縁側日記  林帯刀





2004年07月27日(火)  ムーン。


降りだした雨はいつの間にか止んでしまった。
今はもう星がでているだろうか。


夜に帰ることはあっても、空を見上げることに気がつかない。
そうやって星空を忘れている。
オリオン座を見つけることはできても、
北極星やひしゃくやカシオペアはいつも分からない。
北の空には山の黒い影があり、夜空よりも暗くそこにある。
街灯から離れてしまうと、
足元を照らすのはトンネルを抜けた線路の灯りと月。
月のない夜は足元が暗くなる。
この間見た月はおぼろで、橙色をしていた。
星は見えない。


天の川が分からないのは、眼鏡のせいだと言い聞かせている。
それが何かの烙印となって、体に押されてしまうのを避けている。
染みのように欠点が押されるのを避けている。


月も星も分からずに夜を生きるのはつらい気がするので、
夜空を見上げるのを忘れない。
天の川を見ることはできなくても、
橋の下に点滅する光の線があればいい。





2004年07月26日(月)  シーン。


部屋の中ではほとんど一日扇風機がまわって、
夕方にはひぐらしの声が聞こえてくる。
いつの間にか夏が来ていることに気がついて、
少しでも自分が変わったのかどうか、
ずっと考えている。
思考のスピードがすごく遅くなった気がして、
もどかしく思うけれども、
どうしたらいいのか分からないから、
のんびりしたシナプスで考えをめぐらす。
窓から入ってくる風は涼しい。
扇風機のスイッチを切ってみる。


近づくもの。
近づけないひと。
変わらない距離にあるいくつかのこと。


私にはまだ怖いことがたくさんあって、
手をのばしたまま戸惑っている。
どうして怖いのか分からずにいる。
何が怖くて何が怖くないのか。
その境界線は誰でも複雑なのだろうか。
のばした手が脈打っている。
一緒になって視界がゆれている。
他人のようにそれを見ながら、
頭の片隅で涙を流す。
どうして私は怖がっているんだろう。


クーラーの風は冷たすぎることがあって、
風の当る腕や足の皮膚がちくちくする。
タイマーをかけて寝てみても、
たいていは機械の止まる音を聞いてしまう。
そうやって日付が変わって、
いつの間にか朝がきている。
眠りに落ちる瞬間の記憶はないままに。


声を思い出してさみしくなること。
臆病になっていること。
体全体がときどき脈打つのが少し怖いこと。
言えずに舌の上でころがした言葉と、
言うのをやめてしまった言葉。
書こうとしても動かない指。


あと何回の夕立と台風で、
夏がすぎて秋になっていくのだろう。
私はそれを今と変わらず見ているのだろうか。


涙もろくなっている体、
動けないこと。
変わっていくことをやめてしまうのは簡単だとしても。





2004年07月20日(火)  ポエケット後。


遅くなりましたが。



ポエケットが終わりました!
お会いしたみなさま、ありがとうございました。



たくさんの方にお会いできてしあわせでした。感謝。
昨年の反省を生かして、挨拶する人と片っ端から握手した。
わはは。
しばらくイベントでてなかったので、
ひさしぶりにお会いする人もいて。
楽しかったなぁ。

しょっぱなからうわーいな方々と出会って、
一緒においしいもん食びられたしね。
謝々です。買いにいけなくてすませんでした。泡。
どこぞで必ず。



いやあ、終わってしまったー、という気持ちが大きいな。
あと5時間ぐらいやっててもよかった、とか、
また来週やりてーなー、とか思った。
あとは、案外声って枯れないものだな、と。
カラオケとはわけがちがうのか。
もちろん反省もしつつ。
でも1年あるからいいこともあるものね。
来年(たぶん)を楽しみにしてよう。



それまでに私はどれぐらい変わってるんだろうな。
少しでも階段をのぼれるように、上を向かなければ。





2004年07月12日(月)  ポエケット。


すっかりお知らせ忘れていたけど、
今年も「TOKYO ポエケット」行きます。
18日(日)両国は江戸博物館。
出店(ブース)数がすごい増えてるよー。
リーディングもあるよー。

TOKYO ポエケット

当日はPJブースで店員してます。
セールスセールス。
ブースは昨年と同じく入り口そば左側らしい。
スペシャルパックは必見!
ブースも必見!だ!

Poetry Japan



イベントのお知らせなんて何ヶ月ぶりだろう。
待ち遠しいったらないね。
燃えている。楽しみである。るる。



明日は明日で、新しいことが始まります。
緊張。でも楽しみ。
身になりますように。





2004年07月11日(日)  雨待ち。


すずしい風は、どこかで雨が降っている証。
雲は動いて、もうすぐここへやってくる。
私は縁側で待っている。

雨を待つのは、ずっとくり返されてきたこと。
当たり前に、当たり前に。

雨が降った。
空気の喜ぶ声を見る。


雨がこれからも当たり前であるように願うよ。





2004年07月03日(土)  桃。


友人の引越しを手伝って、桃をもらった。
においをまきながら電車に乗る。
半袖のひとが多い。
ハイキング帰りのひとがいる。
窓から見える景色はみどりのグラデーション。
作りかけの陸橋はジオラマみたいだ。

梅雨とは思えない夏の風景。
古い車両だったら、天井で扇風機が回っていただろう。
たとえ暑くても、それでいい。
着物を着たおばあさんが、扇子で顔を軽くあおいで、
きっとそれくらいがちょうどいいんだ。

季節をありがとう。
桃は好きだ。


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