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2007年12月30日(日) |
第6回「ナラティブと臨床」研究会のお知らせ |
「ナラティブと臨床」研究会第6回が決まりましたので、お知らせします。
日時:2008年3月8日(予定17:30−19:30) 場所:湖南クリニックデイケアルーム 話題提供者:小森康永氏(愛知県がんセンター) 演題:「緩和時間 What I feel about Psycho-Oncology」
話題提供者は以前にお知らせしたとおり、愛知県がんセンターでナラティブな探求をなさっている小森康永先生です。小森先生は、これまで主にマイケルホワイトの著作を中心に、日本にナラティブセラピーを紹介された第一人者です。
近年は、愛知県がんセンターにうつられ、アンチキャンサーリーグを立ち上げられたり、ガンの経験を聞いたり、医療者とともに死について考えるための心理教育である「ミスターD」を考え出されたりと、とても興味深い実践をなさっています。2008年には『ナラティヴ実践再考』『緩和時間』(いずれも金剛出版から)という著作を相次いで出版される計画があるそうです。
今回は、先生が目下の関心として持っておられる「がんと死と時間」の関係について自由にお話いただく予定です。リンギスとか、レヴィナスなどの著作についても非常に興味をもっておられるようです。その関連についてもお話いただけるかもしれません。いずれにしても非常にエキサイティングな研究会になることは間違いなしです。
多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
2007年12月05日(水) |
会話分析、ディスコース分析をやってみたいあなたから、何それ?というあなたまで、おすすめの本です |
『ワードマップ 会話分析・ディスコース分析――背景知識から具体的な方法まで』 鈴木聡志 著 予価1995円(税込) ISBN 978-4-7885-1073-9
ご恵送いただきました。
著者はカウンセリング、心理療法などをご専門にされている方のようですが、新しい分析法を探し求めるなかでディスコース分析、会話分析と出会われたそうです。これらの分析方法は、個人的には心理療法やカウンセリングを考えるうえでとても重要な示唆を与えると思えるものの、と同時に、心理療法に対して批判的な含意をもつものでもあり、それを専門とされている方からは敬遠される傾向があると思っています。それだけに、このような興味をもつ方がいらっしゃるということを知ってうれしく思います。
さて本書のタイトルは「会話分析」と「ディスコース分析」が併置されていますが、このように並べられてはじめて、両者が違ということが分かる方も少なくないのではないでしょうか。会話分析は、心的現象、社会現象、常識といったものを人々が相互行為のなかで成し遂げているものとして分析するものであり、ディスコース分析は、会話のみならず、多くの表現に注目して、社会構造、権力関係、イデオロギーを読み解いたり、それがどのようなコミュニケーションに結びついているのかを探る手法といえるでしょう。
両者は、互いに少なからずお互いを意識していますし、差異をめぐって議論がなされることもあります。これまで一方の立場から、他方の分析手法について論難するものは多くありましたが、心理学のように、この方法を外部からとりいれて、新たな可能性を探そうとしている学問にとっては、どちらが優れているかどうかということにこだわるのは得策ではないと思います。そもそも、会話分析はこれまでの心理学に対する批判的含意をもつものでもありますから、安易にとりいれられるはずもなく、方法論的にみれば中途半端であるようにみえることもあるでしょう(実際、言説心理学については会話分析の立場からの批判があります)。
私としては、ディスコース分析、会話分析のあいだでの議論から、どちらが優れているかというよりも、互いがどのようにいかせるのかを学んでいく方が建設的でしょう。本書では、こうした議論についても丁寧にフォローしながら、両者の特徴や目指すところについて整理されています。ここらへんは初心者には難しいところかもしれませんが、とても興味深いところです。もちろん、後半では実際にデータをとってから分析するまでの過程も述べられています。初心者から、経験者まで幅広く読まれるとよいなと思います。
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