ただ、貴方の事を考えると、泣きたくなる。
私は元々の性格から、色んな事をそのまんまに受け止めやすく出来ていて、
例えば。誰かに「好き」と言われると、その人と同じだけの気持ちで 応えることも出来ないくせに、拒絶せずにただ受け止めてしまう。
私の、良い所であり、悪い所なんだと思う。
そんな自分が悲しくて、ほんの少し自己嫌悪して、彼に何度もせがんでしまった。 わざわざ「好き」って言って欲しくて、電話で何度も言わせてしまって。 同じ台詞でも、貴方の言葉は胸が詰まる。きゅんと、苦しくなる。 それが嬉しくて。苦しくて。嬉しくて。気持ちが良い。
私が何体でもコピーできるのなら、欲しい人にいくらでもあげるのに。 身体なんて。容れ物だもの。…欲しがる人がコピーで良いなら、だけど。
そんなふうに恋の奈落になって人を落とし込んでいる自分に落胆して、 それでも貴方を想うとき、貴方にだけは、この胸も脳も応える幸せに、 嬉しくて泣きたくなる。でも、涙は出なくって、私は、 貴方の涙の素直さに、やっぱり泣きたくなってしまう。
貴方だけが、こうして私を動かし続けてくれたら良いと思う。
貴方と、ずっとは一緒に居られない。
それは、どんなに幸せでも、どんなに貴方が想ってくれていても、 私が貴方を想っても、いつも胸のどこかに佇む思い。
多分どちらかが先に死ぬのでしょう。
花の咲く季節か、緑の濃い季節か、葉の落ちる季節か、雪の降る季節か。
どうしてかしら。
貴方に手紙を書くと、いつも私の個人データを含んだ遺書みたいになる。 貴方と居ると、最後の最期に消えてしまうこの身体のことばかり 考えてしまう。だから気持ちは残るように、文字ばかり連ねてしまう。
だけど。私は全然嫌じゃない。 貴方と私を分かつものが、そういう理由であるなら嬉しい。
貴方が、私の言った言葉を覚えていてくれて、頭を撫でてくれたのが 嬉しかった。ぎこちない手つきで、思い出したように頭に触れた。 もしも、貴方が先に居なくなったなら、私はそれを思い出しましょう。 貴方は、私が先に居なくなったら、私の何を思い出してくれるのでしょうか。
思い出せる事が増えるように、どちらかが眠ってしまうまで、 胸の抽斗に、空気のような、何かを詰めて居たいのです。 一人になったなら、その遺品を取り出して元気になってくれたら嬉しい。
黒く澱んだ私の胸。
多分誰かに後ろ指さされて、ただ誰かに石を投げられても 私のとなりで笑うと言う。貴方の愛を誇りに思う。
子供の頃、いじめられて高学年の女子に何度も石を投げられた。 けれど、相手にしても余計にエスカレートする事を想像して ただ致命的な場所にさえ当たらなければ良しとして もくもく、下を向いて帰路を進んだ。
だから私のランドセルはぼこぼこで、黄色い帽子は灰色になった。
子供の私は独りだったから。
あの頃、貴方が居たのなら、きっと私は大人しくなんかなくて、 下も向かず、多分一緒に笑って、金属バット握って、 投げられる石をノックして返したんだろう。二人で笑っただろうな。 きっと、冷めない子供になっただろう。
打ち返す打球が誰にも当たらなければ良いんだ。投げられても。
闇に沈んでも、私は図太いから平気。 石が当たっても、黄色い帽子が灰色になっても、私は大丈夫。 独りならとても強いから。
だけど、今となりに貴方が居るなら、 下を向かずに、耐えずに金属バットを手にとるよ。 バットは金のメッキがキラキラ。音もきっと、多分に爽快。
貴方が引き摺り出してくれる、新しい私。いたずらに笑う。無邪気な。
2005年01月17日(月) |
Conclusions |
どうしても、用事があって、それを理由にあの人に電話をかけた。
以前と同じように、取ってなどもらえなかったけど。 呼び出し音が鳴る間じゅう、手が震えた。 掌にぐしゃぐしゃに汗をかいた。 やっぱり、あの人が怖くて。
話す事も、無視されることも。
相手にされたら、多分先へ進むことが、 相手にされなければ、そこに留まることが恐ろしく思う。
結局どこにも行けないから。
誰かを好きになってもどうにもならない事、 だけど、誰かを想う気持ちを抑制できない事。 多分あの人も同じ気持ちで誰かを想っていたんだろう。 どうしようも、無い、恋で。
昨日は、偶然にもあの人が好きだった人の名を知った。 妙に納得して、…だからこそ前の環境から離れたんだな、と思った。 側に居たら、気持ちが減らないことを、あの人は、多分。
誰かを想う気持ちが、必ずしも誰かを幸せにしないこと。 「そういう恋もあるよ」と言った時の、彼の声を思い出した。 今になって、やっと霧が晴れかかって。あの、声で。
このまま、雪に沈んで真っ白なまま消えて行けたらいいのに。
この手が全てで。 この目が全てで。
他には、もう何もない。
あと何夜こうして眠るのかしら。 どれだけ降れば、貴方は私を埋めてくれるかな。
真っ白。真っ白。
鳴らない電話 来ない手紙 帰らない人
そんなものばかり、待ってしまう。 触れれば溶ける、貴方の手。
最後には、無くなってしまうのだろう。
体も心も溶けるような 脳を溶かすような 哀しみを溶かすような
うっとりしたキスを 貴方と出来たら良いのに
いつも目を閉じない 貴方は
手を使うより、もっと単純に 貴方とトリップ出来たらワンダー
真っ直ぐ過ぎる貴方の眼を くぐもらせたい単純な欲望
どうしようもない程 この小さな星の土まで 行き先はひとつ
だから今はこの土の上で口づけて もっと、回り道して私を引き摺って 喜んでついて行くから
粉々の骨になって混ぜこぜにしたって 完全に別々のふたり
だから今はこの土の上 貴方と重ねる指と唇に、どうかうっとり
誰かに好かれて 一生懸命声をかけられて初めて 自分は誰かに好かれる事にこんなに慣れていないのだと知った
誰かを好きになって 追いかけて追いかけて たくさんの言葉をかけることはできても 誰かの必死の言葉のひとつすら受け止める胸の広さも無く 人を拒絶できる優しさも無く
それが弱さ 女としてなんて
ミジンコ並の
誰かの事を本当に考えてあげることよりも 自分の束の間の悦楽をとるエゴイズム
無条件な、一瞬の満足感と、理性的な大後悔
私には、繋げる手が一本しかないから 貴方が心配なら、必要なら、 肩からもぎ取って持っていってください
一本の煙草に火を付ける程度の気軽さで 私をもっと消費して
貴方の、欠けた脳の一部を、私の胸で埋められたら良いと思う。 貴方を想うと、胸も頭も、こんなに空虚で一杯になる。
何も無い。
何も無いもの。
形無いもの。
でも、確かにそこにある何かが、貴方のそれを埋めたら良いと思う。
あの、空を見上げる時の胸の静寂。 風に目を細める、脳の振動。 この指で触れる、貴方の柔らかい部分に、満たされるこの胸が、 貴方の脳を埋めたら良い。
毎日、同じ練習をする。
例えばそれは、いつになっても変わらない同じ音。 同じ、不変の、同じもの。
ただ、毎日重ねる繰り返し。
例えばそれは、何度も繰り返すフレーズと言葉。 単なる言葉遊びの延長に思えるけれど、
ただ、同じ音も耳に心地良くて、 毎日重ねる音の鼓動がいつか染み付いて残るのだと。
だから貴方と、飽きるまで、飽きてもずっと、 基礎練習を続けつづけたい。
どんなに難解な楽曲も、解きほぐせばただひとつの音。 だからドミソから、毎日同じ練習を。
さあ、ソルフェージュを。始めましょう。 そして続けつづけましょう。 消えるまで重ねましょう。 どちらかが消えても音を想えば曲は胸に残り響き、 続ける事でまた逢える。
「…私を、捕まえて」
そんな無茶なお願いを。
…本当は、誰も誰かを完全に捕まえる事が出来ない。 どんなに体を拘束しても、心は空に飛んでいくし、 心をどんなに拘束しても、体は脆く、易く壊れてしまう。
その果ては、途方も無くて届かない。 たった、ひとりの人ですら。
右手に持った網で、すぐに捕まえてしまった気に なるけれど、自然と緩む網目を、ひとつひとつ 気にしながらいつだって糸を引き続けなければならなくて。 いつだって、するりと抜ける網の目から、貴方が居なくならないかと 気にしながら、ただ確かなこの網のはしを掴んでいる。
体を拘束して、魂を縛り付けたとしても。 その三つ目はどうしても手に入れる事が出来ない。
出来ない事を知っていても、あの端に手が届きたくて
貴方の手が、いつか私を捕まえるような気がして
…届いて欲しくて
今日は彼からのメールが無かった。 いつもなら、…いつの間にか、彼から愛されるのが 普通になっている、嫌な私?
でも、ただ、…そうして、ただメールが来ない時間が 少しあっただけで、妙に淋しくなって、 「今日はメールをくれないのですか?」とメールした。
…意図的なのかと思ったけど、…本当は、仕事が忙しかった せいだったのに。…催促してしまった。私は重いかなぁ…。
私は、彼の働く姿をみた事が無い。 だから想像でしかない。
きっと、私と居る時とは別の彼の顔が在って、 私がそれを見ることは、無いんだろうなぁ。
そう思った。
…決して、見ることの出来ない部分。 私が、居ない時の貴方を思って、改めて、 私が貴方の事を、何も知らないことを再確認した。
会えない貴方。
…だんだんと、顔もぼやける。でも、だからこそ、今もこうして 貴方を想像しているのです。
きっと、今もあの人は、以前と変わらない温度で、 冷たいままなんだろう。
今頃一体、何処で何をしているんだろう? 相変わらず、笑っているのかしら? 泣いているのかしら?
きっと、あの時、あの瞬間でしか、あの人には触れられなくて、 だからこそ今、私はこうして幸せにひたっていられるんだけれど。
きっと、あの時、あの人に触れられる事がなかったら、 私の人生はこんなに自分本位に居られなくて、 きっと、どこかで自分らしさを無くしていて、 どこかしら不自由で、哀しい事にも気付かずに、 貴方にも出逢えずに進んでいたんだろう。
こんな気持ちを知らずに居たら、どんなふうになったんだろう。
あの人に、触れる悲しみも知らずに、 貴方に、触れられる愛しさや情熱も、涙も知らずに
私は居たんだろうか。
きっと、…こんなに哀しい事を、知らずに居るよりも、 知って、泣く方がずっと気持ち良いことを、どこかで知っていたんだろう。
あの人の、冷たさを。
貴方の、静かさを。
疲れが溜まっていくと、目が澱む。
視界が虚ろになるんだな。 現実感が薄いというのかな。 何なんだろう。こういうの。
今、何の為に生きているのか、とか、 どうして今生きているのか、とか、
そんなどうでもいいことばかり考えてしまって その辺でコテリと座り込んでしまいそうな。
…疲れてくると、よく分からない人達の行動が 気になって仕方が無い。
例えば、土足のままソファの上に、しゃがみ込む体勢で 歌う若いコの団体とか、…靴を脱いであぐらを組む女子高生、 お金を投げて渡す客、笑わない店員。
そんな、どうでも良い負の感情に、こんがらがって 引きずられそうで、怖い。
内側に、内側に、…って。閉じていきたくない。 お願いだ。私をそっちに引きずらないで。
本当は、いつも、笑っていたいのに。なぁ。
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