたかもSF小説展示場の様相を呈していたハイペリオン二部作に対して,エンディミオン二部作はアイネイアーとパクスの対決をじっくりと描いています。「覚醒」では逃げるロール・エンディミオンと追うパクスという構図で,このSF史上に残るダメ主人公のロールが逃げ回ります。"教える者"として覚醒したアイネイアーの意図とは? アイネイアーの秘密,パクスの秘密,"コア"の秘密,様々な謎が解けていくプロセスは圧巻ですが,長すぎてなんだか謎がどんなんだったか忘れてしまったものもたくさんありますな。ハイペリオンで解決済みの謎を無理やりひっくり返している部分があるのでよけいに混乱するし。

とはいえ,これだけ長くて面白い物語はそうそう読めるものではありません。ハードカバーで全四巻,文庫本で全八巻。まったく飽きることの無いエンターテインメントでありました。
2002年12月28日(土)

ま2の本日記 / ま2