I create you to control me
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「でも、楽しいですよ」とは、ある生徒指導の先生の言葉である。
長期にわたって不登校だった生徒への対応に苦慮されていた先生が、スクールカウンセラーの助言もうけつつ関わりつづけていたところ、あるとき、自分の関わりに対して生徒が変化する姿をみたのだそうである。その姿をみて、この先生は「では、次はこうすればいいのでは」と分かってしまったという。それから、自分の関わりに即して相手の反応がみえてきた。
冒頭の言葉はそういう変化がでてきたまさにその頃、毎日多くの仕事を一手に引き受けて忙しくたちまわっておられる先生をねぎらった私に対して、先生がかえしてくれた言葉だ。
実際、ある非行臨床の専門家によると、非行ケースは、出来事の生じるサイクルが早いし、また、直接的に学校の運営にひびいてくるから教師は対応せざるをえないという。すっかり巻き込まれてしまい、自らの関わりについて省察したり、吟味したりする余裕もなくなってしまう。一方で、見かけ上、変化のサイクルが遅いものもある。不登校のケースでは、ほとんど何の動きもないままに数ヶ月がすぎるようにみえる(あくまでも、そうみえるだけだが)。教師は対応をとることができず、待ちの姿勢でいるうちに時間ばかりがすぎることになる。いずれにしても、生徒がおこしている問題がどんな意味をもつのかへの理解をみなおすまもなく、日々、一生懸命に対応することで、かえって問題は維持・固定化されてしまう。
そこでスクールカウンセラーには、子どもへの見方を揺らがせるようななにかが必要になる。では、それはどういう変化か。
カール・ワイクらによれば、組織の変化には「計画的で断続的な変化(episodic change)」と「自発的で連続的な変化(continuous change)」がある。前者は、変革者によって意図的にひきおこされるものであり、その変化の影響は短期的。これに対して後者では、個人レベルでも組織レベルでも学びがおこり、いたるところで変化が常に生じており、蓄積されている。その影響も長期にわたり継続する。学校コンサルテーションを通じた変化も、しばしば、まず「計画的で断続的な変化(episodic)」としてはじまる。学校はつねに安定と均衡を求める場所であり、ちょっと放っておくとすぐにもとにもどってしまう。
スクールカウンセラーがたちまわり、生徒についての見立てを教師に伝えれば、教師の見方はとりあえずは変わるかもしれない。しかし、上述の先生のように、自ら気づき自分でどんどん生徒の姿をみていけるようになることは簡単にはおこらない。前者の変化を、後者の変化につなげるような取り組みをしていきたいものだ。
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