詩のような 世界

目次


2004年01月22日(木) 雇われダンサー



「愛しています」

そう言った途端
愛は現実味を帯び
うそ臭さを運んできてしまった

なくしてはいけないものが見つからなくて
鞄の中を手当たり次第に探していたら
実はただ引っ掻き回していただけだった
という衝撃的だがありがちな事実

あなたがいないと生きている気がしない=
あなたがいないと僕の生活が乾いてしまう=
僕のためにあなたが存在する必要がある

愛?愛?愛?愛?愛?愛?

独りだということを悟るのが怖いんです
と告白するマネキン
温もりを求めているが
どんな綺麗な服で着飾っても
その体は冷たく硬いままだ

わからない、という愛の真実を受け入れられず
本の謳い文句や誰かの思想に惑わされる
楽ではあるけれど踊らされてしまう

どうせなら自由に舞えばいい
「愛」を頼れなくなったなら
まるで取り残されたかのような顔をしてまで
愛している、などと言わなくてもいいのだから



2004年01月04日(日) dry


物事を解決しようとすると巨大な隕石のような黒い塊が
胸から喉へ、喉から口元へ這い上がってくるので
吐き気を理由に僕は急いで部屋の片付けなど始めるんだ

世界一醜く憎たらしい女が悲しんでいる様を想像すると
僕の胸はきゅんと音を立てると同時に自己嫌悪の荒波にもまれる
世界一醜く憎たらしい女を失いたくないという愛に似た所有欲

この部屋の加湿器は無音のまますべてを湿らせてゆく
冬に負け乾ききった皮膚の変化は目には見えずとも明らかだ
あの潤いすぎた女はこの喜劇を到底理解できないだろう

恐ろしいなどと口に出すものではない、と弱者は叫び
強者はというと、どんなに恐ろしくとも口を結べ、と微笑んだ
僕にとっての恐ろしさとは何なのだろうか


彼女に永遠のさよならを言うドラマを頭の中で製作してみる
女は相変わらずどうしようもない女で、僕は唾を吐きかけたい衝動に駆られる
愛してる愛してる愛してるとすがりついてくる女が飢えた家畜にすら見えた

最終回は、もちろん加湿器などない彼女の部屋を後にする男
簡単に理性を取り戻した女は次の男に慣れた手つきで電話する
男は無様にもドアの前から一歩も動けず、遠慮がちに舌打ちをした


と、考えること3秒
僕はトイレに駆け込む振りをして掃除機を取りに走った
もう乾いたままでいいのではないか、と肌に問いかけるが返事はない



My追加
しえり |MAIL