無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年04月14日(土) 土曜ワイド「女三人露天風呂殺人事件・湯煙の向こうに殺意が見えた」……ってウソだからね。

 連休第1日目。
 休みだというのに目覚めたのは6時。女房じゃないが、打ち上げだって言うんで緊張してるんだろうか。
 夕べからの部屋の片付け、まだ全然終わっていないので、午前中はそれにかかりっきり。本を積み上げ、床を広げて、女房が掃除機をかける、その繰り返し。
 昼前には二人ともすっかりくたびれ果てた。
 ……出かける前に疲れてどうするんだろうね。
 女房は仮眠、私は風呂に入ってひと休憩。……って、今から温泉行くのに(^_^;)。

 実は朝の時点で、どこに行くのか知らなかったりする。
 幹事は女房と鴉丸嬢の二人なのだが、初め私は金欠病で参加しないつもりでいたからだ。給料取りが情けない話であるが、来月東京行きが控えているので、そうそう散財は出来んのである。
 で、結局、今日は鴉丸嬢と女房のおごり。
 ……って、女房がおごってちゃ節約にならんやんか。

 2時にJR吉塚駅で待ち合わせ。
 女房と私は15分ほど早く着いたが、よしひと嬢もじきに到着。髪をバッサリ切られていたが、何かあったのだろうか……うーん、発想がオヤジ。
 ともあれ、元気そうで何より。何しろ会うのはほぼ一月半ぶりである。
 「台本進んでる?」と聞くと、
 「てへへ(はあと)」と笑われる。おいおい。
 一応シノプシスは膨らんだようだが、キャラ設定は詳しくなったものの、ストーリーはまだまだ人間どうしの葛藤が描かれてなくて、ドラマとしては弱い。完成までにはもうしばらく時間がかかりそうである。
 20分ほど遅れて鴉丸嬢も合流。黒のブラウス、タイトスカートで、黒づくめ。一瞬「魔女」かと思った……って失礼な。家から駅まで数キロ歩いてきたそうで、そりゃ遅れるわな。帰りが遅くなることを土壇場で思い出したそうで、この子も相当あわてものである。

 あわてものといえば、今回の打ち上げ、参加者はこの四人だけである。
 なんでも女房が「14日はどうかなあ」と鴉丸嬢に問い合わせた次の電話で、もう「宴会場の予約取ったよ!」と他のメンバーの事情も聞かずに即決しちゃったそうなのである。
 おかげで殆どのメンバーが「仕事で」「お金が」等の理由で欠席。
 塩浦嬢は直前まで参加予定であったが、「大学の単位が」とドタキャン。
 こうなるともう一回くらい第2次打ち上げを企画せねばならんのではないかな。

 篠栗駅から送迎バスに乗って、「レイクサイドホテル久山」というところに向かう。なんだか豪勢だなあ。私ゃてっきりケチ臭い女房のことだから、どこぞのしもた屋みたいな温泉宿に行くのかと思ってたが。
 ……つげ義春かい。
 風呂が24種類もあるというのがウリだそうで、女房もその数に惹かれたらしい。
 送迎バスの中で既にみんなのテンション、相当高くなっている。
 鴉丸嬢は、昨日、職場で「明日温泉でしょ? がんばってね!」と激励されて来たそうな。温泉で何をがんばるのか。
 女房は買ったばかりのデジカメを撮りまくる。例の事故の示談金でこっそり買っていたのだ。……以前も事故でお金をもらったことがあるそうで、これじゃホントに当たり屋である。
 「あぶく銭で買ったカメラ〜♪」
 と女房は踊っているが、なんだか人間が間違ってるぞ。

 ホテル到着、腹は減っていたがまずは風呂へ。
 入口のところで、鴉丸嬢に「ここからはお別れよ」と言われる。誰も覗きはしないっちゅ〜のに。どうしてみんな私を中年スケベ親父のように言うかな。……中年だからか。ぐすぐす(T_T)。

 内風呂はなんの変哲もなく、そう広くもなくあまり面白くない。
 早々に露天風呂の方に行く。
 ●岩風呂……そう広いというほどでもないし、景色も悪い。というか回りが建物で何も見えない。「レイクサイド」って、湖はどこだ。女湯側か? 温度はぬるめで冬場は寒そう。
 ●石菖(しょうぶ)サウナ……要するに菖蒲湯のサウナ版。匂いがよく、これはなかなかよかった。ログハウス形式にしたのは日本初だそうだが、別に初だからどうしたってものでもないよな。
 ●檜湯……京都大学の丹羽ハカセが発見したSGES石(SUPER GROUTH ENERGY STONE)というモノを使用しているそうである。うわあ、スゲエ眉唾。って言うか、絶対にバチモン。
 温泉宿のこういう効能はたいていウソというのが常識だろうが、それにしても「京都」の「丹羽」ってのが芸がなさ過ぎ(……そう言や、『仮面ライダーV3』のブラック将軍役の俳優さんに「丹羽又三郎」っていたよな。……ありゃ「ニワ」か)。しかも「スーパー・グロウス・エナジー・ストーン」だなんて、そのあと「メイク・アーップ!」ってつけたら巨大化しそうで怖いわ。
 もしやと思って帰宅してから「京都大学」と「丹羽」で「GOOGLE」に検索かけたけど、案の定、引っかかったのはこの温泉の記事だけでした。
 ●真珠風呂……看板に楊貴妃の絵が書いてあって、「浮いているのは真珠の粉末です」とあるが、どんなに目を凝らして、湯を掬ってみても、粉らしいものは全く見えない。でももしかしたらしょーじきものにしか見えない粉なのかもしれない(^^)。
 湯は乳白色で、何となくスーパーで買った「なんとかの湯の元」である。……ホントに入れてんじゃねーのか。
 ●薬湯……福岡の温泉センター、たいていこの薬湯があるのだが、卸売りの業者でもいるのか。謎の薬草をナップザックみたいな袋に詰めたモノを湯船に浮かせているのだが、色はどす黒い緑色で、匂いは腐ったお茶っ葉にそっくり。
 5分も浸かっていると、皮膚の薄いところがヒリヒリしてくるが、薬が効いているのか、それとも単に傷口にカラシ塗ってるのと同じようなものなのか。
 あとで聞いたら、よしひと嬢、全身が痛くなったそうである。
 女房も事前にちゃんと教えてやればいいのに、コロッと忘れていたそうである。ひでえなあ。
 ●打たせ湯……しょっちゅう肩が凝っているので、気持ちがいい。……最近、女房は肩揉んだり、腰をほぐしたりしてくれなくなったものなあ。グスグス、と感慨に浸る。
 ●ワイン風呂……って、女風呂のほうにしかないんだと。男性差別か。
 ●洞窟風呂……これも男湯の方には見当たらなかったぞ。男はどうでもいいのか。くそ。

 なんだかんだで、1時間ほど入っていたが、女房たちは1時間40分も入っていた。……ワイン風呂が気にいったかな。
 待ちぼうけの間、ロビーで天藤真の『星を拾う男たち』を読む。でも初めの短編二本しか読めず。
 どうも旅行などに本を持って行く癖が昔から抜けない。
 女房からは「一緒にいて楽しくないの?」と散々怒られているが、単に活字中毒なだけなんだってば。

 風呂あがりに食事、私は炒醤麺(じゃーじゃーめん)を頼む。値段は700円で高過ぎ。量からいっても400円でペイするはずだ。よしひと嬢が食べたことがないというので、少し分ける。辛味を抑えてあるのでまあまあイケル味だったのではないか。
 よしひと嬢はジャワカレー、鴉丸嬢は炒飯、女房は坦々麺。みんな一律700円である。……だって他のメニューは全部千円以上なのだもの。

 そのあとよしひと嬢はくたびれて仮眠、残りはもう一度風呂に入って、7時にホテルを出る。
 宴会は9時からなので、それまで香椎のゲーセンで暇つぶし。
 「右脳テスト」なんてのがあるので、みんなでやるが、ボタンの押し方が分らず、最悪の結果。女房にも負けてしまったが、雪辱戦を果たそうと意気込むのもなんだよなあ。でも「推理力ナシ」とデータに書かれるのもちょっと腹立つな。
 伊勢エビキャッチャーがあったのでやってみたかったが、女房が「万が一取れたら、どうやって持って帰るんだよ!」と怒ってやらせてくれない。
 ……本当は生きてるエビが怖いくせに。

 仕事が終わった其ノ他君と合流して、やっと五人。
 宴会は香椎の「米米」という居酒屋。3500円で飲み放題のフルコースである。
 肉や脂ものが苦手で酒も飲めない其ノ他君、ネバネバ系がダメでマグロの刺身のとろろかけが食べられないよしひと嬢、で、私も酒がダメなものだから、酒ばかり飲むヤツと食いちらかすヤツとに必然的に分かれる。
 女性陣のピッチが上がること上がること、鴉丸嬢、あっという間に出来あがる。
 其ノ他君、ほんのひと月ほど会ってないうちにすっかりたくましくなっている。ガテンな仕事してるせいだろうなあ、力コブが本気で凄い。
 「それならもう女の子に間違えられないですむねえ」と言おうとしたら、
 「この間も男にナンパされちゃって」と、フォローのしようがないことを言う。……美少年と言うものもこれでなかなかツライものがあるような。
 「櫃まぶし、食べたことないんすよ、食べたいんですけどねえ」
 と言うので、
 「1500円するよ」
 て言ったら、
 「たけえ〜!」
 と悲鳴。だってうなぎなんだもの。でもいつかご馳走してあげたいものだ。
 其ノ他君とばかり喋っているので、鴉丸嬢が焼きもちを焼く。ああ、若いっていいなあ。
 台本の話も少しするが、キャスト不足が深刻で頭を痛める。この分だと私も出演せざるを得なくなるが、相手役が女房以外の女性になった場合、女房のジェラシーが怖い。
 「大丈夫だよ、芝居の最中は焼きもちなんか焼かないから」
 と本人は言うのだが、
 「ウチではどうなんだよ?」
 と聞くと、
 「焼きもち焼くのは夫婦のサービス(はあと)」
 と軽く言ってくれる。そんなんマクドナルドのスマイル0円以上に要らんわ。
 フルコースのメニューは焼き鳥各種、豚肉の卵とじ、生野菜のサラダの山盛り、手巻き寿司など。飲み放題を考えると、まあなかなか安い方であった。鴉丸嬢に感謝。

 そのあと、カラオケ「KARAPARA」になだれこみ、午前1時までみんなで熱唱。ホントはここで藤田君も参加の予定であったが、ちかくにまで来ていながら、「駐車代金がない」ことに気付き、帰っちゃったのだのだそうな。……バカだなあ。
 帰りがけ、其ノ他君はまた気分が悪そうにしてたが、大丈夫だったろうか。こちらもぶっくたびれていたのであまり気にかける余裕がなかった、申し訳ない。

 よしひと嬢もお連れして、ウチに帰りついたのが午前2時。
 女房もよしひと嬢も、そのままバタンキューと寝入ってしまったが、私はまだメール書きや前日の日記書きで寝られない。結局寝たのが午前4時。明日が休日でよかったなあ。


2001年04月13日(金) ファイティング・スイーパー/『こち亀』124巻(秋本治)

 昨晩、2時ごろまで寝つけなかったので、女房に「朝になったら起こしてくれ」と頼んで眠る。
 ところが、朝目覚めてみると、もう7時。女房のやろう、またもやぐごが、うおあ、げびびぶーと高いびき。……昨日あれだけ寝ていて、またなんでこんなに眠れるのだ。
 慌ててタクシーを拾って職場に駆け込み、ぎりぎりセーフ。うわあまた散財。
 帰宅して「頼ンどいたのになんで起こしてくれないんだよっ!」と文句を言うと、「ダメって言ったよォ!」と言い返してくる。そんなん聞いた覚えがない。女房が心の中で言っただけか、私が頼んだ直後に落ちたかのどちらかであろう。
 女房がよく私の事を「3秒で寝る男」と呼ぶが、実際、私は目を閉じた一瞬で落ちてしまうこともザラだ。で、夢を見ないときなどは、自分の感覚では目を開けた一秒後にはもう朝になっているので、睡眠と言うより失神に近いように思う。
 ずっと子供の頃はどちらかというと寝つきが悪いほうだと思っていたのだが、いつから私はこんなになったのだろうか。体調的なものもあるかもしれないが、何となく心理的な作用のようにも思える。
 現実逃避の願望が強いのかなあ、と思っていたら、今朝見た夢は、「ピーター・セラーズが来日して、ドサ回りのスタンダップ芸を見せる」というものだった。
 どこかの地下の小さな小劇場なので客は百人もいない。その中の一人として私は、パーティグッズのヒゲメガネをつけたセラーズがタキシード姿で手品を披露しているのを眺めているのである。
 「セラーズはとうに死んでるし、これは夢だな。しかし、セラーズほどのヒトをこんな場末で働かせる夢を見るなんて、俺はなんてひどいやつなんだ」……と、夢の中の私は考えているのである。
 じゃあ夢の中の私の意識がはっきりしているのかというとそうではなく、「この夢、何度見たかなあ」と、今日初めて見た夢なのにそんなことを考えているのだ。
 ……居たたまれなくなって目が覚めたら7時、ということだったのだから、セラーズのおかげで遅刻せずにすんだのかな。

 帰宅して昨日の日記を書こうとすると、「今日こそ部屋を片付けてよ!」と女房がうるさい。
 私は買った本のカバーは必ずつけておくことにしているので、そのままだと何の本だか分らない。それで表紙に筆でタイトルを書いておくのだが、未整理の本が溜まっていたので、それを書いていくだけで時間がかかる。
 「私が書いてあげようか?」と女房がねだるような視線をこちらに向けるが、言下に「ダメ」と断る。
 女房の字は小学校低学年並のへたくそさで、それでもまあなんとか読めなくはないのだが、問題なのは徹底的に字配りができない、ということである。何度か表書きを頼んだことがあるのだが、最初にどでかく書くものだから最後はジリ貧で、作者の名前を書けないことも多かったのだ。
 なんとかタイトルを書き終わって、大きさごとに並べる。で、あとは本棚に並べたいところなのだが、既にウチには、本棚を置くスペース自体がない。つまりあとは床やテープルの上に平積みしていくだけである。
 ……片付けとは言わんわな。数年後にはどうしたって別に部屋を借りるか購入せざるを得ないが、女房はやたらと「ロフトつき」の部屋に拘っている。……本の収納にまるで向いとらんやないか。



 ウチの劇団のHPに、ようやくよしひと嬢とハカセ嬢の二人のプロフィールが新規で載った。

 よしひと嬢、ここしばらく体調を崩したりしていて、とんと音沙汰がなかったので心配していたのだが、どうやら元気になったようで、ホッとする。
 何と言っても演劇集団 P.P.Produceのマドンナであり、天照大神であらせられるお方だ。このまま天岩戸にお篭りのままでは、メンバー内の士気にも関わるところであった。これでようやく次の芝居の準備にとりかかれる目途が立つというものである。
 それにしても、昔からそうだったが、初対面でよしひと嬢の魅力にコロリと参る男どものいかに多いことか。AIQの某氏もよしひと嬢を称賛されていたし、ウチのメンバーの某君も、今回のプロフィールの中のコメントで、優しい言葉をかけられて有頂天になっている。
 ……でもねえ、よしひとさんはねえ、まあ、なんちゅーか、音無響子さんだし、天道かすみお姉さんだからねえ。……大変っスよ、これは(←何がだ)。

 ハカセの芸名もどうやら「桜穂希」と決まったようなので、これからは「穂希嬢」と表記することにする。「桜嬢」だと「桜雅嬢」と似ていて紛らわしいからね。でも多分劇団内部では「ハカセ」と呼ばれつづけるように思うけど。
 ……しかし、このプロフィール、ネコかぶってやがるなあ。こないだペラペラ喋りまくってた○○○○○○○○○○の話なんかはどうなったのだ。

 マンガ、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』124、巻読む。
 いや、別に全巻買っているわけじゃないぞ。時々気まぐれで買っているのだ。
 それにしても、四半世紀の間に秋本さんの絵柄も随分変わった。……実のところその変化が、進歩ではなく退行しているように思われるのが残念なのだが。
 麗子やマリアのバストは初登場時に比べて2倍はでかい超巨乳になっているが、こんなんセクシーでもなんでもない。デッサン狂ってんじゃないか、こいつ、と思われるのがオチである。全体的にキャラクターがどんどん記号化しているのが、読んでいてつらい。
 骨太で、今読み返すと劇画チックで読みにくかったかつての絵柄のほうが、キャラクターに命を通わせていたように思えてならない。

 夜になっても部屋の片付けはまだまだ終わらない。
 しかし、9時を過ぎた頃には猛烈な睡魔に襲われる。どうにも我慢しきれずにきゅう、と寝たところに、福岡シンフォニック合唱団のUさんから電話。
 うわあ、しまった。先週、映画にお誘いしていたのをけろっと忘れていた。てっきりお怒りの電話かと思ったら、Uさんも約束をすっかり忘れていたのであった(^_^;)。
 でもまあ、こちらがミスった事実に変わりはない。寝惚けた頭で必死に謝るが、向こうも夜中に電話してきて申し訳なかったと始終謝りっぱなしである。
 「どうもすみません」
 「こちらこそすみません」
 「いえそんな、こちらこそすみません」
 「いえいえそんなそんなこちらこそすみませんったらすみません」

 ……下手な落語じゃあるまいし、何を謝罪合戦してるんだろうなあ(^_^;)。


2001年04月12日(木) 驚天動地/『ストレート・チェイサー』(西澤保彦)ほか

 『國文学』5月号、今回はメディア特集。
 佐伯順子という人が、波津彬子『天主物語』をとりあげて、少女マンガの「花と女性のコンビネーションによる視覚的相乗効果」についてやたら述べているが、なんだか三十年か四十年くらい前の古臭い少女マンガ論を読まされているようで、ああ、活字の人ってのはやっぱりこんなふうに世間とズレていくのだなあ、とシミジミ思った。
 今時の少女漫画はめったに花をしょわせたりはしない。むしろ花を描くことを恥ずかしがるマンガ家も多いくらいである。波津さんだって、『雨柳堂』の方ではそんなに画面に花を散らしたりはしていない。
 『天主物語』に花がやたらと散るのは、原作が泉鏡花であり、古臭さを演出するためなんだってことに、この佐伯ってヒト、気付いてないんだなあ。

 週末、よしひと嬢がお泊まりされるかも、ということなので、数日前から「本を片付けてよ」と言われているのだが、肝心の寝部屋で女房がぐーすかぴーと昼寝をしているのである。
 夜になったら起きるかと待っていても全然起きない。結局、今日は片付けが何も出来なかった。……部屋が散らかってたら女房のせいですので、よしひとさん、許してください。

 さて、夕食をどうしようかと、冷蔵庫の中身を物色しに台所に行くと、珍しくも女房がおかずを作り置きしていた。
 エビのチリソースに餃子、いか明太。なぜにこんな豪勢なマネを、と思ったが、肝心の女房が高いびきなので、ワケも聞けない。ともかく腹が減っていたので、食うことにしたが、さすがに量が多いので、エビチリは半分残す。
 居間に戻って、パソコンの前に座り、ふとワキを見ると、フレンチトーストまで置いてある。なんでこんなにサービスいいんだ、なにか機嫌のよくなることでもあったのか、と首を傾げるが、どうせ理由を聞いても話すまいなあ、という気がしてきたので、構わずつまみ食いしながらパソコンに向かう。
 エロの冒険者さんのホームページは毎日必ず読むようにしているのだが、掲示板に最近妙な「荒らし」が多くなっていてちょっと心配である。
 「ここをクリックしてね」と描いてあるアドレスから、どうやらエロサイトに行けるらしいが、そんなん誰が覗いてやるかい。
 「荒らし」の主の名前は変えているが、多分殆どが同一人物の仕業であろう。ホームページの品格を落としてやろうという意図なのだろうが、他のコンテンツを見れば、すぐにエロさんのHPがごくまともなところだと判明する。「荒らし」のやってることはほとんど無意味だと思うんだが、なぜこうもシツコク続けてるんだろうか。

 「モーニング娘。」の新番組、『モー。たいへんでした』、だら―っと見る。未だに全員の顔と名前が一致しないが、それでも今世紀最初のコミックバンドとして、私は「モー娘。」を評価しているのである。いやマジで。
 この見事なくらいに脳みそ空っぽな少女たちを使って、全く無意味な楽曲を立て続けに繰り出してくるつんくのプロデュース能力は、やはり称賛に値する。
 素人を使って笑いをとる方法は、欽ちゃんファミリー、おにゃんこクラブと来て、現在のもー娘。に至る文脈の中で語ることが可能なのだが、日本の音楽シーンでは、そこんとこをきちんと評価してるんだろうか。

 西澤保彦『ストレート・チェイサー』読む。
 このところ忙しくて、マンガは読めても活字本を一冊読み切ることが難しかったのだが、これはまたトンデモナイミステリに当たってしまったものだ。
 推理もののネタバラシはご法度なので、上手く説明しにくいのだが(この辺が「公開」を前提とした日記のツライところだよなあ)、これはもう読者間に賛否両論を起こすことを作者が意図しているとしか思えないトリックを創案している。
 舞台はアメリカ。
 とあるレスビアンバーで二人の女性と知りあったリンズィは、“トリプル交換殺人”を持ちかけられる。冗談で「上司のタナカを殺して」と頼んだリンズィは、翌日、本当にタナカが自宅で殺されたと知らされて、驚愕する。
 しかも現場は二重に鍵のかかった“密室”であり、更に奇妙なことには、中で死んでいたのはタナカではなく、全く別人の東洋人であった……。
 ……初めの展開はまさしく正統的な本格ミステリなんだよね。でも『少女の時間』や『SF JAPAN』の対談でやたら奇抜な作品を書いている作家さんであると紹介されていたし、文庫のオビに「感動の最終行があなたを待つ」なんて書いてあったので、さて、いったいどんな驚天動地のトリックをし掛けてくるものやら、と期待して読んだんですがね……。
 うん、こりゃ確かに“問題作”だわ(^_^;)。
 多分、読者の中にはあたかも『エヴァ』最終回を見た時の人々のように、「ざけんじゃねーぞ、バーロー!」と、本を床に叩き付ける向きもあるのでないか。
 というか、ごく一般的な推理小説ファンであるなら、このトリックは、特に「密室トリック」については、「許せない」と感じて当然だからである。
 どんなトリックかって? だからそれは書けないんだってば。
 で、隔靴掻痒な文章になることを承知で、私の感想を書くとすると、これが実に微妙な言い回しになっちゃうのだが、「認めるが弁護はしない」としか言いようがないのだ。
 この密室トリックについての「アンフェア」論争は必然的に起きると思われるが、少なくともアンフェアではない。ただ、これがアンフェアでないことが理解できるのはよほどのミステリマニアでなくては無理で、なんと解説の加藤朋子さんですら、このトリックが“どういう意味を持っているか”気付いてはいないのだ。なぜ、この小説がアメリカを舞台にしなければならなかったのか、その点に触れなきゃ解説にはならんのだがねえ。
 しかし、その“意味”に気付いたからと言って、このトリックが評価できるかというとそうではなくて、やはり「それがどうした」と怒り出す読者も多いに違いないのだ。アンフェアではなくても、これはとてつもなく“インケツ”なトリックだからだ。
 そして、このインケツトリックが更にオビにもあった“最終行”のトリックの伏線になっている。さすがにこいつはインケツな小説だな、と気付いたおかげで、ラストのトリックは見破れたが、畢竟、私は複雑な思いに見舞われた。
 この作者、まっとうなミステリを書く実力はあるのである。それは、トリックの「仕掛け方」を分析すればはっきり証明できる。しかし、まず断定として構わないと思うが――作者は「まっとうなミステリ」などを書くつもりはサラサラないのだ。作者は読者と「知恵比べ」をしようとは思っていない。ただ、読者を「引っ掛けたい」だけなのだ。
 いや、確かに私も、ミステリ読んでて久しぶりにトリックに引っかかりましたよ。でもね、心地よい引っかかり方じゃないんですよ。たとえアンフェアではなくても、こういうインケツを仕掛けねばならないほど、ミステリというジャンル自体が行き詰まっていることを証明しちゃってるんだもんねえ。
 ……でもこういうインケツなトリックなら、私も今まで書いた戯曲の中で使ったことあるんだよなあ。
 いじいじ。

 夜中、そろそろ寝ようか、という頃になって、女房やっと目覚めて来る。今日は仕事がなかったらしい。
 「……あ―っ、私のパンがない!!」
 なんだ、お前のだったか。すまんすまん、外に出してあったから、私へのかと思っちゃったよ。
 ……こりゃ、しばらくはネチネチネチネチと、この件で責めたてられるな。そのことが気がかりで、寝つけずについ夜更かし。……明日ちゃんと起きられるのだろうか。



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藤原敬之(ふじわら・けいし)