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panの種類 3-5 expanded pan - 2002年09月08日(日) series kinds of pan ・bore pan(ボア・パン) ・no groove ・toy pan ・mid sized pan ・expanded pan ・xylopan ・stainless steel pan ・ping, pong, pang ・vivra pan ・brass pan ------------------------ 小さいサイズのパンを紹介してきましたが、じゃあ大きいサイズで作ったらどうなるの?って事で、今日は大きいパンの話。expanded panです。 ・expanded pan 一時期、合衆国の「Pan Yard Inc.」が出していたシングルテナーパンです。 直径58cm/23inchの普通サイズのドラム缶より、さらに一回り大きい物を使って作られた物で、確か、下のA音から、3オクターブ程の音程があったように記憶しています。 Quadro Phonic Pan や、後述のxylopanについても同じ事が言えるのですが、パンの場合、音域が広くなると、低音と高音を一つのスティックできれいに出すのはむつかしいという問題点があります。 音はチューニングだけで決まる物ではなく、スティックの硬さ、重さ、叩く角度、演奏者の技量がとても大きく関わっています。 中でも、スティックにはとても神経を使います。音域の重なっているシングルテナーとダブルテナーでも、スティックは違う物が使われます。また、音域がほとんど同じダブルテナーとダブルセコンドでも、私は変えて演奏することをお願いしています。 このexpanded pan の場合、ダブルテナーとシングルテナーを足したぐらいの音域があるのですが、シングルテナーの(小さく硬い)スティックを使うと、低音域が固い音になりやすく、ダブルテナーの(少し大きく重い)スティックを使うと、高音域が出にくくなるという欠点がありました。 私も音域の広いpanが欲しくて、いくつかオリジナルのスタイルを考案したことがありましたが、スティックの問題を解決してからでないと、製作しても意味がないので、未だに作るに至っていません。 ちなみに高低音をきれいに出せるスティックのアイデアは、皆さんいろいろ考えられているようです。Ulf KronmanのSteel Pan Tuningにもありましたが、師のページは今は閉じてらっしゃるようです。 expanded pan は、今は売られていないようです。 - panの種類 3-4 mid sized pan - 2002年09月07日(土) これこそ日本人に適したパン!! おもちゃと本物のちょうど間くらい。車でいうなら軽自動車。ステレオに対して、ラジカセ。ギターにしたら、ウクレレのような、実用性もありーので、サイズダウン。 でもこんな物、なかなか売ってないのよね。 mid sized panです。 ・bore pan(ボア・パン) ・no groove ・toy pan ・mid sized pan ・expanded pan ・xylopan ・stainless steel pan ・ping, pong, pang ・vivra pan ・brass pan ------------------------ ・mid sized pan 普通のpanは直径58cm/23inch/200�のサイズのドラム缶をつかいます。 mid Sized pan は100�のサイズのドラム缶を使います。直径は47cm/19inchです。'93年のトリニダード行きの時に師匠が作っているのを拝見し、無理を言ってゆずってきてもらった物を所有しています。この分はF#から始まり、2オクターブと3音の音があり、上のAの音まで出ます。前述のミニパンと違うのは使っている鉄板が、きっちりとした鉄で、厚みもあるので、そこそこしっかりした音が出るという点です。 数年前に和太鼓の「松村組」さんが、首から下げて演奏したいので、このぐらいのサイズのパンが欲しいということで、Fからの2オクターブのパンを作って納品しました。日本でメッキしたので、仕上がりがきれいだったことをおぼえています。もちろん、自分で作ったパンでしたので、チューニングもしっかりできましたし、いい仕事でした。 - panの種類 3-3 toy pan - 2002年09月06日(金) パンが欲しいけど、本物は高いしでかいし。 おもちゃみたいなパンを見つけたけど、あれってなんだろ、結構いい値段してたよね、 って方、今回は読んどきましょう。toy panです。 ・bore pan(ボア・パン) ・no groove ・toy pan ・mid sized pan ・expanded pan ・xylopan ・stainless steel pan ・ping, pong, pang ・vivra pan ・brass pan ------------------------ ・toy pan 各メーカーによって、mini pan、kids panなど、呼び方が様々ですが、20�のペール缶から作られたおもちゃのパンです。(昔、ジーンズ屋さんに行くと、缶の上にふたをして椅子にして、置いてあったりしましたのを思い出します。あれがペール缶です。わかるかな?) 最近は輸入も増え、楽器店、民族グッズ屋、東急ハンズなどの店でも時折見かけられます。トリニダード製のものと、アメリカ製の物が多いようです。 直径約30cm/12inchと打面が小さいので、音の数はだいたい10音前後のものが多いようです。鉄板が薄いので、マレット(スティック)はテナーのものよりさらに軽いものを使った方がいい音がでます。その分、音量は期待できません。 余談ですが... 「パンを作りたい」とおっしゃる方は後を絶たないのですが、そういう方には私の「ミニパンの作り方」のページを見ていただくことにしています。 小さい分、作るのは本物よりずいぶん楽です。工具も少なくてすみます。ですが、鉄板が薄く、弱いので、チューニングはとても神経を使います。少し前に、このサイズで、DooDop(音が2音だけのベースパン)を遊びで作ったのですが、なかなかおもしろい物ができました。 音程もそこそこ低い音が作れるので、音量もそこそこあるし、楽器としての使い勝手も良い感じです。スティールパンを作りたい方には、まず小さいサイズのDooDop作りをおすすめします。(xylopanも作れるし) - panの種類 3-2 no groove - 2002年09月05日(木) 前回のbore pan、イメージはつかめました? 言葉で音を表現するのは難しいわ。 さて今回は、no groove です。 ・bore pan(ボア・パン) ・no groove ・toy pan ・mid sized pan ・expanded pan ・xylopan ・stainless steel pan ・ping, pong, pang ・vivra pan ・brass pan ------------------------ ・no groove 上記のbore pan と同じように、groove を使わずに音を区分けしたパンです。穴もなければ、グルーヴもなくて、「なめらかな凹面」だけで音を分けています。 groove 有りより、若干サスティンがながく、きらびやかな音がしやすくなります。bore pan とgroove有りの間のような音、と言ってもいいかも知れません。 逆に、周りの音と干渉しやすいので、チューニングは緻密にしなければいけません。隣の音も一緒にチューニングしていく「コンビネーションチューニング」ができなければ、このpanはチューニングがかなり難しくなると思います。 私が、'93年から使っているパンは、outer note が、no groove で、inner note は groove 有りという、変わり種です。 - panの種類 3-1 bore pan - 2002年09月04日(水) 前回、前々回と、二度に渡ってパンの種類について、お話をしてきました。 1.パート(音程)によるわけ方 2.シングルテナーパンにおける配列(デザイン)の違いによるわけ方 3.楽器の作りによるわけ方 今回は「作りによるわけ方」ってのを考えてみましょう。 書いているうちにすごく長くなったので、数回に分けて掲載します。 ・bore pan(ボア・パン) ・no groove ・toy pan ・mid sized pan ・expanded pan ・xylopan ・stainless steel pan ・ping, pong, pang ・vibra pan ・brass pan ------------------------ ・bore pan(ボア・パン) 作りが違うもので一番知られているのはこれでしょう。 一つ一つの音を区切るのに、groove (溝)を使わずに、bore(穴)を使って区分けされたものです。 サスティン(音の減衰)がながく、透明感のある音が特徴です。静かに叩くと、アタック感も小さく、きっちりチューニングされたものだと、ストリングスのような音色を作れます。 主にシングルテナーパンで良く見られますが、ダブルテナーも作られています。 ちなみに私の師匠のLeroy Thomas師は、2000年の「1st. International Conference on the Science and Technology of the Steelpan」という会議で、bore pan と no groove について、講師として呼ばれていました。実際、彼の作った、no groove や bore pan は完成度が高く、買い手も多くついています。 Sterling Betancourtという人が叩いています。彼のLiveはまだ聞いたことがないのですが。 今日はborepanについてでした。 - FAQ パンの種類2 - 2002年09月03日(火) 前回の続きから。 スティールパンの種類の話をするのには、まずパンの「何」を基準に分類するのかを考えてみる必要があります。 1. 音程を基準に考える 2. 音の配置を基準にする 3. 楽器の作りを基準にする 1番の「音程を基準にする」、いわゆるパートわけについては、前回書きました。 2番、3番のパンに関しては、明日書きましょうと書いたまま、一週間も経ってしまいました。ごめんなさい。 今日は、2番、音の配置について考えてみます。 主にシングルテナーパンの話になります。 シングルテナーパンの一番大きな特徴であり、また、音の配置デザインを考える上で、頭を悩ます種になるのが、「一つのパンの中に、全ての音--白鍵、黒鍵合わせて12音--がある」という事です。 一枚板をたたき出して、異なる音程を作っている「パン」という楽器は、共鳴する音をできるだけ隣に配置したい。その中で2つ、3つと、パンを分けている方が、デザインは整理できます。 日本で主に出回っているシングルテナーパンは、「4th & 5th style」と呼ばれるものです。 「どこか任意の音を選んだ場合、隣に4thの音が、反対側の隣に5thの音が配置されている」という事から、4th、5thスタイルと呼ばれています。 4thと5thというのは、平たく言うと、「ファ」の音と「ソ」の音です。 つまり、「ド」の音が、「ファ」と「ソ」で挟まれるように配置されているという事です。 この配置のおもしろいところは、5度転調した場合、つまりさっきの「ソ」をキー音と考えた場合、さっきまでの「ド」が「ファ」になるという事。 5度転調の場合だけでなくて、どこの音をキー音にとっても、かならず「4度」と「5度」で挟まれてしまいます。 図で説明すると簡単なんですが、文章で書くと非常にわかりづらいですね。 わかんない人は流して読んで下さい。 つまりは、関係性が、連続しているという事なのですが、、。 これで演奏すると和音も進行も転調もすこぶる理解が楽です。 で、この配置はすごいなぁと思っていたら、音楽理論の本で「5度圏/fifth circle」があるって話で。この5度圏とまったく同じ配置なんですよね。これを知ったのはホンの5,6年前です。5度圏っていうのは、転調とか和音とかの関係を理解するための早見表みたいなもので。早見表で演奏してるなら、和音やら転調やら、簡単に見えて当然です。 冒頭に書いたできるだけ、共鳴のいい音を隣に配置する、というのにとても適した配置なわけです。 ただ、だからといっていい楽器になるというわけではありません。 この4th5thがでてくる前にもちろん、非常にたくさんのスタイルがあり、今でもたくさん使われています。 古くからあるバンドについては、創設時の専属チューナー(メーカー)がほとんどそれぞれに自分のスタイルを持っていて、各バンドによってテナーが違う、という事になっています。調律時の音の善し悪しにプラスして、スタイルの違うテナーだと、かなり音質もかわってきますので、バンドのサウンドを決定するのに大きなポイントになるわけです。 音の配置の種類に、レネゲイツスタイル、スターリフスタイル等、バンドの名前が付いたものがあるのはこのためです。 他にエリーマネットスタイルのように、配置のデザインをしたチューナーの名前がついてるものもあります。 アコースティック楽器の作り手にとって、いい音、大きい音を出すという事は一つの目標です。 そのためにより共鳴するように、きれいなハーモニクスがでるようにいろんな工夫をします。その点では4th5thは非常に合理的に見えます。 反面、「鳴ってしまう」パンをたくさん見受けられるのもこのスタイルのパンです。 Dの音を叩いているのに、AやF#や、下手をするとEやC#なんかの倍音が鳴ってしまう。もちろん、人の耳に聞こえてくるのは、Dの音なのですが、なんとなく「わぉーん」と鳴る。楽器として洗練していく段階で、こういう不協和音は、いらない音、とされます。いらない「鳴り」は消してしまう、「音を殺す」事ができていないパンはこういう音になります。 トリニダードの師匠と話をしていたときに、他のバンドのとあるチューナーについてこんな話を聞きました。 「今年の彼のチューニングはいいよ。彼のスタイルは3rdスタイルの一種なんだけど、一つ一つの音がすごくきれいになっている。だから、いらない倍音がなくて、すごくストレートに音程がでてる。力強い音になってるよ」 4th5thのように互いに共鳴し合うのではなく、一つ一つの音が、完璧にチューニングされ、贅肉をそぎ落とされて、しっかりと鳴る。音量は多少落ちるかも知れないが、楽器としては理想かも知れません。 ただ、この考え方はトリニダードのスティールオーケストラにおいての話で、 非常に考え方の難しい所なのですが、、。 例えば、ソロのプレイヤーが、「わんわん鳴ってる感じこそ、スティールパンの音だ」というイメージを持ってはるなら、いろんな倍音がでてる方が、ファンタスティックな音が出ていいのだろうと考える訳です。私自身もそういうスティールパンの音が欲しいこともありますし。むつかしいところです。 -
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