詩のような 世界
目次|←|→
週末になると 僕たちはいつもの待ち合わせ場所へ歩く 何の疑問ももたずに
数時間後には 僕は人形に あの子は小動物に なっている
赤い絵筆で描かれた唇は クスリ、と動き 時には 怒った顔だって表せる
小動物はよく鳴き 毛を撫でてもらいたがる 擦り寄ってくるのは可愛いけれど 僕の硬い手で大丈夫かな
ある日 僕は気づいてしまった あの子は僕が人形であることに 戸惑いと不満を感じ始めていることに 僕が 小動物であるあの子を 持て余すようになったことに
一緒に呼吸をしているだけで満たされていたはずだ 今の僕たちといえば なんであなたは人形なの なぜきみは小動物なんだ ピーチクパーチクコケコッコー
時間が経つにつれて 僕の皮膚はますます冷たくなり あの子は 次の餌を求めてすっといなくなった
週末が来ると 少しの疑問とともに 僕は柔らかな毛の感触を思い出す
電気を消して 部屋の中央に座る
青白く発光した無数の輪が 僕の身体にすぽんすぽん、と 次々にはまる
暖かいような 冷たいような 生温いような
手を伸ばしてみると ぼやけた影があった 誰なんだろう そこにいるのは?
優しい人だといいな 希望は実現への一歩 かどうかは知らないけれど 仮定してみよう
僕を愛してくれる影 守ってくれなくていいから どうか遠くへ行かないで 触れることができぬ距離でも
影だろうが肉体だろうが そんなことはちっぽけな問題だ なぜなら僕だって影みたいなものだから 躊躇わずに感じよう
名前なんて要らないんだ 形式に踊らされてぐるぐる回っても ねぇ、ねぇ、 僕が君を大切に思っていること たくさんの愛に たくさんの感謝と 涙声を
暖かい方の輪を 黒っぽい影に渡した 僕は影が受け取るのを見届けると そのまま部屋を後にした
メーリさんのひっつっじ ひっつっじ ひっつっじ
空色に塗られた本棚 上から2段目 おんなのこの髪の毛が いーっぱい瓶詰めにされているんだ
ふんふんふんふん ふんふんふんふん
矛盾色のニット帽 生まれたばかりのぼくは そんなちくちくする物 かぶりたくないのに
ペーケペケペケ ペッペケペケペケ
暴れてやるぞ 暴れてやるぞ ぼくを愛しているらしいおかあさん 髪の毛をむしられたらしいおねえちゃん
ツーツーツーツー ツーツーツーツー
気づいたらぼく血だらけだった お姉ちゃんと焼却炉に捨てられてた おかあさんに電話をかけても お客様のおかけになった番号は、だって
ねぇ 醜いものちょうだい あたしの心を引き千切って 醜いものちょうだい
もっともっと 足りないの あなたの唇から黒い液体出して 白いブラジャーが受け止めてみせる
あたしは泣かないから 身体をナイフで切り裂いていいわよ あなたの気がすむなら あたしは何者でなくなってもかまわない
いっそ汚いフローリングの床で あたしを羽虫のように扱って あなたのためにすべて壊す覚悟できてる 少しでも怖がったらだめよ
この空間にはあたしたちしかいないわ 昨日あなたが誰と寝ていても 明日あたしが誰と寝ていても 今だけはあなたとあたしの世界
ここには愛なんて要らない あなたがあたしを苦しみに追い込む あたしはあなたに怯えながらも歓喜する ここには愛など存在しない
人の目なんて気にしなくていいの 汚いあなたを見せてほしい あたしは愛よりあなたが好きだから いつでも戻ってくるつもりよ
|