三日月  2006年03月31日(金)





今日は三日月のようです。
ですが、ここ最近天気が悪く三日月が見えません。
だから心の中に今日の三日月を思い浮かべます。
これからもずっと、三日月が見えない日は私は三日月を心の中に思い浮かべます。
そしてたまに、その三日月をかいてしまうかもしれません。




それではまた、会う日まで。




雨は終わると思った  2006年03月30日(木)




好きな人がいました。
とてもとても好きで、憧れていました。
認められたい、と何度も思っていました。


その人の書く文章に羨望し、尊敬し、嫉妬し、そしてなにより愛していました。
私が牛子しか読めないという事実に一番悲しんだことはその人の書く牛子以外のカップリング小説が読めないということでした。
牛子のお陰でその人に出会えたのに、牛子への愛で私はもう一つの愛に泣くほど悔しくなりました。


その人の思考、物語、価値観、文字にどれほど影響されたのか。
真似ではないか、と指摘を受けたことすらありました。それでも、私はその人になりたかった。
私が書きたいものとは、まさにその人が書くものでしかなかったから。


押しつけがましい幼い身勝手すぎる暴力にすらなりえるこの感情をいつでも暖かい言葉で受け入れてくれました。
いつだって、跳ね返されたって仕方がないというほど私は幼い表現で感情を伝えようとしていた。
けれども、その人は「ありがとうございます」といってくれました。




好きな人がいました。
とてもとても好きで、憧れていました。
認められたい、と何度も思っていました。




その人の文章ではなく、私自身の文章で。
私にしかできない表現で。
私にしか作れない物語で。




まだ、まだまだです。まだまだ、届かない。まだ、こんな幼い私では。
いつか認めて貰えるよう。その人から、私の書いたものを認めて貰えるよう。
なんて身勝手な幼い考え方だけれども。




いつか、いつか。
私の中の、希望です。






その人は、かつて香草と呼ばれていた人でした。







和斗の文章とかいうもの。  2006年03月25日(土)





昔、好きなサイトさんの管理人様がこんなことをいってらした。


「これは、自分の自慰行為で書き始めたものだから」


そうなんだよな、これって自慰行為なんだよな。オナニーなんだよな。
好きで牛尾と子津のお話書いてさ、楽しくてさ、書く前から妄想してさ、それがやっぱり―――気持ちいい行為なんだよ。
最初は自分の考えていた牛子の妄想を書き留めたくて、後から読んで「あ、こんな牛子も考えてたよなあ」と思うために書き留めて。


考えてみれば、ぜーんぶ自分のためで。自己満で。
誰かのためだとか、そういうのを、全然考えない行為で。
身勝手な、周りのことを省みない、浅はかな幼さを伴った自慰行為。







それがいつからか文字を書く、という行為自体が楽しくなっちゃって。
書いている途中、時々ある、「これしかない!」という文章。本当にいつまで経ってもその話の中で「これ以上相応しい表現はないよ!」と思えるぐらいピタリとはまれる文章が。
その文章を思いついたときは本当に絶頂に達したかと思えるほどで。
だけどそんな文は滅多になく。たった一文だけでも、やっぱりそんな文は滅多に生まれず。





プロだとか、そういったレベルには到底及ばない私は相手を気持ちよくさせるセックスなんか出来ず、やはり所詮マスかきレベルで。
このサイトはそんな自己満が集まったサイトなんです。






でも、枡野浩一はこういった。

『人はよく、「それはマスターベーションだ」なんて言ったりしますが、そんな言葉でマスノ短歌教を否定しても無駄です。魅力的なマスのかき方もあると、教祖(枡野浩一)は考えているからです。(中略)自閉的なセックスよりも、他人を楽しませるマス。これからの時代、それが主流になると、教祖マスノは予言します。』
((c)かんたん短歌の作り方(マスノ短歌教を信じますの?)/枡野浩一著)






魅力的な自慰行為(マスターベーション)があるならば。
私のマスは、少しでもあなたを楽しませてあげられたでしょうか。





3年以上このサイトをやって、もう少しで閉鎖するというときに管理人の考えることはそんなことです。
ちょっとでも、ちょっとでも楽しませてあげられたかな。楽しませてあげられたんじゃないかなと自分では思っちゃったりするんですが。思い上がりでしょうか。
少しでも、ほんの少しでも楽しかったよ、と思ってくださる人はたった一言でも、ほんとーにたった一言でも、いってくださったら、嬉しいです。本当に、本当に、嬉しい。



嬉しい、です。





ほしいの。  2006年03月24日(金)




「ますの。」が欲しい。



本当に欲しい。すんごい欲しい。枡野浩一短歌集第3段でハードカバーのあの単歌集が欲しい!!欲しいんだよーー!!
アマゾンでありそうな感じにして見せていながら「カートにいれる」のボタンがないんですがなんなんですかあんたは。つうか絶版ってどういうことですかどこにもうられてないんですか!(泣)


枡野浩一の短歌が好きすぎて「かんたん短歌のつくりかた」を買ってしまったよ。でもあれね、枡野浩一の考え方はのっててもあんまり短歌がないの。
ちなみに「57577」もちょっと見たけどぶっちゃけそんなによくなかった。「君の鳥は〜」は論外だな。ちょっと無理しすぎてないか、といいたい。が、それでも読んで良かった感はある(まあ短歌集ではないしな)



「かんたん短歌〜」を読んでて思ったが、枡野さんの短歌は好きだが彼の喋り方とかはどうにも好きじゃないな。いや、文章の書き方かな。私はどーも臆病なタチなのかしらないが、あんな風に人を小馬鹿(にしているわけではないんだろうけど)にしてるように見えるあの態度はどうにも我慢ならないな。私、もし短歌を送ってて運良く講評をもらっていたらうちのめされて泣いていたと思う。
でも、考え方は嫌いじゃないんだよなーわかるんだよなーただなーいいかたっていうのがなー………短歌は本当に大好きだけど。Syrup16gみたい。




自転車でむっちゃ転んで痛いです。左胸を強打し左手を擦り左膝がガーゼに血が染みてます。昔もあったな、こんな風に左だけ庇ったこと。あ、でも唇の右下ケガしてるから、おあいこかな。程度が雲泥の差ですが。






子津少年、心に決める。  2006年03月18日(土)





「(はー…入学式なんてかったるいだけっすよねえ。校長ハゲちゃってるっすしねー………しかも教頭まで寝てるし。新入生の手前寝るなっての。なに、寝てもいいの?寝ちゃってもいいんすか?)」

そうは思っても、長年真面目優等生を小中ともに演じてきた子津は欠伸を噛み殺した。
憧れていた、十二支高校。しかし憧れてたって入学さえ出来ればよく―――もっといえば野球部に入部さえ出来ればよく、入学式なんて興味がない。入部式があるなら大歓迎なんだが。
けれども、どうにもPTA会長の話が長く、しかもくだらなく、本気でそうは思っていないだろう美辞麗句を並べるだけの演説はラリホー((C)ドラゴンクエスト)並だった。

「―――終礼」

はっとして立ち上がる。気づけば、入学式が終わってしまっていた。
駄目だなあ、最初は気をいれてのぞまないと………と寝起きのため霞んだ目で体育館の窓の外を見た。
桜の花弁を見た気が、した。













「うん、うん………大丈夫っすよ一人で帰れるから。うん、ちょっと野球部覗いてきたいし。平気っすよ、お店のほうも大変だってわかってるから。うん、じゃああとでね母さん」

携帯をしまう。家の呉服屋は最近注文が多いので入学式にも出られなかった母親だが、やはりそれに罪悪感なりなんなりあるのだろう。けれど店のことで親に構われないなんてこと慣れっこの自分のほうが気にしていない。
さて。とりあえずグラウンドに行こう。部活動をしていないのは知っているが、それでもずっと憧れていたグラウンドだ。聖地だ。
新入生達が校門に向かう中、桜並木も並べられていない道を通りグランドに着いた。

「(あれ、人がいる)」

思わず足を止めてしまった。注目されるのはやだしな。部員だったら、変に生意気な後輩とか思われたら困るし、ということで少しだけ遠目にグラウンドを見守った。
その人は一人だった。グランド整備をしている。ユニフォームを着ているからやはり野球部員だろう。しかし、それにしても派手な人だ。
赤ジャージは、まあいい。普通は黒だろ、とかツッコミたいが控えめな臙脂色はむしろ好ましくすらある。だが問題は髪の色だ。
太陽の光も反射してしまう、金。

「(うわー………染めてるんすかね、あれ。あんなのやってたら頭髪でひっかかって甲子園どころじゃないっすよ。やっぱり落ち目なのかなあ十二支って。生徒の管理もちゃんと出来てないなんて…)」

でも休みの日にグラウンド整備してるなんて真面目なんだな、と思っていたらその人が顔を上げた。





―――、







横顔だけしか、見えない。けれどそれだけでよかった。それだけでどれほどその人が。
陶磁器の肌。涼しい目元。完璧としか言えない目鼻立ち。そして、吸い込まれそうなほど深く見えるのに、澄みきった、緑の目。






どれだけでその人が、綺麗かなんて。
だけどそんなことどうでもよかった。陶磁器の肌も涼しい目元も完璧な目元もあの透明な緑の目も。
彼の、その存在自体が。









足が立ち止まったまま動かなかった。ようやく動いたのは彼がトンボをしまおうと子津に背を向けグラウンドから出ようとしたときだった。
子津も踵を返し校門に向かう。けれど拳を固く握りしめ、子津は固く心に決めた。








「絶対、あの人をお嫁さんにする………!!」












後。結局はお嫁になんてできず、白無垢を着ることになったのは自分だったことになるのは、まだまだ先のお話。














not end.











あうてっ  2006年03月15日(水)




メールアドレスも日記も書いていないサイトなんてどうやって管理人と連絡を取り合えばいいものやら。



いつだって、いつだって連絡を取り合えることが出来るサイト作りを心がけていたのに………!!なにやってんだ自分!


牛子アンソロ、ほしいです。ほんまほしー………リンクは次回貼ります、必ず!




オペラ座の怪人(映画)  2006年03月12日(日)

観ました。WOWOWで。録画して。やっと。


まず一言。
観なけりゃ良かった。憧れは憧れのままにしておいたほうがいいときもある。(駄目なときもある)


とりあえず、以下感想。ネタバレ有りです。
「オペラ座の怪人」が好きな人は読まない方がお得かと。特にヒロインとその恋人(断じて常に仮面を被ってオモチャ相手に歌っているナイスガイではありません)が好きな人は!



まあ、ファントムが幸せにならないらしい、ということは何となーくしっていつつもありゃねえだろ!と叫びたくなりました。登場人物が哀れで哀れで泣くなんてキャシャーン以来です(あれは唐沢の演技にやられたんだけどさ……)

クリスティーヌがラウロと外に逃げ出して、愛を確かめ合ったシーン。
なんだこの尻軽女!さっきまであんなにファントムにうっとりしていたのは誰だ!それが何でそっちに行くんだ!?
いや待て。まあ仕方ないじゃないか。かたや怪人&殺人犯。かたやパトロンで金持ちしかも幼馴染みで昔の恋人。そりゃまあ仕方ないさ…と気持ちを抑えていた、ら、
なんでまたファントムにうっとりしてんだよ!
なにキスしてんだ!なんなんだよお前は!(泣)


基本、少女漫画志向なんで。やっぱり主人公は一途に相手を思っていてほしいんです。現実世界でも理想言えばそうじゃん。現実だったら理想的過ぎっていわれるけどよ、これだって映画じゃん。求めたくなるじゃん。
それなのにクリスティーヌって子は!この子に好感を持てたのは、ラウロが登場するまでです。開始何分ですか。


ここまで腹を立てた映画も珍しい。だってすっきりしないもーん。最後もすっきりしない。私はきっぱりファントムを選んでほしかったんだが。まあファントムもファントムで「私にはどんな同情もなかった」っていってたけどマダムはどうした!って感じです。
で、なんでお前が猿のオモチャ落札してんだよ。みたいな。お前、絶対ファントム嫌ってただろラウロくん。クリスティーヌが語ってたから?大切な思い出だから?選んでなかった癖に夫にそんなことを語るクリスティーヌの気持ちも分からんし、妻がすてた男の思い出の品を持ってくる夫の気持ちも分かりませんでした(こういったらまだ分かる気がするが、あんな状態にあった3人なのに。何故)


ファントムが生きているのはいいけど…いっそシャンデリアでクリスティーヌとファントムが心中してくれたほうが救いがあった。
ずっとオペラで話すもんだから疲れるし(オペラ分かりません)母さえいなかったら台詞だけよんで早送りしてたね。


………と、ここまで書いたが、和斗が一つの作品をこんなにいうことって少ないですね。相当だったと思ってください。まあ、ファントムに同情させたい悲恋映画っていうことでしたらもう大成功ですが。
この作品は一体なにを狙い、どんなことを考えて欲しかったんだろう?うーん作品ってそういうのを考えないといけないんですね。それを学べただけで収穫です。2時間は無駄じゃなかった。





これから「クラッシュ」をみにいってきます。あかでみーしょうじゅしょうさくひんですね。私好みだといいなあと思いつつ、映画は私の好みのために作られているわけじゃないってことも知ってます。でも選り好みをするのは観客の自由。あくまで、作品の求めてる客と観客が重ね合えるか、かな。





♭1 天照御門(アマテラスノミカド)  2006年03月09日(木)




約束の相手は約束から45分と11秒9遅れてやってきた。

「あ。子津く…」

「あーお腹へったっす。キャプテン、映画観る前になんか食べましょう」

「え?あ、ああそれはいいけどなにかあったのかい?携帯に連絡しても出ないから心配しちゃって…」

「あー………朝起きて仕度しようとは思ったんすけどうっかり犬飼くんから借りたビデオ(お江戸)観ちゃってたら時間になっちゃってそれから今日のナイターのチェックして家出たら電車乗ってる最中に電話がかかってきて『は?電車の中で電話になんかでられるわけねえだろマナー考えろよ非常識野郎』と考えながら電車から降り駅前の待ち合わせ場所にきたわけっすけど、それが何か?」

「う、ううんなんでもないよ。非常識でごめんね」

絶対遅刻してきた子津が悪いのに何故自分が謝ることになるのか。いや、そんなことをいったら「あ、そうですかそれは失礼いたしましたではこれ以上失礼をしないために帰らせていただきますキャプテンご機嫌よう」などといってあっさりこの場を去るに違いない。ていうかもっと牛尾を責める言い方でなおかつ丁寧アンド嫌味に聞こえない嫌味攻撃をしてくる。

「えっとなにがいいっすかねー僕お昼は納豆が食べたい気分なんすよねえ」

「え、納豆?」

「なにそんなに嫌そうな顔してるんすか」

「僕ちょっと納豆苦手なんだけど…」

「あっそう。じゃあキャプテンだけフランス料理とかでも食べにいったらどうです?あとで映画館で待ち合わせしましょう」

「45分11秒9(反対から読むと僕達の誕生日さ!)待っていたのになんでまた待ち合わせをしなくちゃならないんだい、い、いいよ納豆で。大好きさ納豆!日本文化最高だね!」

「とろろそばでもいいっすけど」

「日本人のお昼っていったら納豆だよ!納豆!!絶対納豆!!」

「あーはいはい。じゃサクサク行きますよ」

そう言って歩き出す子津にホッと安堵する。良かったとろろじゃなくて。あんな自分の天敵のような食べ物をせっかくの子津とのデートの時に食べたくなどない。
子津とデートするのはこれで2度目だ。2回とも自分から細心の注意を払い(爆弾処理班が人前で爆弾を処理するときだってこんなに神経質になってるのかっていうぐらいの気の配りようと努力で)なんとかデートにこじつけたのだ。
約束したなら子津はその約束を途中で破るような子ではないが(遅刻はする)その約束をするまでの苦労っていったらあんたもう試合で10本ホームラン打つより難しいってもんだよなんてたってなにかあったんじゃないかと遅刻する恋人に電話をすることを非常識っていう子なんだから。

「て、いうか?僕達はつきあってる?んだよね?」

「はてなが多すぎるっすよ。つうか先輩、納豆をご飯の上にのっけるの早すぎっすよ」

「だって…ネバネバ苦手なんだもん」

「逆っすよ。かきまぜればかきまぜるほど食べやすくなるんすよ。あと醤油もたっぷりいれたら味もごまかせられます」

「あ、そうなんだ。ありがとう」

「僕達ってつきあってたんですか?初めて知りました」

「ええええ!?返事遅…っていうかつきあってるんじゃないのかい!?だ、だって君、部室で僕が君の手を手当てしようと待ってたときにさ」

「あーあんときのキャプテンまじで余計なお世話だったっすねえ。金にもならねえお節介なんかしてんじゃねえよって感じっすよね」

「………で、でも、その時に僕が君にす、す……好きだっていったときに、君のほうからキ、………」

「キスしたことっすか?」

「うわああ!!そんなはっきりいわなくたっていいじゃないか!」

「顔赤すぎっすよ。でもそれからキスどころか手も繋がせてくれない相手じゃないっすか」

「自覚はあるんだ………でもじゃあなんでその……キスしてくれたんだい?」

「おねーさーん。ご飯のお代わりくださーい。あと納豆も」

「………僕のこと、好きじゃない?」

子津はお代わりの納豆をかきまぜる。牛尾はそんな子津を見つめながら心がどんどん重くなっていくのを感じた。
それからまるきり何も言わなくなった子津に目を伏せ、茶碗を持ち直す。ああ、本当納豆すらアンニュイだよ。

「キャプテンは」

「え?」

「キャプテンは、僕のこと好きなんすか?」

息がとまる。顔が熱くなってくる。
子津がじっと目を見てくるもんだから、もう。
止めたいなあ、本当。


「………………うん、好き」


本当、顔が真っ赤っかだよ、絶対。
子津の顔すらまともに見られない。あー恥ずかしくってこのままグラウンドの穴に埋まりたいね。
だけど子津は笑った。
笑ったんだ。



「なら、それでいいじゃないっすか」


微笑んでまた納豆ご飯を食べ始める。僕はポカンとしたまま、口元が上がってくるのを自覚した。







止めたいんだよ、本当。
だって、その日初めて笑いかけられたからって、それがいままで見たどの笑顔よりも何倍も何倍も何億倍も比較なんかできないぐらい宇宙一個分より価値があるほど可愛かったからって、
また同じ人に恋しちゃうぐらい、夢中になっちゃって困ってるんだから。









* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





BGM なし。随時募集。










#2 濡鼠(完)  2006年03月08日(水)







ガチャリとドアノブを回した。驚いた。

「あ、子津くん」

牛尾がいう。子津は唖然としてドアを開けたまま部室にはいるのも忘れた。

「キャ、キャプテン。どうしてまだいるんすか?」
「え?子津くんのこと待ってたんだよ」

キョトンとして牛尾は答える。どうして当たり前のことを聴いているのだろうといいたげに。
子津はとりあえず部室に入りドアを閉める。牛尾が微笑みかけてきた。

「手当てしてあげるから、手、だして」

子津は息を止めた。そして笑った。牛尾が大嫌いな笑顔を浮かべてくるもんだから。

「いりません」

はっきりと口にした。
牛尾の表情が強ばる。子津は嬉しくなる。
そう。それでいい。笑顔なんか僕に見せなくていい。
その笑顔を見せないためなら僕はどんなことだってしてやる。

「余計なお世話です。キャプテン、もう帰ったら如何です?僕はキャプテンに待っててほしいなんて一言もいってませんよ」

さっき閉めたドアをもう一度開けて、右の手の平を天井に向け指先を部室の外へ向ける。さあ、どうぞお帰りください、としめすように。
牛尾は動かなかった。ただ子津を見ていた。
悲しんでいるとも怒っているとも違う顔で。目で。
―――困っている表情だった。

「…帰らないよ」
「どうしてですか?」
「どうしてって………」

牛尾は口ごもる。子津は心の中では眉間に皺を寄せているけれど相変わらず顔は笑顔のままだ。
さっさと帰ってくれないものか。こんなトラブル予想外なんだ。
無茶する後輩を心配する先輩なんて欲しくはない。本気で心配してくれてるそんな優しさなどこの手の血で汚くしてやりたいぐらいだ。

僕が、欲しいのはまるで違うものなんだから。

牛尾は黙ったきりだった。子津から視線をずらし困ったままの顔だ。
言いたいのに、言えない。そんな顔で。
子津は何故帰らないのか分からなかった。いや、むしろ何故怒りもしないのか。後輩からこんなにあれこれ言われていくら人のいい牛尾でも一言二言注意はしてもいいはず。



「(あれ?)」



一度ボタンのかけ間違いに気づいたら子津は正さなくては気がすまない。
何故?どうして?如何して?
帰らない牛尾。何もいわない牛尾。子津の顔を見られない牛尾。
あれ?
子津は呆然とした。時々自分の頭と勘の良さが憎らしくすら思えるぐらい。
出てきた答はあまりにも平凡で。けれども自分が最も信じられない答で。



「―――っはは」



笑ってしまう。まさかそんなこと。
ゆっくりと子津は手を下ろし、壁にもたれた。牛尾を見つめる。
攻略? 策略? 奪略?
ハッ、舐めんじゃねえよ。
奪い取らず、あなたから来て欲しいんだ。


「キャプテン」


牛尾が顔を上げる。目線が合う。
子津は呟いた。





―――言ってしまったら、平穏な日常は消え去ってしまう。
―――――そんなもん、望むところだ。




体の中に或る感情全て食べられてしまう。






僕が望んだ全てが、今、どうぞ、




「どうして?」








さあ、この濡れた手に落ちてください。










* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *





BBM 『濡れ鼠』/ENDLICHERI☆ENDLICHERI








W-W-Dさんで牛子アンソロを作る動きがあるそうで!!
え、それじゃあまだcrescent閉鎖できないじゃん………この素晴らしい活動を応援せずにどうする!?
別に何が出来るわけではないですが、リンク貼るぐらいなら………(まだ告知サイト様はできてないようですが、できましたら)こんな死にかけたサイトではあるが………!!


わーわー牛子アンソロvvもう、響きだけでステキだよね、牛子アンソロ………(うっとり)その言葉だけで人を狂わす何かがあるよ!
届かないと思うけど、ひっそりこっそり。主催者のつばさ様ー!応援してます、頑張って下さい!!





「勉強勉強って、なんだよ。勉強が全てじゃないだろ」

「確かに勉強が全てじゃない。全てのうちの一つだ」






#1 濡鼠(ヌレネヅミ)  2006年03月07日(火)




ダン!と低い音が響いた。
それよりも一段ほど高い低さで飛んでいったボールが壁に当たり、跳ね返ってくる。ころころと転がってくるボールを子津は拾って振りかえった。笑った。

「すみません、キャプテン。今日も帰りのミーティングに出られなかったっすねー」

陽気に笑う子津とは対照的に牛尾は口を真一文字に結び厳しい顔だった。もう暗くなった。空も彼も。
それでも子津はやはり対称的に、笑うのだ。彼に会うときは出来るだけ笑顔。
笑顔が一番、効果的。

「…部室をしめるから、子津くんも練習を止めなよ」
「あ、いやです」

あっさりとそう言いきる子津に牛尾の目がピクリと動いた。少し驚いた顔。感情表現が豊かな顔。
僕とは違って。

「監督から許可をもらってます。監督が止めに来るまで練習をしててもいいって」
「それは知ってる。だから今までも許してきたけど………でも、その手でこれ以上やる気かい?」
「手?」

くすっと子津は笑った。さっきまで浮かべていた微笑みとは違う、相手の犯した間違いが可笑しくて笑ってしまう『くすっ』だった。

「この手がどうかしました?」
「ぼろぼろじゃないか。………君は毎朝早くきてボール磨きをしてくれてるのは知っている。それが、練習でついた君の血を消すためだってことも。そんな無茶して………」
「―――無茶しないでレギュラーになれるって、ホショーしてくれますか?」

牛尾の言葉が詰まった。思わず自然に笑みが浮かんでしまう。
ああ、本当にあんたっていう人は。

「キャプテンはもうスタメンっすから体をこわさないことが第一かもしれませんけど、僕はガタがきたって誰も困りはしないんです。だって、僕はキャプテンと違って試合にでませんから。だったら壊れてもいいから―――いや、むしろ壊したいっすね。そんなもんでレギュラーになれるなら」

口の端がつり上がる。残酷なまでに口の端は高く高く持ち上がる。
口裂け女は人に問い、答えられるほどに口が裂けていくという。笑みの形をしたままで。
僕が今一番尊敬する人は多分、口裂け女に違いない。
もっともっと吊り上がれ、僕の口。

「だから僕にはとにかく練習するしかないんすよ、だからとやかく言わないで下さい牛尾キャプテン」
「でもねづく…っ」
「ソコにいる人に、何か言われたくはないんすよ、牛尾キャプテン」

にっこりと、にっこりと子津は笑った。
牛尾は何も言えなくなった人形のように―――埃にかぶって誰も手とってくれなくなった人形の瞳のような悲しみすら浮かべ、黙り込んだ。
それを見てやはり子津は笑う。痛む胸とともにゾクリとする快感を得ながら。



ああ、止められないなあ。













―――恋した人間達が綺麗になるというならば、
―――――言った奴諸共八つ裂きに。
―――気づいていたら或の日、
―――――ここまで来る前に引き返してやったっつうのに。




綺麗になる資格などない汚れたこの手をどうぞ死刑に。





―――攻略? 策略? 奪略?
―――――ハッ、舐めんじゃねえよ。
―――恋愛? 友情? 尊敬?
―――――甘ったれたことを言ってたらケツをバットで犯させる。






簡単に手に入らぬ綺麗なモノなら、ソレに傷をつけてやる。







如何して出逢ってしまったんだ?









「冬が寒くて本当によかった…」  2006年03月06日(月)



なわけあるかあッ!
素でBUMPの「スノースマイル」に突っ込んでしまった和斗ですこんにちわ。なにげにテスト中だった和斗ですこんにちわ。テストが一週間もあったもんだから3週間も勉強漬けだったよこんちくしょー…しょー…(エコー)


最近は暖かくなり、自転車にも乗れ(!)、マフラーもせずにすんできました。「寒くて本当に良かった」なんて台詞好きな奴の前で鼻たれてからいってみやがれ。
(※これでもバンプ大好きですよ。ホントに。スノースマイルなんて聞く度に感動します。幸せなのに、それでも切なく。「博士の愛した数式」(小説)ににた感じ。寒い癖に、あったかい)



しっかあし。暖かくなってきてはいいですが、なんだかほら、巷では、噂のアレが騒がれ照るみたいですね。今年は十分の一だとかなる、あれ、そうそうあれです。ふふーふー…春が近づいてきたわね、といいますか和斗に花粉症の疑いが出てきました。

………耳鼻科いって確かめないと、なんとも…埃アレルギーかもしれませんが、風邪薬きかなかったから風邪じゃあないと思うんだ………。あ。ああ…折角アレルギーなしが自慢だったのに!(泣)




予定では今月末閉鎖するらしいですね。え、マジに?
自分で決めたことに驚いてちゃあしょうもないっす。THE BED書きたかったな…(既に諦め)牛子パラレル、どんどん思いついてんのにな…(金瓶梅みたいな牛子とか。忠之介が他の奥さんに偉く黒いことしながら御門の寵愛を一身に受けるパラレル。あとあと、ファンタジーとかね)
閉鎖したって牛子を卒業したなんて思わないでくださいね。新サイトもどうせ牛子がメインだろうなあ。
でも、やっぱり更新するのがつらいので、この日記に小説書いてしまいたい…表?みたくちゃんと見られますし。



CMで「バテンカイトス2」のCMをみて、すっごいやりたくなってしかたないです。銀迦さんも楽しんでるしなあ。どんな内容か全然知りませんけど。初心者急な和斗でも出来るのか分かりませんけど。でもCMだけ見てすっごい惹かれました。
ゲームにはチョコボぐらいしか惹かれはしないのに!(笑)



でわでわ、皆さん花粉症にはお気をつけて☆(ふせげねえって)




表紙