暗号化 |
スティーブン・レビィの「暗号化」をようやく読了。サイモン・シンの「暗号解読」と合わせると,暗号に関する歴史と技術と人物について,だいたい抑えることができます。スティーブン・レビィは「ハッカー」の著者でもあり,テクノロジーと人間のかかわりに深い関心を持つライターです。
「暗号化」では"公開鍵暗号"と呼ばれる,現在広く使われている強力な暗号技術の話が中心です。アメリカにはNSAという暗号技術を専門に扱う政府の組織があって,暗号に関しては理論を発表したり関連特許が使えない時代が長かったとはね。これがつい二十年ぐらい前の話とは思えない。暗号理論の研究者はみんなNSAに雇われてしまうので,民間ではろくな研究もできなかったわけですが,それが公開鍵暗号の発明によって崩れていくわけです。公開鍵暗号は在野の研究者により発明されたので,この技術の公開を巡り(インターネットが深く関わっている),政府と民間の戦いが始まります。
「犯罪者が強力な暗号を手にしたらどうなるのか」という政府の主張と,「国民は自分のプライバシーを守る権利がある」という民間の主張。ドラマの背後にいる人間を中心に描いていくのはスティーブン・レビィの得意技ですなあ。
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2002年08月23日(金)
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