二週間前に戻れたら - 2001年04月30日(月) ごめんね。僕が結婚のこと話したことがきみをこんなに苦しませてる。でもいつかは話さなきゃいけないことだと思ったから。なんでわたしだけ苦しいのってきみは言ったけど、僕も苦しいんだよ。きみがこんなに大事なのに、きみがこんなに好きなのに、別の人と結婚しようとしてる・・・。「だって彼女のこと愛してるんでしょ?」 愛してるよ。だけどきみが大事なんだ。きみは特別なんだ。 わからない。わかってる。わからない。わかってる。わからない。 なんにも変わってない。あなたがその人と結婚することを決めたことと、それをわたしが知らされたこと以外。 ただ突然すぎた。「彼女と結婚するの?」って聞こうと思ったこともあった。でもきっとあなたは笑って言うと思ってた。「まだ結婚なんか考えられないよ」って。いつかはあなたが誰かと結婚するときがくる。だけどまだそれはずっと先のこと。ー勝手にそう思い込んでいた。 戻りたい。二週間前に戻れたら、今度はわたしは、あなたがその人ともうすぐ結婚すると思い込んで覚悟する。そうすればあなたからそれが本当だと聞かされても、きっと今ほど苦しまなくてすむから。 - 出会い - 2001年04月29日(日) もうすぐ一年だね。あなたと知り合って。あの頃わたしはひどかった。彼女が死んで、夫とはずっとうまくいってなくて、夫の浮気が発覚した。それも複数相手の複雑で信じられないような浮気。淋しかった。悲しかった。うまくいってなくてもいつか元の幸せな生活を取り戻せると信じてたのに。仕事にかこつけて二ヶ月もわたしを置いて日本に行ってた夫。仕事だって信じてたのに。何も食べられなくなって、夜も寝られなくなって、コーヒーとたばこだけで生きてた。それでも仕事には出かけなくちゃいけない。友だちにも会わなくちゃいけない。無理して笑って何もないふりをして、心も体もぼろぼろだった。 夫のコンピューターをいじっているうちに見つけたチャットのサイト。何気なく入って何気なく選んだあなた。楽しかった。あなたの言葉のひとつひとつがわたしの気持ちを救ってくれた。 「日本に来ないの?」 「夏に行こうと思ってるの。もう長いこと帰ってないんだ。」 「ほんと? 会えるかな。会いたいな。」 「うん、会えるよ。あたしも会いたい。」 ねえ、電話できない? もっといっぱい話したい。ーあなたが書いてきた番号に電話をかける。「緊張しちゃう」「うそ」。 とりとめのない会話。そしてそのあとー。ただ、あなたの言葉はわたしを救ってくれてた。何気ないふつうの言葉もHな言葉も全部素敵だった。 あのときからあなたはわたしの天使なの。死んだ彼女がいつもいつもわたしのすさんだ心を慰めてくれてたように、あなたの言葉はわたしの心にいっぱいつきささってたとげをひとつずつひとつずつ取り除いていってくれた。彼女が自分が死んじゃったかわりに、天国からわたしに連れてきてくれた天使ー。 - 永遠に結ばれない - 2001年04月28日(土) 彼女が一緒だったらどうしよう? そう思いながらおそるおそる電話をかけた。結局かけた。「ただいま電話に出られません。メッセージを・・・」。携帯の機械音が流れる。しかたなく受話器を置いた。取ってくれないのかな。やっぱり彼女が一緒なのかな。どうしよう? もうほんとに声が聞けないのかな。 電話が鳴った。「もしもし? さっきかけてくれた? ごめん、出られなかった。今、かけ直せる? いい?」。携帯から国際電話はかけられないから、いつもあの人は公衆電話からかけてくれる。そしてわたしがかけ直す。 「昨日電話くれなかった。なんで? どういうこと? ほんとにもうかけてくれないの? もう電話しないほうがいい?」 「昨日はそう思ったの。でも・・・」 「でも?」 「・・・・。かけちゃった。・・・あなたは? あなたはどう思ってるの? どうすればいいと思ってる?」 「いけないことだと僕も思ってる。頭ではわかってる。でも電話したい。きみと話したい。」 「じゃあ、電話する。」 「意志弱いなあ。はは。」 「ふふ。ちがうの。」 「何が?」 違うの。昨日思ったの。自分に素直になろうって。声が聞きたいのにがまんしながら、あなたがもうすぐ結婚して、そしたらもういままでみたいに電話もできなくなって、だんだんあなたがわたしから離れていっちゃうこと考えて苦しむよりね、そう考えながらでも話したいんだからこのまま今までどおりに電話してるときっとそのうち・・・。「・・・苦しい気持ちに慣れちゃうってこと?」。 違うの。きっとそのうちだんだん、あなたがその人と一緒に暮らすようになることもちゃんと受け止められるようになる。あなたとおしゃべりしながら、もうすぐ遠くにいっちゃうんだって だんだん覚悟できるようになる。それでね、あなたが結婚するときにはね、・・・ちゃんとお祝いしてあげるから。そうしたいから。 あの人が声にならない声を漏らした。「・・・ねえ、火曜日の朝電話して。これから仕事なんだ。絶対電話して。待ってるから。」 きみはこれから寝るの? ううん。まだ寝ないよ、明日試験だもん。そっか、そうだったね。頑張ってって言って。うん、頑張ってね。ほんとに頑張るんだよ。ちゃんと耳に受話器くっつけてごらん。ーそしていつもみたいにキスしてくれた。「ほんとに電話してよ。」「わたしと電話したい?」「したい。」「じゃあする。」「絶対だよ。じゃあね。」電話が切れた。 いい子になったんじゃない。それはほんとの気持ち。きっとわたしの本当の気持ち。あなたに幸せになってほしいから。だってわたしとは幸せになれないんだもの。こんなに離れて暮らしてて、こんなに年だって離れてる。わたしが別居中の夫とちゃんと離婚したって、あなたがその人と結婚しなくたって、わたしとあなたは永遠に結ばれることはない。きっと。 火曜日までまだ3日もある。週末は彼女と過ごすんだ。日本は月曜日もお休みだものね。わたし、耐えられるかな、火曜日まで。またもとに戻るかもしれない。「もう電話しない」って・・・。 - まだ思い出にしたくない - 2001年04月27日(金) もうこのまま電話で話もできないかもしれない。そう思いながら昨日一日過ごした。なんとなく心が落ち着いてきて、あの人とこのまま終わってしまうかもしれないことも受け入れられそうな気がした。それでもどこかで電話をかけてきてくれる期待もしてた。ーおととい誕生日のプレゼントを送ったから。聴かせてあげたかった何枚かのCD、もう終わっちゃったけどイースターのキャンディ、あの人の犬にもイースターの犬用のお菓子、それから「かっこいいサングラス見つけた」って言ってたからその分のお金。それが届くときっと電話してくれると思った。 「自分に自然に、そして自分だけには絶対嘘をつかないこと。自分を言い聞かせてしまうとすべてがうまく行くような気がするけど、自分の中の「いい子」や「強い子」は頑張り過ぎると人生の独裁者になってしまうんだよ。」ーわたしが苦しんでることも、わたしとあの人のことさえも、何も知らないはずのKさんがくれた不思議なメールを思い出した。メールを読んだとき思ったんだった。自分の気持ちに正直になろうって。あの人と話がしたい。あの人が好き。会うこともメールすることもできないんだもの、やっぱり電話だけは続けたい。 いままでどおり電話をかけて、たのしいおしゃべりをして、仕事の相談にものってあげて、わたしの仕事のことも聞いてもらって、Hな話をして笑いあって、電話の最後にキスしてもらって・・・。電話のキスも優しい言葉も、まだ思い出なんかにしたくない。 もう電話しないって決めたのに、「プレゼント、届いたよ」って嬉しそうな声でかけてきてくれる電話を待っている。自分の気持ちに素直になって、おしまいにしようなんて考えるのはよそうってまた思ってる。いつもふたつの気持ちが堂々巡り。 - 電話 - 2001年04月26日(木) 電話かけなかった。どうなっちゃうんだろう。いつもあの人が「この日の何時にかけて」っていう。その決められてた時にしかかけられない。そして今日がその日だったのに。 「もう電話しない」 「・・・・。・・・電話しないのに、会いに行っていいの? どうやって行く日連絡するの?」 「・・・・。あたしに会いたい?」 「・・・会いたいよ」 夏に来てくれるって言った。ずっとずっとずっと待ってても会えなくて、もうこのまま二度と会えなくなるんじゃないかって怖かった。「そんなこと絶対ないって」。そう言ってくれてたのに。・・・夏に来てくれるのが最後になっちゃう。 約束の時間に電話をかけられなかった時もある。そうすると心配して必ずあとからかけてきてくれた。・・・今日はどうなるんだろう。「もう電話しない」って昨日言ったから、かかってこないかもしれない。バカみたい、わたしって。自分がかけなかったくせに、心配してかけてきてくれるの待ってるの? 次の約束がないからわたしからはかけられない。「それでいいんだ」って思ったんじゃないの? だめ。声聞けないなんて、耐えられない。聞きたい。聞きたい。どうしよう? - 天使 - 2001年04月21日(土) どうしてこんなことになっちゃったのか、どうしてこんなに苦しまなきゃいけないのか、ずっと考えてた。わたしの間違いは天使のあなたを好きになってしまったこと。あなたが愛しているその人は人間のあなたを愛している。「ずっと大事だから。ずっと大切にしてるから。だからずっと僕の特別なひとでいて。きみが大好きだよ。きみの存在が大好きなんだ。きみが僕の世界からいなくなるなんて考えられない。きみは考えられる? 僕と話も出来なくなってしまうこと。僕は失いたくないよ、きみを。ずっと大事だよ。この気持ちは変わらないよ」。その人と結婚することになると思うって伝えたあと、天使のあなたはわたしにそう言った。 あの時わたしが電話をかけなかったら、あなたがその人と一緒にいる朝に電話なんてかけてなかったら、どうなってただろう。それまでどおりに今もあなたと普通におしゃべりしながら楽しい日々を送ってたよね。遠く離れてて会えなくて淋しくても「淋しい」って言えば素敵な魔法の言葉をくれてたよね。「あの時電話をかけなかったら」なんて、ありえない事なんだから考えても仕方ない。きっと初めからわたしが電話してしまうことが決まってたんだと思う。あの悲しくて悲しくて辛かったときに、死んだ彼女が自分のかわりに天国から天使のあなたをわたしに連れてきてくれたのは、一年の期限つきのプレゼントだったのかもしれないね。 苦しいよ。もうどんなに優しくしてくれても、苦しみから逃れられない。 -
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